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電気の「スゴイ!」をみつけよう!!
小学6年生から始める電気技術者育成プログラム
2024.03.04
目にみえない電気のパワーに興味津々!
2024年は運送業でドライバー不足が深刻化するといわれているが、この「不足」は、あらゆる分野で叫ばれている現象であり、もちろん、電気技術者も例外ではない。
毎年、電気主任技術者や電気工事士の試験には何万人もの受験者が集まり、前者は平均で4000名弱、後者にいたっては1万名を超える受験者が栄冠を手にしている。つまり、コンスタントに「技術者予備軍」は生まれているということだ。
しかし、電気分野の技術者不足は解消していない。保守すべき電気工作物が続々と新設され、現場にかかる負担は増大している。近年の統計では、2030年には2000名もの電気主任技術者(第三種)が不足すると試算されている。
減少傾向を示している電気技術者。その背景には、難易度の高い試験にチャレンジするための「知識の習得」があるといっても過言ではないだろう。
現象を理解することに想像力が求められる電気の世界について、誰もが苦手意識を持ってしまうのは当然だ。それを、どれだけ抵抗なく取り組めるかが「知識の習得」のカギを握っているが、学習内容が難しくなるほど抵抗は大きくなり、どんなにシンプルなことでも最初に苦手意識が立ちはだかってしまう。これが電気という学問について、誰もが感じる印象である。
それなら、学問として電気に接するファーストステップで「おもしろさ」「興味深さ」を伝えることができたら……。名古屋工学院専門学校が展開する「キャリア教育支援活動」で、その1つの答えが導き出された。キーワードは、電気の現象を「魅せる」だ。
電気主任技術者試験において日本屈指の合格実績を挙げている同校。近年は資格取得によるキャリア形成の本質を伝えるべく、全国の高校を対象に積極的にセミナーを行っている。この活動から教育連携に発展し、今回、三重県立桑名工業高等学校の学園祭にブースを開設。在校生はもちろん、隣接する桑名市立七和小学校から小学6年生が見学にくるということで、生活のなかにある電気をテーマに、それが起こる現象を視覚的に伝える実験を披露することとなった。
照明をはじめ、家電製品からクルマまで、日々の生活には電気があふれている。身近な存在でも、どのような原理で稼働させているのか、その現象まで熟知するとなると専門知識を必要とする。つまりは、目にみえないイメージの世界への傾倒だ。しかし、どんなに難解なことも、興味を抱くと追究したくなる。自分で調べて、知識を吸収したくなるはず。そして、電気という学問の性質上、このキッカケは「理科」の世代で経験するほど抵抗なく受け入れることができる。
理系離れ。特に「電気」を専攻する学生の少なさが顕著になり、集合場所となる「電気科」が単独で成立しにくくなっている昨今、もっともっと若い世代に電気の魅力を伝えるタイミングを迎えているといっても過言ではない。それこそ「理科」を学習する小学生に、興味レベルを最大限まで引き上げる「最良の一手」を打つことが求められている。
しかし、誰もが持っている好奇心のスイッチは、押される側はもちろん、押す側も同じレベルの熱量で対峙しなければ、そう簡単に「ON」にはならない。1つのモデルケースとして実施した名古屋工学院専門学校の「シン・キャリア教育支援活動」は、子どもたちが電気について興味を抱くキッカケとなる極上のプログラムとなったはずだ。
(取材協力/名古屋工学院専門学校、三重県立桑名工業高等学校、撮影/宮澤 豊)