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建設業の健全な発展につながる契約とは?【コンプライアンス入門 第7回】
2024.07.08
第7回 下請負契約
下請会社との関係性
建設工事は元請会社と下請会社が一体となって仕事を行う。このとき、重要なことは下請会社との契約だ。元請会社と一次下請会社との契約はもちろん、一次下請会社と二次下請会社など、適正な契約に基づいて工事を進めてこそ、建設業の健全な発展につながる。
今回は下請会社との契約について解説する。
見積依頼
下請会社に見積依頼をする場合、見積条件を明確にするため、見積依頼は表1の13項目を伝えなければならない。また、その伝達は口頭ではなく、必ず書面で行う必要がある。
見積もりを依頼する場合、その期間は表2を基準に設定する必要がある(見積期間は土曜日、日曜日、祝日、年末年始休暇を除いて算出すること)。ただし、予定価格が②および③の工事については、やむを得ない事情があるときに限り、それぞれ見積期間を5日以内に限って短縮することができる。
標準的な見積費用は「直接工事費」「共通仮設費」「現場管理費」「諸経費」の4項目となる。一式見積もりは避けなければならない。また、「工事の種別」ごとに「経費の内訳」が明らかにするように努めなければならない(表3)。
請負契約は対等な立場で相互の合意に基づいて契約を締結しなければならない。したがって、通常、必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結してはいけない(図1)。
契約締結
見積内容で合意すれば、契約を締結する。請負契約書の作成は契約内容を書面で明確にすることで、請負代金、施工範囲などに係る紛争を未然に防ぐことが目的である。
請負契約の締結にあたっては、下請工事の着工前までに署名、または記名押印をして、相互に交付しなければならない。
契約書には表4の16項目を記載していなければならない。
一括下請負の禁止
一括下請負とは、自社が受注した工事を一括して下請負人に発注することで、公共工事、民間工事のうち、共同住宅を新築する工事については全面的に禁止されている(図2、その他の民間工事は、あらかじめ発注者の書面による承諾があればいい)。元請負人が一次下請に発注する場合、一次下請が二次下請負人に発注する場合、それぞれ禁止である。
下請工事へ関与が認められるためには、以下の①~⑥の6項目(元請の場合は①~⑩の10項目)について、主体的な役割を果たすことが必要である。
①施工計画の作成
②工程管理
③出来形、品質管理
④完成検査
⑤安全管理
⑥下請業者への指導監督
⑦発注者との協議
⑧住民への説明
⑨官公庁などへの届け出など
⑩近隣工事との調整
下請負契約についてのQ&A
ここで「下請負契約」に関連する項目をQ&A方式でまとめてみた。どれくらい理解しているか、しっかり確認してほしい。
問題
Q1
協力会社への見積作成依頼を、前回工事と同様の内容であったため、電話にて実施した。
Q2
1200万円程度の協力会社への見積作成を、自然災害に伴う緊急対応との発注者の要望もあり、7日間でやってもらうよう依頼した。
Q3
今回の工事は予算が厳しいため、原価割れをしている金額での下請会社への発注であることは承知していたが、前回工事の利益を充当してもらうよう下請会社に依頼した。
解答
A1 ×
見積依頼は書面で実施する必要がある。
A2 ○
500万円以上、5000万円未満の工事の見積依頼は中10日以上が必要だが、やむを得ない事情があるときは、5日以内に限って短縮できる。
A3 ×
自己の取引上の地位を不当に利用し、通常、必要と認められる原価に満たない金額で、請負契約を締結することは建設業法違反である。
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。