Management
下請法を理解する【コンプライアンス入門 第12回】
現場で役立つ!
2025.01.29
第12回
下請法の概要
建設業法と下請法
建設業者が建設工事を他社に下請負させる場合は建設業法が適用されるが、委託する業務の内容によっては下請法が適用されることがある。今回は建設業者が外部に委託する仕事のうち、下請法が適用される内容について解説する。
建設業者が他の建設業者に建設工事を再委託する場合には、下請法は適用されず、建設業法が適用される。ここで、下請法が適用されるケースを以下に示す。
A:建設業者が業として販売する建設資材の製造を他の事業者に委託すること(製造委託に該当する)、資機材の運送を運送業者に委託すること。
B:業として提供する建築物の設計や内装設計を他の事業者に委託すること(情報成果物作成委託に該当する)、測量、地質調査、警備、常用(人工出し)などの役務の提供(役務提供に該当する)。
建設業法が適用されるか、下請法が適用されるかは、業種ではなく、委託の内容で判断する(図1)。

建設業法と下請法の目的
建設業法と下請法は、そもそも目的が異なる。目的を理解して、運用することが重要である。
(1)建設業法の目的
建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化などを図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進して公共の福祉の増進に寄与することを目的としている。
(2)下請法の目的
下請取引の公正化、および、下請事業者の利益保護を目的としている。
親事業者(元請会社)と下請事業者の定義
親事業者(元請会社)と下請事業者の規模によって、下請法を適用するかどうかが決まる。下請法は以下のA、Bの場合に適用される。
A:物品(建設資材)の製造、修理委託および情報成果物作成(プログラム)、役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管、情報処理)
次の親事業者、下請事業者間の取り引きの場合に下請法を適用する(表1)。

B:情報成果物(建設設計業務)作成、役務提供委託
次の親事業者、下請事業者間の取り引きの場合に下請法を適用する(表2)。

親事業者の義務、禁止事項、調査権、排除措置
親事業者が負うべき義務には4項目、禁止事項は11項目ある。これらの項目を親事業者が遵守しているかどうかを公正取引委員会、中小企業庁が調査、検査を行う。
その結果、違反行為があれば罰金、もしくは下請事業者が被った不利益に対して、原状回復措置を行うように勧告される(図2)。

プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。