How to
【電気主任技術者】変圧器と蓄電設備の内部点検【高圧受電設備の点検マニュアル④】
保守管理の現場から
2024.03.26
最終回
変圧器と蓄電設備の内部点検
変圧器の内部点検
高圧受電設備の年次点検手法を取り上げてきた同コンテンツ。今回は、絶縁油試験を含む変圧器と蓄電設備の内部点検にクローズアップする。
まず、変圧器の内部点検では絶縁油の状態をチェック。油の透明度(茶褐色になるほど劣化が進行)を目視で確認しつつ、絶縁破壊試験のために採油(400ml)を行う。抜き取った油を試験装置用の容器に入れ、気泡が消えるまで落ち着かせたあと、電極間のギャップを2.5mmに設定して電圧を印加。少しずつ電圧を上げ、放電したときの電圧値を記録するという手順だ。
これを1つの試料につき5回、2つの試料で試験を行う。各試料の1回目の測定値を除いた合計8回分の平均値を算出し、この値が20kV以上であれば正常である。
次に、全酸価度試験を実施。絶縁油1g中に含まれる全酸性成分を中和するのに必要とする水酸化カリウムの数値を調べるもので、高いほど絶縁性能の低下を示す。試験容器に絶縁油(25cc)を注入し、数分後、着色された絶縁油とチェックプレートのカラーサンプルを比べて評価する(BT-2試薬の場合、0.2以下が正常)。
この2つの項目が絶縁油の基本試験となるが、採油して状態を調べる場合、変圧器本体には忘れずに抜き取った分量の新しい油を補充したい。
絶縁油以外では変圧器の上ブタの内側にあるパッキンの劣化具合をチェックする。また、油入変圧器ではタップ切り替え端子は内部にあるため、端子の接続具合も確認しておく。
蓄電設備の内部点検
非常用の照明や電源、受電設備の制御に使用する蓄電設備。緊急時に稼働する設備であるため、もしもの事態に備えて点検は万全に実施しておきたい。
まずは、配線用遮断器を開放して安全を確保し、外観点検に入る。変形や液漏れ、パッキンの劣化、各セルの精製水(バッテリ液)の容量(水面が「U(アッパー)」と「L(ロウアー)」の間にあること)を確認。「L」より下にある場合はバッテリ液を注入する。さらに、電極が剥離していると規定の電圧に達しないため、バッテリ液内の汚損状態(電極が剥離すると黒っぽいゴミが沈殿する)もチェックしておく。これらは目視で徹底して行いたい。そして、各セルの電圧を測定する(1セルで2.2Vが基準)。
次に、バッテリ液の比重測定を実施。まずは測定器(光学式比重計)の注入口を精製水で洗浄し、バッテリ液(スポイトを使用。希硫酸なので作業は注意を要する)を比重計のプリズム部に滴下し、採光板を閉じる。数秒後、比重計のスコープをのぞいて比重が異なるバッテリ液の境界線が基準値以内(1.20~1.25)にあることを確認する。
なお、蓄電設備はセルによって状態が異なるため、それぞれのセルで上記の点検を実施すること。
4回にわたって高圧受電設備の年次点検項目を取り上げた。電気設備は「生きもの」であるため、状態は刻々と変化するし、程度によっては精密点検を行って原因を究明しなければならない。ようするに、その都度、点検項目数は変わるということだ。
ここで紹介した点検マニュアルは、あくまでも基本的な内容であるが、しっかり基礎を理解しないと「正常or異常」の判断もできないし、トラブルの予兆すら見逃してしまうリスクもある。
電気の安全を保証することは電気主任技術者の使命である。基礎を徹底的にマスターし、臨機応変にトラブルを処理できる技術を身につけたい。
(取材協力/一般財団法人 関東電気保安協会、撮影/宮澤 豊)