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火力発電の×と〇を解き明かす【シン・Dr.フドー研究所】Vol.7
電験三種の論説問題にズームイン
2025.03.10
Vol.7
火力発電③
電験の学習が、どのように現場実務に結びつくかを研究する「Dr.フドー研究所」。設立から3年、電験三種の問題を徹底的に分析し、現場実務と照合した結果、論説の「正誤問題」と「空白問題」に攻略の糸口をみつけることができた。電験三種を制し、主任技術者を志す受験者に狂喜乱舞のテーマを究明する。それが「シン・Dr.フドー研究所」だ。
正誤問題の「×の理由」とは? そして、空白問題に潜む「〇の理由」とは?
正解の理由に迫ることで知識を確実にストックし、現場実務とのリンクを盤石にすることができる。さあ、いますぐ研究所のドアをノックしようじゃないか!
蒸気タービン(1)
問題 汽力発電所における蒸気の作用及び機能や用途による蒸気タービンの分類に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)復水タービンは、タービンの排気を復水器で復水させて高真空とすることにより、タービンに流入した蒸気をごく低圧まで膨張させるタービンである。
(2)背圧タービンは、タービンで仕事をした蒸気を復水器に導かず、工場用蒸気及び必要箇所に送気するタービンである。
(3)反動タービンは、固定羽根で蒸気圧力を上昇させ、蒸気が回転羽根に衝突する力と回転羽根から排気するときの力を利用して回転させるタービンである。
(4)衝動タービンは、蒸気が回転羽根に衝突するときに生じる力によって回転させるタービンである。
(5)再生タービンは、ボイラ給水を加熱するため、タービン中間段から一部の蒸気を取り出すようにしたタービンである。
2013(平成25)年度「電力」問3
×の理由
反動タービンは固定羽根(静翼)で流れを整え、回転羽根(動翼)で圧力を降下させて蒸気の速度を上げ、動翼に生じる衝動力と、動翼で圧力を降下させて生じた反動力を利用して回転させるタービンである。
上記より、誤っている選択肢は(3)と判断できる。
答(3)

蒸気タービン(2)
問題 蒸気の使用状態による蒸気タービンの分類に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1)復水タービン:タービンの排気を復水器で復水させて高真空を得ることにより、蒸気をタービン内で十分低圧まで膨張させるタービン。
(2)背圧タービン:タービンで仕事をさせたあとの排気を、工場用蒸気その他に利用するタービン。
(3)抽気タービン:タービンの中間から膨張途中の蒸気を取り出し、工場用蒸気その他に利用するタービン。
(4)再生タービン:タービンの中間から一部膨張した蒸気を取り出し、再加熱してタービンの低圧段に戻し、さらに仕事をさせるタービン。
(5)混圧タービン:異なった圧力の蒸気を同一タービンに入れて仕事をさせるタービン。
2003(平成15)年度「電力」問2
×の理由
再生タービンはボイラ給水を加熱するため、タービン中間段から一部の蒸気を取り出すようにしたタービンである。
再熱タービンは高圧タービンで膨張した蒸気を取り出し、再熱器で再加熱して低圧タービンで蒸気を利用する。
上記より、誤っている選択肢は(4)と判断できる。
答(4)

蒸気タービン(3)
問題 汽力発電所の蒸気タービン設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)衝動タービンは、蒸気が回転羽根(動翼)に衝突するときに生じる力によって回転させるタービンである。
(2)調速装置は、蒸気加減弁駆動装置に信号を送り、蒸気流量を調整することで、タービンの回転速度制御を行う装置である。
(3)ターニング装置は、タービン停止中に高温のロータが曲がることを防止するため、ロータを低速で回転させる装置である。
(4)反動タービンは、固定羽根(静翼)で蒸気を膨張させ、回転羽根(動翼)に衝突する力と回転羽根(動翼)から排気するときの力を利用して回転させるタービンである。
(5)非常調速装置は、タービンの回転速度が運転中に定格回転速度以下となり、一定値以下まで下降すると作動して、タービンを停止させる装置である。
2018(平成30)年度「電力」問3
×の理由
非常調速装置は、タービンの回転速度が運転中に定格回転速度の110±1%に上昇したとき、タービンへの蒸気の流入を遮断する保安装置である。
上記より、誤っている選択肢は(5)と判断できる。
答(5)
熱効率向上策(1)
問題 汽力発電において、熱効率の向上を図る方法として、誤っているものは次のうちどれか。
(1)主蒸気温度を上げる。
(2)再熱蒸気温度を上げる。
(3)復水器真空度を高める。
(4)主蒸気圧力を上げる。
(5)排ガス温度を上げる。
2000(平成12)年度「電力」問4
×の理由
排ガス温度を上げると排気損失が大きくなり、熱効率が下がってしまう。
上記より、誤っている選択肢は(5)と判断できる。
答(5)
熱効率向上策(2)
問題 汽力発電所における熱効率向上方法として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)タービン入り口蒸気として、極力、温度が低く、圧力が低いものを採用する。
(2)復水器の真空度を高くすることで蒸気はタービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える。
(3)節炭器を設置し、排ガス温度を上昇させる。
(4)高圧タービンから出た湿り飽和蒸気をボイラで再熱させないようにする。
(5)高圧および低圧のタービンから蒸気を一部取り出し、給水加熱器に導いて給水を加熱させ、復水器に捨てる熱量を増加させる。
2019(令和元)年度「電力」問3
〇の理由
復水器の真空度を高める(=より低圧にする)とタービンの入り口と出口の圧力差が大きくなり、蒸気はタービン内で十分に断熱膨張し、羽根車に大きな回転力を与える。
したがって、正しい選択肢は(2)と判断できる。
ちなみに、同テーマは類似問題が多く、2009(平成21)年度「電力」問3では「復水器の真空度を低くすることで蒸気タービン内で十分に膨張して、タービンの羽根車に大きな回転力を与える」という下線部の誤りを指摘する問題が出ている。
答(2)
保護装置
問題 汽力発電の保護装置に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)蒸気タービンの回転速度が定格を超える一定値以上に上昇すると、自動的に蒸気止弁を閉じて、タービンを停止する非常調速機が設置されている。
(2)ボイラ水の循環が円滑に行われないとき、水管の焼損事故を防止するため、燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断装置が設置されている。
(3)負荷の緊急遮断等によって、ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき、蒸気を放出させて機器の破損を防ぐため、蒸気加減弁が設置されている。
(4)蒸気タービンの軸受油圧が異常低下したとき、タービンを停止させるトリップ装置が設置されている。
(5)発電機固定子巻線の内部短絡を検出、保護するために、比率差動継電器が設置されている。
2020(令和2)年度「電力」問3改題、2012(平成24)年度「電力」問3類似
×の理由
負荷の緊急遮断でボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき、蒸気を放出させて機器の破損を防ぐのは安全弁である。蒸気加減弁は蒸気の流量を調整する。
上記より、誤っている選択肢は(3)と判断できる。
答(3)
文/不動 弘幸 イラスト/藤井 としたか