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「零相」がつく機器にクローズアップ!【現場のギモン、超解決塾】其ノ一
電気の「?」に「!」をお届け
2026.04.01
其ノ一
「零相」の意味
「人間は考える葦である」とパスカルは言い、「大切なのは、問うのをやめないことだ」とアインシュタインは語り、「問うことを好めば即ち裕」と孔子は論語に著している。
ギモンを持つことは必要不可欠なことであり、すなわち、人間の権利でもあるのだ。
わからない。だから、知りたい。この単純明快な思考の展開に対して、さまざまなアンサーを用意して塾生の「ギモン」を待っているのが超解決塾だ。
電気の現場で仕事をこなす技術者が抱く「?」を基礎から徹底的に解説していく。今回は変流器や計器用変圧器に使われる「零相」について考えてみる。
CTとZCTって、何が違う?
地絡電流を検出するZCTは零相変流器といいますが、地絡変流器という名称ではありません。地絡電圧を検出するZVTも地絡計器用変圧器ではなく、零相計器用変圧器といいます。なぜ、零相という言葉を使うのでしょうか。
・CT
CT(写真1)はCurrent Transformerの略で、変流器のことです。大電流や高圧回路の電流を安全で扱いやすい電流(通常は5A)に変換して、計器や継電器に入力するために使用します。
CTの原理は一般の変圧器と同じで、図1のように鉄心に巻きつけた一次巻線と二次巻線間で電流の変換を行います。
一次巻線と二次巻線の巻数を、それぞれN1、N2とすると、二次電流I2は、
I2=
×I1[A]
となるので、N1を少なく、N2を多くすれば二次電流I2を小さくすることができます。
なお、
を変流比といいます。
・ZCT
ZCTはZero-phase Current Transformerの略で、零相変流器を指します。写真2は高圧ケーブルに設置した状態です。
ZCTもCTも原理は同じで、どちらも電流を変換する機器です。異なるのは使用方法で、CTは1つのCTに一次側の1相分のケーブルを接続します。このため、二次側には一次側の1相分の電流が変流比に応じた大きさで出力されます。
しかし、ZCTは一次側に3相分の電線を一括で通します(写真2、図2)。これにより、二次側には一次側の3相分の電流を合成した電流が変流比に応じた大きさで出力されます。
通常、一次側の3相分の電流はベクトル合成すると「零」になるので、ZCTの二次側には電流は流れません。図2のように各相の電流の大きさがアンバランスでも、合成電流は必ず零になります。
ただし、電路の絶縁不良などで地絡事故が発生した場合、地絡電流は流れますが、これは三相電路以外に流れるので3相の合成電流は零になりません。このためZCTの二次側に電流が流れることになります。
ZCTは、このように地絡電流を検出するための機器なのです。




VTとZVTって、何が違う?
・VT
VT(写真3)はVoltage Transformerの略で、計器用変圧器のことです。高電圧を安全で扱いやすい電圧(通常は110V)に変換し、計器や継電器に入力するために使用します。
VTの原理も一般の変圧器と同様で、一次巻線と二次巻線の巻数を、それぞれN1、N2とすると、二次電圧V2は、
V2=
×V1[V]
となるので、N2を少なく、N1を多くすれば二次電圧V2を小さくすることができます。
なお、
を変圧比といいます。
・ZVT
ZVTはZero-phase Voltage Transformerの略で、零相計器用変圧器を指します。写真4、5はコンデンサ形のZVTで、コンデンサ部と検出部から構成されています。
ZVTは図3のようにY結線のコンデンサCを各相に接続し、その中性点は検出部のコンデンサC0を介して接地します。各相の対地電圧が等しければ、検出部のコンデンサ(C0)には電圧は発生しませんので出力も零となります。
しかし、地絡事故などが発生し、各相の対地電圧のバランスが異なると電圧が発生します。ZVTは、このような原理で地絡電圧を検出します。
なお、ZVTはZPD(Zero-phase Potential Device)やZPC(Zero-phase Potential Capacitor)などと呼ばれることもあります。




零相って?
(1)三相平衡回路と三相不平衡回路
前章でZCTとZVTを説明しましたが、それぞれの機器に「零相」という用語が使われています。この「零相」とは、そもそも何を表現しているのでしょうか? 地絡電流と零相電流、地絡電圧と零相電圧という用語もありますが、混同して使われることもありますので、零相の意味について解説していきます。
まず、図4のような回路について考えてみます。
大きさが等しく、位相差が120°の電圧を各相のインピーダンスが等しい負荷に接続すると、各相の電圧と電流は大きさが等しく、位相差が120°の交流となります。いわゆる三相平衡回路となり、電流や電圧を求めるのに単相の等価回路を使用できるので計算もシンプルです。
一方、各相の電圧や回路定数、負荷などがバラバラの場合、あるいは断線、短絡、地絡などの故障のときは各相の電圧と電流がアンバランスとなり(三相不平衡回路)、その回路計算は複雑になります。
このように、複雑な三相不平衡回路の電圧や電流を計算するために考案されたのが、対称座標法という計算法です。そして、この対称座標法で零相が使用されます。

(2)対称座標法とは?
例えば、図5のような電流が流れている場合を考えます。
、
、
は図2に示すようなアンバランスな不平衡電流とします。
このままでは計算が複雑なので、対称座標法では
、
、
という電流を使用しますが、この電流を求めるために「ベクトルオペレータ」という概念が必要になります。
あるベクトルにかけると、大きさは変わらず、位相が120°、240°進んだベクトルに変化させるものをベクトルオペレータと呼んでいます。「
」「
」で表し、それぞれ以下になります。
=1∠120°=
+j
=1∠240°=
-j
このベクトルオペレータを利用して
、
、
を求めていきます。

①電流
は、各相の電流を合成して3でわったものです。
……(1)
②電流
は、b相の電流の位相を120°、c相の電流の位相を240°進め、これにa相の電流を合わせて3でわったものになります。
……(2)
③電流
は、b相の電流の位相を240°、c相の電流の位相を120°進め、これにa相の電流を合わせて3でわったものです。
……(3)
このように
、
、
が、どのような電流であっても
、
、
という電流を求めることができます。
また、
、
、
から
、
、
を求める場合は以下のようになります。
④電流
は
、
、
を、そのまま合成したものです。





このように、対称座標法とは不平衡な電流や電圧を、平衡(バランス)した対称分の電流や電圧に分解して計算するための方法です。
実際、不平衡回路の電流や電圧を零相、正相、逆相の対称回路に分解して、それを対称分ごとに計算し、最後に合成して答えを求めます。対称回路は単相(零相)と三相平衡回路(正相、逆相)なので計算は複雑ではありません。
⑦三相回路の相回転
ここで、三相回路の相回転について深く取り上げてみます。
三相交流は位相をずらした3つの単相交流を組み合わせたものなので、位相の順序を考える必要があります。これを相回転、あるいは相順といいます。
例えば、三相交流電圧の各相(a相、b相、c相)の瞬時値が以下のような場合を考えてみます。
これを波形では図11、ベクトルでは図12のように表すことができます。
相回転は各相のベクトルを、反時計方向に回転させたとき、基準軸(a相)を通過する順序で表します。したがって、位相がa相→b相→c相の順で遅れているとき(b相はa相より遅れ、c相はb相より遅れ)、相回転はabcとなります。
また、abcの相順を正回転(正相)とすると、相回転がacbなら逆回転(逆相)となります。


(3)零相、正相、逆相の意味
零相、正相、逆相は対称座標法で使う用語ですが、実際の回路とは、どのような関係になるのでしょうか。その意味を解説していきます。
①三相平衡回路
三相平衡回路は
となり、零相分と逆相分の電流は0で、正相分の電流のみが生じます。電圧の場合も同様です。
一方、三相不平衡回路の場合は、正相分だけでなく、零相分と逆相分の電流も発生します。
②零相
ZCTで検出する地絡電流は、図2でわかるように三相の合成電流です。一方、零相電流は対称座標法の(1)式から、
となります。
これは三相の合成電流の
また、零相電圧
になります。ZVTは図3から三相各相の対地電圧を合成した値を検出するので、零相電圧
このように、零相電流
なお、零相は通常の不平衡では発生せず、地絡故障時や対地静電容量のアンバランスなどにより、大地に電流が流れるときに発生します。
③正相、逆相
電力系統には発電機、送電線、変圧器など、さまざまな機器が接続されています。これらの機器の各相のバランスは必ずしも保たれているわけではありません。また、電源のバランスがとれていても、負荷のバランスが崩れていると三相不平衡電圧が発生します。この影響が大きいのが、回転機である三相誘導電動機です。
不平衡の三相電圧は零相分電圧、正相分電圧、逆相分電圧の3つが合成されたものなので、三相不平衡電圧を三相誘導電動機に加えることは、3種類の電圧を同時に加えたことと同じになります。
三相誘導電動機は巻線の中性点が非接地のため、零相分の電流は流れません。正相分と逆相分のみが流れます。三相誘導電動機の固定子端子からみた逆相分に対するインピーダンスは、正相分に対するインピーダンスよりもはるかに小さいので、電圧の不平衡がわずかでもあると、相当量の逆相分電流が流れます。
逆相は三相平衡回路ですが、相回転が逆回転ベクトルです。したがって、不平衡の電源のなかに逆相分があると、電動機であれば逆回転のトルクが発生します。これは回転にブレーキをかけていることと同じなので、過大になると固定子が発熱して故障につながるおそれがあります。また、有効なトルクが減少するため、効率や出力自体の低下につながります。
なお、三相不平衡の大きさを表すとき、以下の不平衡率を使用します。
電圧不平衡率=
電流不平衡率=
電圧不平衡率の許容される判断基準は特にありませんが、5%以下であれば、おおむね製作上の裕度の範囲内とされています。
塾長/田沼 和夫
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