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施工体制台帳、施工体系図、再下請負通知書を理解する【コンプライアンス入門 第9回】
現場で役立つ!
2024.09.19
第9回
作成図書1~現場で作成しなければならない書類~
現場で作成が求められる書類
建設業法には、工事施工に際して現場で作成しなければならない書類が規定されている。今回は、そのうちの「施工体制台帳」「施工体系図」「再下請負通知書」の3点について解説する。
施工体制台帳
(1)施工体制台帳などを作成しなければならない工事
元請の特定建設業者が4500万円(建築一式7000万円)以上を下請に出すときに、施工体制台帳、施工体系図を作成する。この場合、下請契約は「建設工事の請負契約」であるので、それに該当しない資材納入、調査業務、運搬業務、警備業務などの契約金額は含まない。
図1のように、一次下請会社への発注金額が3000万円+1500万円=4500万円となり、4500万円以上の場合は施工体制台帳を作成する必要がある。
一方、図2のように、一次下請会社への発注金額が1000万円+300万円+1500万円=2800万円となり、4500万円未満の場合は施工体制台帳を作成する必要はない。
施工体制台帳は公共工事、民間工事を問わずに作成しなければならない。ただし、公共工事を受注した建設業者が下請契約を締結するときは、その金額にかかわらず、施工体制台帳を作成しなければならない。
(2)何のためにつくられるのか?
施工体制台帳を作成する目的は、元請業者が現場の施工体制を把握することで「品質、工程、安全などの施工上のトラブルの発生」「不良不適格業者の参入、建設業法違反(一括下請など)」「安易な重層下請による生産効率低下」を防止するためである。
(3)施工体制台帳の提出、閲覧、保存
施工体制台帳は、請け負った建設工事の目的物を発注者に引き渡すまでの期間、工事現場ごとに備えておく必要がある。また、工事完了後、5年間は保存しなければならない(図3)。
さらに、公共工事においては施工体制台帳の写しを発注者に提出、民間工事の場合は発注者が閲覧できるようにする必要がある。
施工体系図
施工体系図とは、各下請業者の施工の分担関係を図示したフロー図である(図4)。
下請負人に対する表示は施工中(契約書上の工期中)の場合に限り行えばいい。また、主任技術者の氏名は当該下請負人が建設業者であるときに限り行う。専門技術者とは、監理技術者または主任技術者に加えて配置する、第26条の2の規定による技術者のことである。
(1)施工体系図の掲示
施工体系図は、現場内の確認しやすい場所に掲示する必要がある。さらに、公共工事の場合は、これに加えて公衆の確認しやすい場所にも掲示する(図5)。
再下請負通知書
再下請負通知書とは、下請負人が、さらに工事を再下請した場合に、元請負人に提出する書類である。上位の下請負人を経由して元請負人に提出してもいい(図6)。
再下請負通知書には以下の内容を記載する。
・自社に関する事項
・自社が注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項
・自社が下請契約を締結した下請負に関する事項
・自社が下請負人と締結した建設工事の請負に関する事項
施工体制台帳、施工体系図についてのQ&A
ここで「施工体制台帳、施工体系図」に関連する項目をQ&A方式でまとめてみた。どれくらい理解しているか、しっかり確認してほしい。
問題
Q1
下請負代金7000万円の民間工事(建築一式工事)においては、施工体制台帳、施工体系図の作成は不要である。
Q2
施工体制台帳は、民間工事でも作成しなければならないが、写しを発注者に提出する必要はない。
解答
A1 ×
下請負代金4500万円(建築一式工事7000万円)以上の場合には、施工体制台帳、施工体系図を作成する必要がある。
A2 ○
発注者への提出は不要だが、閲覧できるようにしなければならない。
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。