Management
「帳簿」と「営業に関する図書」の作成ルールを学ぶ【コンプライアンス入門 第11回】
現場で役立つ!
2024.11.27
第11回
作成図書3~帳簿と営業に関する図書~
建設業法で作成が求められている図書
建設業は工事の健全性を示すための根拠として、記録の保存が求められている。建設業法で作成することが求められている「帳簿」と「営業に関する図書」について、その内容と保存期間を解説する。
帳簿
(1)帳簿に記載すべき内容
帳簿とは、注文者(発注者)と下請負人との契約関係の内容である。記載すべき内容を以下に示す。なお、下請契約に関連する特別事項は図1のとおりである。
①営業所の代表者の氏名、その就任日
②注文者と締結した建設工事の請負契約に関連する以下の事項
・請け負った建設工事の名称、工事現場の所在地
・注文者との契約日
・注文者の商号、住所、許可番号
・注文者による完成検査が完了した年月日
・工事目的物を注文者に引き渡した年月日
③下請契約に関連する事項
・下請負人に請け負わせた建設工事の名称、工事現場の所在地
・下請負人との契約日
・下請工事の商号、住所、許可番号
・下請工事の完成を確認するために、自社が行った検査が完了した年月日
・下請工事の目的物について、下請業者から引き渡しを受けた年月日
(2)帳簿に添付すべき書類
帳簿に添付すべき書類を以下に示す。
①契約書またはその写し
請負契約において、電磁的措置が講じられた場合にあっては電磁的記録も可。
②領収書など
特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない)となって一般建設業者(資本金が4000万円以上の法人企業を除く)に建設工事を下請負した場合には、下請代金の支払い済み額、支払った年月日、支払い手段を証明する書類(領収書など)、またはその写し。
③施工体制台帳
特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限る)となって、4500万円(建築一式工事の場合は7000万円。一次下請業者への下請代金の総額で判断)以上の下請契約を締結した場合には、工事現場に備えおく施工体制台帳の以下の部分(図2)を添付する。
(3)保存期間
保存期間は5年間となる。ただし、発注者(宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者を除く)と締結した住宅を新築する建設工事に関連するものについては10年間の保存が必要になる。
営業に関する図書
(1)営業に関する図書として保存が義務づけられているもの
営業に関する図書とは完成図、発注者との打ち合わせ記録、施工体系図である。なお、対象業者は元請負人に限定される。
①完成図
建設工事の目的物の完成図を作成した場合、または発注者から提供された場合には、その完成図を保存しなければならない。
②発注者との打ち合わせ記録
打ち合わせ(対面、電話などの方法は問わない)が工事内容に関係するもので、なおかつ、記録を発注者との間で相互に交付した場合には、その記録を保存しなければならない。
③施工体系図
施工体系図を作成すべき作成特定建設業者は、重層化した下請構造の全体像が明らかとなる施工体系図を保存しなければならない。
(2)保存期間
保存期間は10年である。
帳簿と営業に関する図書についてのQ&A
ここで「帳簿」と「営業に関する図書」についての項目をQ&A方式でまとめてみた。どれくらい理解しているか、しっかり確認してほしい。
問題
Q1
帳簿に添付する書類について、契約書またはその写しが電磁的措置であったため、電磁的記録は添付しなかった。
Q2
帳簿に添付する書類について、特定建設業の許可を受けている者が発注者となって一般建設業者(資本金3000万円)に建設工事を下請負した。下請代金の支払い済み額、支払った年月日またはその写しを添付しなかった。
Q3
建設業者は営業所ごとに「帳簿」と「営業に関する図書」を10年間保存するように手順を定めた。
Q4
対面で行った発注者との打ち合わせ記録であっても、議事録を発注者に交付していない場合は保存の必要はない。
解答
A1 ×
電磁的措置でも電磁的記録は添付しなければならない。
A2 ×
一般建設業者(資本金4000万円以上の法人企業は除く)には下請代金の支払い済み額、支払った年月日、支払い手段を証明する書類またはその写しを添付しなければならない。
A3 ○
「帳簿」は5年間、「営業に関する図書」は10年間の保存が必要。ただし、発注者(宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者を除く)と締結した住宅を新築する建設工事に関連する「帳簿」については10年間の保存が必要になる。
A4 ○
議事録を保存するのは議事録を発注者に交付した場合に限る。
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。