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自動火災報知設備の設置対象を理解する【消防設備士甲種第4類講座】第8回
これを押さえて!
2025.07.11
第8回
自動火災報知設備の設置対象
今回は自動火災報知設備を設置する防火対象物について取り上げます。設置基準は必ず出題される重要なテーマです。特定防火対象物と非特定、原則と例外などを整理しながら、しっかりマスターしていきましょう。
自動火災報知設備の設置対象
自動火災報知設備を設置しなければならない防火対象物は用途、規模、建物構造などにより細かく規定されています(表1)。さらに例外的な要素もあり、非常にわかりにくいものになっています。

建物全体に設置義務
(1)用途と面積
自動火災報知設備の設置は「特定防火対象物」と「特定ではない防火対象物(以下、非特定防火対象物)」に大きく分けられます。原則として設置しなければならない延べ面積が以下のように定められています。
特定防火対象物 :300m2以上に設置
非特定防火対象物:500m2以上に設置
・特定防火対象物
防火対象物のうち、デパートや劇場などの不特定多数の者が出入りする施設、病院や幼稚園などのように火災の際に人命が危険にさらされる確率が高い施設です。この特定防火対象物では非特定防火対象物より厳しい規制がかけられます。
原則として延べ面積が300m2以上で自動火災報知設備の設置が義務づけられます。
・特定防火対象物の例外
ただし、表2のAに記載されるような例外があります。

・特定用途を含む複合用途防火対象物
(16)項イ「特定用途を含む複合用途」は雑居ビルなどの複数の用途からなる建物で、そのなかに特定用途が含まれるものをいいます。
この場合、延べ面積が300m2以上の建物は、全体に自動火災報知設備の設置が義務づけられます。
ただし、延べ面積が300m2未満であっても特定用途の部分が表2のA1部分((2)項ニ、(5)項イ、就寝施設がある(6)項イ、ハおよび(6)項ロ)である場合は、そのA1部分に自動火災報知設備の設置が必要です(図1)。

・非特定防火対象物
非特定防火対象物については原則として延べ面積が500m2以上で自動火災報知設備の設置が義務づけられます。
・非特定防火対象物の例外
ただし、表3のBに記載されるような例外があります。

・特定用途を含まない複合用途防火対象物
(16)項ロ「特定用途を含まない複合用途防火対象物」の場合は用途ごとに設置基準の面積に達した用途部分にのみ自動火災報知設備の設置が義務づけられます(図2)。

(2)特定一階段等防火対象物
特定一階段等防火対象物とは屋内階段がひとつしかなく、なおかつ、地階または3階以上の階に特定用途部分が存在する建物です(詳細は本講座の第2回を参照)。
特定一階段等防火対象物には、延べ面積にかかわらず、全体に自動火災報知設備の設置が必要です(図3)。

部分、階に対しての設置義務
(1)地階、無窓階、3階以上の階
建物の地階、無窓階(窓がない階ということではなく、避難上、消火活動で有効な開部(窓など)を持っていない階。詳細は本連載の第3回を参照)、3階以上の階については、原則として床面積が300m2以上の場合、その階に自動火災報知設備の設置が必要です。
ただし、表4のCに記載される例外があります(図4)。(2)項イ~ハ、(3)項イ、ロについては、100m2以上の地階、無窓階は、その階に設置が必要です。


(2)11階以上の階
11階以上の階には、床面積にかかわらず、設置が必要になります(図5)。

(3)駐車場のある地階または2階以上の階
地階または2階以上の階に200m2以上の駐車場がある場合には、その階に自動火災報知設備の設置が必要です。
(4)道路として使用される部分
防火対象物の一部が道路である場合、屋上部分にあっては600m2以上、それ以外の部分にあっては400m2以上の場合に、その部分に自動火災報知設備の設置が必要です。
(5)通信機器室
防火対象物にある床面積が500m2以上の通信機器室には、その部分に自動火災報知設備の設置が必要です。
(6)指定可燃物
指定可燃物(火災時に拡大が早く、または消火活動が著しく困難になるものとして政令で指定したもの。具体的には「木くず」「わら」「合成樹脂」など)を「危険物の規制に関する指令別表第4」で定める数量の500倍以上の貯蔵、または取り扱う場合には、建物の延べ面積などにかかわらず、自動火災報知設備の設置が必要になります。
危険物
危険物施設への自動火災報知設備の設置は「危険物の規制に関する規則」で定められています。
原則として、指定数量の100倍以上の危険物(消防法で定められているもので、火災発生、火災拡大の危険性が大きいもの、消火の困難性が高いもの。具体的には「ガソリン」「灯油」「油性塗料」など)を防火対象物内に貯蔵、もしくは取り扱う場合には、建物の延べ面積などにかかわらず、自動火災報知設備の設置が必要です。
また、指定数量の10倍以上の危険物の貯蔵、取り扱い施設には、以下のうち1種類以上の機器、設備の設置が必要です。
・自動火災報知設備
・消防機関に報知できる電話
・非常ベル装置
・拡声装置
・警鐘
自動火災報知設備の設置免除
スプリンクラー設備など、他の消防用設備が設置されている場合、自動火災報知設備の設置が免除される場合があります。
次の消火設備の有効範囲内の部分では自動火災報知設備を設置しないことができます。
「表示温度75℃以下で1種の閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いた以下の設備」
・スプリンクラー設備
・水噴霧消火設備
・泡消火設備
ただし、設置が緩和できるのは非特定の防火対象物だけで特定防火対象物には設置が必要です。
また、非特定の防火対象物であっても、煙感知器の設置が必要な場所については設置緩和が適用できません。自動火災報知設備の併設が必要になります。
練習問題
例題1 自動火災報知設備の設置が必要な防火対象物はどれか。ただし、地階、無窓階および3階以上の階ではないものとする。
①延べ面積300m2の寄宿舎
②延べ面積300m2の幼稚園
③延べ面積300m2の小学校
④延べ面積300m2の公衆浴場
解説
自動火災報知設備の設置は例外もありますが、原則として特定防火対象物は延べ面積300m2以上、非特定防火対象物は延べ面積500m2以上で、この例題は原則どおりです。
「幼稚園」は特定防火対象物なので300m2以上で設置。したがって、②が正解です。
「寄宿舎」「小学校」「公衆浴場」は非特定防火対象物なので500m2以上で設置が必要になります。
答え:②
例題2 自動火災報知設備の設置が必要でない防火対象物はどれか。ただし、地階、無窓階および3階以上の階ではない。
①延べ面積1000m2の事務所
②延べ面積200m2のサウナ
③延べ面積100m2のカラオケボックス
④延べ面積500m2の神社
解説
①:事務所((15)項)は1000m2以上で設置が必要。
②:サウナ(蒸気浴場、(9)項イ)は200m2以上で設置が必要。
③:カラオケボックス((2)項ニ)は0m2から設置が必要。
④:神社((11)項)は1000m2以上で設置が必要となり、延べ面積500m2の神社には不要です。
したがって、④が正解です。
答え:④
例題3 防火対象物の部分で自動火災報知設備を設置しなければならないところはどれか。ただし、特定防火対象物ではない。
①地階で床面積100m2の飲食店
②床面積300m2の通信機器店
③無窓階で床面積が200m2の倉庫
④指定可燃物を300倍貯蔵
解説
①:(2)項、(3)項については地階、無窓階で100m2以上の部分に設置が必要。したがって、これが正解です。
②:通信機器室については500m2以上で設置が必要。したがって、誤り。
③:地階、無窓階、3階以上については300m2以上で設置が必要。したがって、誤り。
④:指定可燃物は500倍以上で設置が必要。したがって、誤り。
答え:①
例題4 次の複合用途防火対象物に対する自動火災報知設備の設置について正しいものはどれか。

①地下1階と1階に設置が必要
②地下1階と3階以上に設置が必要
③地下1階と1階と3階以上に設置が必要
④この対象物全体に設置が必要
解説
物販店と飲食店が特定用途で、この建物は特定用途を含む複合用途防火対象物(16)項イです。特定用途を含む複合用途防火対象物は延べ面積300m2以上で全体に設置が必要です。
答え:④
例題5 次の防火対象物の組み合わせのうち、すべて特定防火対象物である組み合わせはどれか。
①博物館、図書館、神社
②幼稚園、小学校、中学校
③映画館、カラオケボックス、サウナ
④寮、共同住宅、ホテル
解説
①:すべて非特定防火対象物。
②:小学校、中学校が非特定防火対象物。
③:すべて特定防火対象物。したがって、これが正解です。
④:寮、共同住宅が非特定防火対象物。
答え:③
例題6 閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えたスプリンクラーを設置した場合でも自動火災報知設備の設置を省略することができない防火対象物はどれか。
①博物館
②幼稚園
③小学校
④図書館
解説
閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えたスプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備の有効範囲内の部分では自動火災報知設備を省略することができます。
ただし、特定防火対象物にあっては省略することができません。したがって、選択肢のうち特定防火対象物の「②幼稚園」では省略することができません。
答え:②
文/川野 泰幸
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