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ハラスメントを学ぶ【コンプライアンス入門 第15回】
現場で役立つ!
2025.05.19
第15回
ハラスメントに関連する法規制
職場における「ハラスメント」
建設業においてハラスメントの問題が顕在化している。以前は普通に行っていたことが訴訟の対象になっている。加害者はもちろん、それを黙認した企業側にも訴訟のリスクがある。今回はハラスメントの概要と法規制について解説する。
建設工事の現場では「バカヤロー、何やってんだ!」「オマエは使えないヤツだな」「おねーちゃん、○○だね」などという言葉は、これまでは普通に使用されてきた。しかし、昨今はハラスメントの意識が高まり、これまで気にかけていなかった言葉や行動が訴訟の対象になっている。
建設業で起きやすいハラスメントにはパワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)、セクハラ(セクシャルハラスメント)がある(表1)。

パワハラ、モラハラの法的責任
パワハラ、モラハラの加害者に対する法的責任は以下のような内容となる。
(1)刑事
名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(同法第231条)に問われる場合がある。また、暴行に及んだ場合は暴行罪(同法第208条)、傷害罪(同法第204条)が適用されることがある。
(2)民事
被害者が加害者に民事訴訟を起こすこともある。その場合は損害賠償請求(民法第709条)が問題になる。

セクハラの法的責任
セクハラの加害者に対する法的責任は以下のような内容となる。
(1)刑事
セクハラは、その態度が身体接触を伴う場合には、意に反する性的な言動として強姦罪、強制わいせつ罪に問われる場合がある。また、その言動によっては傷害罪や暴行罪が成立するケースもある。
なお、身体接触がない場合でも名誉毀損罪、侮辱罪が成立する場合もあるし、迷惑防止条例や軽犯罪が問題となるケースもある。
(2)民事
加害者は不法行為責任(故意、または過失によって他人の権利を侵害し、他人に損害を与えたことにより生じる損害賠償責任)として損害賠償請求を受ける。

企業が負う法的責任
ハラスメントは以下の4つの条件を満たす場合、被害者は会社に対しても民法第715条に基づいて法的な責任を求めることができる。
①加害者、被害者の間に、社会環境内における「上下関係」がある
②現場の「上下関係」を背景として、本来の業務範囲を超えた「権力」の行使がある
③権力の行使が継続的に行われ、その行為が被害者の人権を違法に侵害している
④継続的な行為によって精神的および肉体的な損害を被り、雇用の継続に不安が生じている
(1)使用者責任(不法行為責任)
ハラスメントが業務に関連して行われた場合、加害者が企業の従業員であったときには、企業は加害者が行った「不法行為責任」を負わなくてはならない(民法第715条「使用者等の責任」)。
(2)債務不履行責任(職場環境配慮義務)
ハラスメントの被害者が企業の従業員であるときは、企業は、その従業員に対する労働契約上の「債務不履行責任」(民法第415条)を負う場合がある。企業は従業員に対して「健康的で安全で、かつ、働きやすい職場環境を提供し、維持する義務を負う」と定められているからだ(職場環境配慮義務)。
(3)均等法
セクハラにおいて「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(均等法)第11条は、事業者が職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により、当該労働者が労働条件について不利益を受けたり、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすることがないよう、雇用管理上で必要な措置を講じなければならないと定めている。事業主が必要な措置を講じず、是正指導にも応じない場合は企業名の公表対象となる。
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。
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