Special
キャンパスライフを電波にのせて!【金沢工業大学WAVEプロジェクト】
えふえむ・エヌ・ワン、76.3MHzにステイ・チューン!
2024.12.25
学生が番組制作を一から手がけるコミュニティ放送とは?
大学の研究結果に基づく新技術やサービスを事業化する「大学発ベンチャー」とは一線を画し、学生が運営に参画してキャンパス情報番組やコンテスト用の素材を制作する大学放送局とも明確に違う。地方自治体と大学が共同で出資し、運営しているコミュニティFM局。それが「えふえむ・エヌ・ワン」だ。
石川県野々市市と、同市を拠点とする金沢工業大学が設立した第三セクターで、日本初のキャンパス・ラジオ局として1995年に開局。野々市市(全域)を中心に、北はかほく市から南は小松市までの一部地域に発信している。同年1月に発生した阪神・淡路大震災を背景に、災害時の緊急速報が設立のキッカケだが、どっこい、それだけではない大きな特徴がある。
野々市市の広報番組はもちろん、音楽から地域情報と、さまざまなプログラムがラインアップされるなか、平日の18~20時に「KITキャンパスウェーブ」の帯番組が組み込まれている。KIT=Kanazawa Institute of Technology、そう、金沢工業大学が制作するプログラムだ。
同枠は「WAVEプロジェクト」に参画している学生たちが企画を提案し、一から制作するもので、番組タイトルも構成も選曲も、パーソナリティだって学生たちが担当する。言葉をツールに、ラジオというメディアを通して「ものづくり」を体現しているのだ(1~4年生、合計31名が所属)。
ソーラーカーやロボットなど、いわゆる純粋な理系分野のプロジェクトや、電験三種をはじめとする電気系ライセンスの取り組みにフォーカスされがちだが、この「WAVEプロジェクト」は発足から約30年を迎えるスタンダード・ミッションで、彼らが紡ぎだす等身大の言葉が、魅力あふれる番組をつくりたいという熱意が、さまざまなリスナーの心を動かしてきた。
「えふえむ・エヌ・ワン」で放送局次長を務める中村圭佑氏は「スタッフからの信頼も厚く、番組制作のスキルの高さはもちろん、学生目線のユニークな番組企画を提案する彼らの存在感は極めて大きい」という。
2024年12月の時点で、3つの生放送を含む10番組を担当。Z世代の豊かな感性がちりばめられるなか、同大学らしい直球勝負のプログラムも用意されている。毎週金曜日の『りゅうくのおでんき予報』だ。
電気電子工学科の髙田龍空クンがパーソナリティを務める「電気の問題や現象、課題について討論する」という生放送で、番組タイトルを変更して2クール(1年)も続いている人気プログラムである。
「自分の得意分野で、最も楽しめる内容ということで電気をテーマに選びました。電気は人気がないから、ラジオ番組として「電気の楽しさ」を発信することで、少しでも電気を志す人が増えれば嬉しいですね。伝えるツールは言葉だけだから、より詳しくて、ていねいな解説が求められます。つまり、自分の知識もブラッシュアップさせないといけないんです。そういった面も楽しいし、やりがいがあると感じています」
実は、その前のクール(2023年度)に資格取得を目指す番組があり、メンバーで入っていた髙田クン。そのときの企画で電験三種にチャレンジして取得。それ以来、電気に傾倒することに……。二種、一種とステップアップを目指し、勉強を続けているという。
北陸電波学校として1957年に創立するというルーツを持つ金沢工業大学(1965年に改称)。その40年後に、奇しくもコミュニティFM局を運営するプロジェクトが発足した。これには縁を感じずにはいられない。
日本初のキャンパス・ラジオ局「えふえむ・エヌ・ワン」は、今日も新たな1ページを繰る。野々市エリアを元気にする情報をのせて、さあ、「本日は晴天なり」だ。
取材協力/えふえむ・エヌ・ワン、金沢工業大学「WAVEプロジェクト」