水力発電の×と〇を解き明かす【シン・Dr.フドー研究所】Vol.3

電験三種の論説問題にズームイン

2024.08.26

Vol.3
水力発電③

　電験の学習が、どのように現場実務に結びつくかを研究する「Dr.フドー研究所」。設立から3年、電験三種の問題を徹底的に分析し、現場実務と照合した結果、論説の「正誤問題」と「空白問題」に攻略の糸口をみつけることができた。電験三種を制し、主任技術者を志す受験者に狂喜乱舞のテーマを究明する。それが「シン・Dr.フドー研究所」だ。
　正誤問題の「×の理由」とは？　そして、空白問題に潜む「〇の理由」とは？
　正解の理由に迫ることで知識を確実にストックし、現場実務とのリンクを盤石にすることができる。さあ、いますぐ研究所のドアをノックしようじゃないか！

水車の種類（1）

問題　次の文章は、水車の種類に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）～（オ）にあてはまる組み合わせとして、正しいものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。

（1）（ア）反動水車（イ）ペルトン水車（ウ）衝動水車（エ）カプラン水車（オ）多く
（2）（ア）衝動水車（イ）フランシス水車（ウ）反動水車（エ）ペルトン水車（オ）少なく
（3）（ア）反動水車（イ）ペルトン水車（ウ）衝動水車（エ）フランシス水車（オ）多く
（4）（ア）衝動水車（イ）フランシス水車（ウ）反動水車（エ）斜流水車（オ）少なく
（5）（ア）反動水車（イ）フランシス水車（ウ）衝動水車（エ）ペルトン水車（オ）多く

　水力発電は、水の持つ位置エネルギーを水車により機械エネルギーに変換し、発電機を回す。水車には衝動水車と反動水車がある。には、プロペラ水車などがあり、揚水式のポンプ水車としても用いられる。これに対し、の主要な方式であるは高落差で流量が比較的少ない場所で用いられる。
　水車の回転速度は構造上比較的低いため、水車発電機は一般的に極数をするように設計されている。
2008（平成20）年度「電力」問1
答（5）

〇の理由
（ア）～（エ）「反動水車」には「フランシス水車」やプロペラ水車などがある。一方で「衝動水車」の主なものは「ペルトン水車」である（図1）。
（オ）水車発電機には回転界磁形の同期発電機が使用される。特徴としては極数（p）が「多く」、回転速度は低い。
　なお、周波数をf［Hz］とすると、同期速度N_sは以下の式で求めることができる。
　　 $N_{s} = \frac{120 f}{p}$ ［min^-1］
　したがって、正しい組み合わせは（5）となる。

水車の種類（2）

問題　次の文章は、水車の種類に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）～（オ）にあてはまる組み合わせとして、正しいものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。

（1）（ア）反動（イ）ペルトン（ウ）プロペラ（エ）フランシス（オ）クロスフロー
（2）（ア）衝動（イ）フランシス（ウ）カプラン（エ）クロスフロー（オ）ポンプ
（3）（ア）反動（イ）斜流（ウ）フランシス（エ）ポンプ（オ）プロペラ
（4）（ア）衝動（イ）ペルトン（ウ）フランシス（エ）プロペラ（オ）クロスフロー
（5）（ア）斜流（イ）カプラン（ウ）クロスフロー（エ）プロペラ（オ）フランシス

　水をノズルから噴出させ、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変えた流水をランナに作用させる構造の水車を

水車と呼び、代表的なものに水車がある。また、水の位置エネルギーを圧力エネルギーとして、流水をランナに作用させる構造の代表的な水車に水車がある。さらに、流水がランナを軸方向に通過する水車もある。近年の地球温暖化防止策として農業用水、上下水道、工業用水など、少水量と低落差での発電が注目され、代表的なものに水車がある。
2013（平成25）年度「電力」問1
答（4）

〇の理由
（ア）、（イ）「衝動」水車は高落差に用いられ、代表的なものが「ペルトン」水車で、ノズルが装備されている。
（ウ）、（エ）圧力エネルギーを利用する反動水車は中～低落差に用いられ、主に「フランシス」水車や斜流水車、プロペラ水車などが挙げられる。「プロペラ」水車は流水がランナを軸方向に通過する。
（オ）「クロスフロー」水車はランナに入った水が、ランナをクロスするように貫通して流れるという特徴がある。
　それぞれの水車の特徴を図2にまとめる。
　したがって、正しい組み合わせは（4）となる。

水車の種類（3）

問題　次の文章は、水車の種類に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）～（エ）にあてはまる組み合わせとして、正しいものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。

（1）（ア）圧力水頭（イ）速度水頭（ウ）フランシス（エ）空気中
（2）（ア）圧力水頭（イ）速度水頭（ウ）フランシス（エ）吸出し管中
（3）（ア）速度水頭（イ）圧力水頭（ウ）フランシス（エ）吸出し管中
（4）（ア）速度水頭（イ）圧力水頭（ウ）ペルトン（エ）吸出し管中
（5）（ア）速度水頭（イ）圧力水頭（ウ）ペルトン（エ）空気中

　衝動水車は、位置水頭をに変えて水車に作用させるものである。この衝動水車は、ランナ部でを用いないので、水車のように、水流がを通過するような構造が可能となる。
2010（平成22）年度「電力」問1
答（5）

〇の理由
（ア）～（エ）衝動水車は位置水頭を「速度水頭」に変化させる。反動水車のようにランナ部で「圧力水頭」を用いることはない。このため「ペルトン」水車のように水流が「空気中」を通過するような構造を可能にしている。
　したがって、正しい組み合わせは（5）となる。

水車の種類（4）

問題　次の文章は、水車の種類に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）～（オ）にあてはまる組み合わせとして、正しいものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。

（1）（ア）運動（イ）衝動（ウ）ペルトン（エ）高落差（オ）大きい
（2）（ア）圧力（イ）反動（ウ）フランシス（エ）低落差（オ）大きい
（3）（ア）位置（イ）反動（ウ）カプラン（エ）高落差（オ）大きい
（4）（ア）圧力（イ）衝動（ウ）フランシス（エ）低落差（オ）小さい
（5）（ア）運動（イ）衝動（ウ）ペルトン（エ）高落差（オ）小さい

　水圧管の先端がノズルになっていると、有効落差はすべてエネルギーとなり、水は噴流となって噴出し、ランナのバケットにあたってランナを回転させる。このような水の力で回転する水車を水車という。
　代表的なものとして水車があり、で、流量の比較的少ない場所に用いられ、比速度は。
2022（令和4）年度下期「電力」問2
答（5）

〇の理由
（ア）～（オ）「衝動」水車はノズルから出た水の持つ「運動」エネルギーを利用する。代表的なものに「ペルトン」水車があり、「高落差」＆小水量で、比速度は「小さい」という特徴がある。
　したがって、正しい組み合わせは（5）となる。

吸出し管

問題　水力発電に関する記述として、誤っているものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。
（1）水車発電機の回転速度は、汽力発電と比べて小さいため、発電機の磁極数は多くなる。
（2）水車発電機の電圧の大きさや周波数は、自動電圧調整器や調速機を用いて制御される。
（3）フランシス水車やペルトン水車などで用いられる吸出し管は、水車ランナと放水面までの落差を有効に活用し、水車の出力を増加する効果がある。
（4）わが国の大部分の水力発電所において、水車や発電機の始動、運転、停止などの操作は遠隔監視制御方式で行われ、発電所は無人化されている。
（5）カプラン水車はプロペラ水車の一種で、流量に応じて羽根の角度を調整することができるため、部分負荷での効率の低下が少ない。
2022（令和4）年度上期「電力」問1
答（3）

×の理由
　吸出し管は反動水車（フランシス水車、斜流水車、プロペラ水車など）に用いられ、衝動水車（ペルトン水車など）には装備されていない（図3）。
　上記より、誤っている選択肢は（3）と判断できる。

文／不動弘幸　イラスト／藤井としたか

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