Column
「言葉の力」にまつわるエトセトラ【電気教育、言いたい放題21】
電気科教員の「はてしないグチ」
2025.12.03
第21言「『亭主は元気で何とやら』で悪霊退散」
高校生のスポーツの全国大会をテレビでみていると、あんな一流アスリート、または一流の指導者になれると錯覚してしまう。同じような練習方法やユニフォーム、ヘアスタイルで、実績のある指導者のコメントをミーティングで勝手に引用してしまうからだ。
それで全国区のチームに響いて、本校のチームに響かないのは生徒たちが悪い! と一方的に決めつけてしまう迷指導者もいる。
冷静になって考えると、そのチームの監督と選手たちとの人間関係、チーム状況、試合の流れがドンピシャリ! それで理想の展開になっただけなのかもしれない。
チームの状況を把握しないで口先だけの指導で「右向け、右!」と言っても、生徒たちは納得するはずがない。
若手時代、筆者も同じような経験をした。
バレーボールの練習試合のとき、保健体育科で国際審判の資格を持った先生が「しっかりサーブを入れよう」とゲキを飛ばすと、生徒たちは元気よく「はい!」と返事をする。続いて、指導経験の浅い若手時代の筆者が同じような声をかけると、生徒たちは素っ気ない態度……。同じ言葉、同じ内容なのに、あの先生には「はい」と言うことを聞いて、筆者のことはシカト状態だ。これには幻滅してしまった。
やはり、自分自身の腹からの言葉、実感がこもった言葉じゃないと相手は納得して次の行動に移りにくい。言葉の重みを痛感したできごとだった。
タチが悪いことに「同じ高校生じゃないか。彼らにできて、オマエらにできないはずがない!」と説教を始める指導者もいた。
個人的に言われたことも何度かあるが、これで「よっしゃ!」と気合いが入るのは最初だけ。次からは聞いているだけで嫌気が差したものだ。
もっと始末に負えないのが教員による研究発表会。ここぞとばかりにダブルのスーツでめかし込んだ先生が発する「この私でも頑張れたんですよ!」という言葉を耳にする。まさにキラーワードだ。
若手時代にはベテランの先生から、言葉ではなく、雰囲気やオーラで言われた。あの脅迫めいた態度は、いまでいう「匂わせ」だ。これを無視したわけではないが、そのとおりにやらなかったら「言うことを聞かないヤツだ」「反抗的だな」などなど、バッシングの嵐が吹き荒れた。
こっちにはこっちの都合ってものがあるの! カンベンしてちょーだい!
電気科の主任時代、管理職から「近隣の工業高校が頑張っているんだから、本校も負けずに何かやってほしい」と幾度となく言われた。そんなときは、これでチクリ。
「気持ちはよ~くわかりますけど、その言葉で『よし!』って気持ちになります? 例えば、われわれ亭主族が帰宅して、女房族から『隣のダンナさんは出世して、部長さんになったんやって。ボーナスもン十万ももらってるんやって』と言われてるような感情逆なで口撃と一緒ですよ」
『それ、やめて!』のひと言で、スタコラサッサと退散します。
苦い経験を重ねたゆえの燕返し、見事なリターンエースでした。

プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。
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