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元請会社が負う禁止事項を学ぶ【コンプライアンス入門 第14回】
現場で役立つ!
2025.04.21
第14回
親事業者(元請会社)の禁止事項
親事業者(元請会社)の禁止事項
建設業者が資材購買や設計委託をする場合、下請法が適用される。今回は親事業者(元請会社)が負う11の禁止事項と違反事例を解説する。
親事業者(元請会社)の禁止事項は以下の11項目である。
①受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
②下請代金の支払い遅延の禁止(第4条第1項第2号)
③下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
④返品の禁止(第4条第1項第4号)
⑤買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
⑥購入、利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
⑦報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
⑨割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
⑪不当な給付内容の変更、やり直しの禁止(第4条第2項第4号)
受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
下請事業者の責任ではないのに、資材や設計成果の受領を拒否することを禁止する。
~違反事例~
下請事業者に資材の納入を依頼していたが、親事業者(元請会社)が当該工事の受注内容変更を理由に、資材の納入を拒否した(図1)。

下請代金の支払い遅延の禁止(第4条第1項第2号)
親事業者(元請会社)は下請代金を、その支払い期日(成果受領後、60日以内)の経過後、なおも支払わないことを禁止する。
~違反事例~
下請代金の支払いを、毎月月末締め切り、翌月末の支払いという制度だが、支払い代金の一部を保留し、工事竣工時に残額支払いとしていた。
下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることを禁止する。
~違反事例~
下請代金から「安全協力費」などの名目で、下請事業者の同意を得ずに減額していた。
返品の禁止(第4条第1項第4号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、納品後、返品することを禁止する。
~違反事例~
納品された資材の受け入れ検査を行わず、使用時に不良を発見したということで返品した。
買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
下請事業者の資材や業務と同種の資材や業務に通常支払われる対価について、著しく下請代金の額を不当に定めることを禁止する。
~違反事例~
多量の資材や業務を発注することを条件として見積りの作成を依頼し、同じ単価で少量の発注をしていた(図2)。

購入、利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
下請事業者に、親事業者(元請会社)の指定するものを強制して購入させ、または役務を強制して利用させることを禁止する。
~違反事例~
下請事業者に、親事業者(元請会社)が主催するイベントチケットなどの購入を要請していた。
報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
下請事業者が親事業者(元請会社)の違反行為を公正取引委員会、中小企業庁に知らせたことを理由に、親事業者(元請会社)が下請事業者に不利益な取り扱いをすることを禁止する。
有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
親事業者(元請会社)が下請事業者に有償支給した原材料などの対価を早期に決済することを禁止する。
~違反事例~
制御盤の製作を委託している親事業者(元請会社)が、一部を有償で材料支給しているが、下請代金の支払い日より早い時期に有償材料の対価を控除していた。
割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
下請代金の支払いについて、一般の金融機関による割り引きを受けることが困難な手形を交付することを禁止する(手形サイトが120日を超える手形の交付を禁止する)。
~違反事例~
発注者の支払い条件が悪いとの理由で、手形期間が120日を超える手形を交付していた。
不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
親事業者(元請会社)が下請事業者に対して、自己のために金銭や、その他の経済上の利益を提供させることを禁止する。
~違反事例~
自動車の修理を下請事業者に委託するとき、借用する代車に保険費用がかかっているのに、当該費用を下請代金に含めていなかった。
不当な給付内容の変更、やり直しの禁止(第4条第2項第4号)
親事業者(元請会社)が下請事業者に責任がないのに発注の取り消し、発注内容の変更を行い、または納品後にやり直しをさせることを禁止する。
~違反事例~
貨物運送を下請事業者に委託するとき、発注者からの発注内容の取り消しを理由として、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに発注内容を取り消し、下請事業者のトラック手配などの費用を負担していなかった。
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。
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