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労働安全衛生法の法令用語を学ぶ【コンプライアンス入門 第20回】
現場で役立つ!
2026.01.09
第20回
法令用語
わかりにくい法令用語
労働安全衛生法や、その他の法律を読んでいると、よくわからない表現や用語が出てくる。いわゆる「法令用語」だ。これらの表現や用語を正しく理解しなければ、コンプライアンスを徹底することはできない。今回は、わかりにくい法令用語と安全用語を解説する。
法令用語には独特の表現や特殊な使い方がある。以下に間違えやすい法令用語と解説を取り上げる。
(1)又は、若しくは
「A又はB」はAかBの「どちらか1つ」を意味する。2つに1つを意味する場合は「A又はB」、3つから1つを選択する場合は「A、B又はC」と表記する。
「A又はB若しくはC」とは「A又はB」と「C」を対比する場合に用いる。
事例としては「当該場所において行われる特定作業に係る仕事の全部を請負人に請け負わせる建設業に属する事業の元方事業者又は第30条第2項若しくは第3項の規定により指名された事業者で……」となる。
(2)及び、並びに
「A及びB」はAとBの両方を指すときに使用する。AとBとCを指す場合は「A、B及びC」と表記する。
「A及びB並びにC」はA、BのグループとCをつなぐ場合に使用する。
(3)以上、以下、超える、未満
「以上」「以下」は基準となる数量を含むときに用いる。
一方で「超える」「未満」は基準となる数量を含まないときに使用する。
事例としては「厚生労働省令で定める規模の事業者は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場とする」となる。
(4)以前、前、以降、後、以内、内
「以前」「以後」は基準となる数量を含むときに使用し、「前」「後」は基準となる数量を含まないときに用いる。
なお、「以内」「内」は期間を表す用語で、それほど明確な区別はない。
(5)期日、期限、期間
「期日」は一定の日、「期限」は将来的に発生することが確実なことがら、「期間」は〇日間、〇カ月間を、それぞれ示す。
(6)直ちに、遅滞なく、速やかに
「直ちに」は「何をおいても、すぐ」という意味で、時間的な即効性が非常に強い場合に使う。「遅滞なく」は時間的な即時性は強いが、正当な、または合理的な理由であれば、すぐに行わなくても構わない場合に用いる。「できるだけ早く」という意味である。
一方で「速やかに」は訓示的に使用され、義務を怠り、延ばしたとしても、すぐには違法にならないという意味を持つ(図1)。
(7)その他の、その他
「その他の」は「△△その他の〇〇」というように、〇〇の1つの例として△△を挙げる場合に使用する。
事例としては「機械、器具その他の設備」となる(設備の事例として機械、器具を挙げている)。
また、「その他」は「△△その他〇〇」というように、〇〇と△△は別のものとして並列して使用される。
(8)みなす、推定する
「みなす」は「〇〇とみなす」というように〇〇として取り扱うことを指し、反対の主張は認められない。
一方、「推定する」は〇〇と推定することを意味し、反対の主張をして推定を破ることは認められる。
事例としては「事業者が、当該建築物又は工作物について、石綿等が使用されるものとみなして労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、その限りではない」となる。
(9)準用
「準用」は、ある法令を、それが本来「適用」されることを予定している場合以外にも、多少は法令を読み替えたうえであてはめようとしている意味である。
事例としては「第11条第2項の規定は、元方安全衛生管理者について準用する」となる。
(10)気象の定義
「大雨」は1回の降雨量が50mm以上の降雨を指し、「大雪」は1回の降雪量が25cm以上の降雪を指す。
また、「強風」は10分間の平均風速が毎秒10m以上の風、「暴風」は瞬間風速が毎秒30mを超える風を意味する。

わかりにくい安全用語
労働安全衛生法についての用語には略語や特別な意味で用いるものがある。間違えやすい安全用語と解説を以下に示す。
(1)SDS(Safety Data Sheet)
安全データシートの略称。化学物質の成分、性質、人体に及ぼす作用などが記載されている。
(2)インターロック
機械の各作動部分の相互間を電気的、機械的、油圧(空圧)的などの方法で連結し、機械の作動部分が正常に作動する条件が満たされなければ、自動的に機械を作動できないようにする機構。例えば、安全カバーが開放されると機械が停止する仕組みなどを指す。
(3)安全標識
安全を確保するための表示で、防火、禁止、危険、注意、救護、用心、放射能、方向、指導の9種類に分けられる。
(4)気積
1人の成人が必要とする部屋の容積。事務所衛生基準規則により、事務所では1人あたり10m3以上が必要とされている(設備に占める容積および4mを超える高さの空間を除く)。
(5)高所
高さ2m以上の作業床。
(6)昇降設備
高さ、深さが1.5mを超える箇所で作業を行うとき、昇降設備が必要になる。
(7)酸素欠乏空気
酸素濃度が18%未満の空気。
(8)フールプルーフ
作業者がエラーをしても災害につながらない装置、機構。巻過防止装置、リミットスイッチ(図2)などを指す。
(9)フェールセーフ
機械、設備が故障しても、安全が確保される装置、機構。感電防止用漏電遮断装置(ブレーカ、図3)などが該当する。


[参考]
「安全法令ダイジェスト【改訂第8版】テキスト版」
労働新聞社編、2023年12月、株式会社労働新聞社
プロフィール
降籏 達生(ふるはた・たつお)
兵庫県出身。映画「黒部の太陽」で建設業に魅せられ、大学卒業後、大手ゼネコンに入社。社会インフラの工事に従事する。1995年には阪神・淡路大震災で故郷の崩壊に直面し、建設業界の変革を目指して独立。1998年にハタ コンサルタント株式会社を設立し、代表として建設業界の革新、技術者の育成、建設会社の業績アップに情熱を注いでいる。
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