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消防機器の機能や構造を知ろう【消防設備士甲種第4類講座】 第4回
これを押さえて!
2024.09.03
第4回 機器の機能、構造
前回まで、消防全般の関連法令について解説しました。次は順当にいけば、甲種4類部分の法令となるところですが、この部分の法令は機器と関連していることからシステム、機器の機能、構造を先に解説していきます。
自動火災報知設備
自動火災報知設備は、火災発生時に火災の発生を管理者、在館者へ知らせて消火、通報、避難対応につながる重要な設備です。
基本的には、
・火災の際に発生する熱や煙を感知する「感知器」
・人が火災を発見した際に手動で火災を知らせる「発信機」
・感知器と発信機の信号を受信し発生場所を管理者に知らせる「受信機」
・受信機からの出力で在館者へ火災を警報する「地区音響装置」
・発信機の位置を示す「表示灯」
・信号を中継する「中継器」
から構成されます。また、これらの機器(表示灯を除く)は、前回に説明した検定対象機器で、検定(型式承認、型式適合検定)に合格したものでなければ販売、陳列、工事に使用できません。
機器には用途、方式、規模別にいくつかの種類がありますが、最初に代表的なP型1級受信機のシステムを例として全体の構成を解説します。
図1はシステム構成例です。
例えば警戒区域1(※1)の場所で火災が発生したとします。感知器は火災を感知して受信機に火災信号を送信。受信機は火災灯の点灯と受信機本体の警報(主音響)鳴動により火災の発生を、地区表示装置で発生場所を管理者へ知らせるとともに、地区音響装置(ベル)を鳴動させて在館者へ避難を促します。
このように火災の感知から受信機での表示、警報、地区音響装置の警報までを自動で行うことから「自動火災報知設備」といいます。
※1 警戒区域:火災発生場所を特定するために設定する区域です。回線(=警戒区域)ということもあります。詳細は「設置基準」の回で解説します。
受信機
受信機は、用途や方式、建物規模などに応じて種類が分かれています(図2)。
大きく火災用とガス漏れ火災用、さらに火災とガス漏れ火災が一体になったものがあります。火災用(火災、ガス一体型については火災部分)は方式によってP型、R型に分類されます。さらにP型については規模により1~3級があります。
(1)方式による分類(図3)
P型受信機:感知器、発信機からの信号を警戒区域ごとに個別に配線する方式
R型受信機:感知器、中継器から固有の信号に変換し、それを共通の配線にのせて受信機に送信する方式
(2)規模による分類
P型受信機には1級から3級まで規模により細分化され、それぞれに要求される機能が異なります。
・P型1級、R型:接続できる警戒区域数(回線)の制限なし
・P型2級:接続できる警戒区域数5回線以下
・P型3級:接続できる警戒区域数1回線
(3)G型受信機
G型受信機はガス漏れ火災警報設備の受信機です。そのほかに火災報知用とガス漏れ火災用の受信機が一体になったGP 型受信機、GR 型受信機があります。
P型受信機とR型受信機
(1)P型受信機
一般に広く普及している受信機です。P型受信機は、「火災信号若しくは火災表示信号を共通の信号として、又は設備作動信号を共通、若しくは固有の信号として受信し、火災の発生を防火対象物の関係者に報知するもの」と定義されています(※2)。
この受信機は、回線ごとの信号が「共通の信号」です。そのため、それぞれ信号線が必要となります。
共通の信号とは、回線ごとに接続されている感知器から来る信号がどれも同じ信号であるということです。回線の違いは接続される受信機の端子で決まります。
※2 P型:P型の「P」は「Proprietary」の頭文字を取った「P」で、所有者型、私設型などを意味します。かつて公衆用の火災報知設備があったころに公衆用に対して私設で設置する設備としてP型と名づけられました。
(2)R型受信機
R型受信機は「火災信号若しくは火災表示信号若しくは火災情報信号を固有の信号として、又は設備作動信号を共通若しくは固有の信号として受信し、火災の発生を防火対象物の関係者に報知するもの」と定義されています(※3)。
固有の信号とは、各感知器などからの信号が異なっているということです。同じ端子に接続されても回線の区別が可能です。R型受信機では、感知器、中継器ごとに固有の信号として受信するため、各回線の信号線を必要としません。
P型受信機は、警戒区域(回線)ごとに配線する必要がありますが、R型受信機は配線をデータ伝送方式とし、アドレスをもった中継器、感知器からの固有信号を受信できることから以下の利点があります。
・配線数を少なくできる。
・警戒区域を細かく設定できる。
・ 固有信号に感知器の温度情報、煙濃度情報、感知器試験情報などを送受信できる。
※3 R型:R型の「R」は「Record」の頭文字を取った「R」で、記録、記憶を意味します。記録または記憶機能を有していることからR型といいます。
受信機の機能と構造
受信機の機能、構造については「受信機に係る技術上の規格を定める省令」で定められています。
(1)火災表示(図4)
受信機は、感知器または発信機、中継器からの火災信号などを受信し表示、警報します。これを火災表示といいます。
1)火災灯の点灯:赤色の「火災」という文字の点灯
2)主音響装置(火災時に受信機本体で鳴動する音響装置)の鳴動:正面から1mの位置で85dB以上の音圧(P型3級は70dB以上)
3)地区表示装置の点灯:火災の発生場所を表示
4)地区音響装置の鳴動:館内のベルなどの鳴動、音圧はベル、ブザーなど音響によるもの:90dB以上(音声によるもの:92dB以上)
上記、1)から4)までの動作をまとめて火災表示といいます。自動火災報知設備の役割は「感知器、発信機からの火災信号などを受信し火災表示をする」ことです(ただし、各表示灯の要否、音響の音圧などは受信機の種類により異なります)。
(2)火災表示までの時間(図5)
火災表示までの時間は、感知器などからの火災信号を受信機が受信してから、火災表示(地区音響装置の鳴動を除く)までの時間は、5秒以内でなければなりません。
(3)火災表示の保持(図5)
火災表示は手動で復旧(受信機の「復旧スイッチ」操作)しない限り、保持(感知器、発信機が復旧しても、受信機の表示装置は表示、音響装置は鳴動したままの状態を継続)しなければなりません(P型3級受信機を除く)。
(4)電話連絡装置(図5)
受信機、発信機間で電話連絡(通話)ができる装置が必要です(P型2級、P型3級を除く)。
受信機、発信機に電話用の接続ジャックがあり、これに送受話器を接続することで通話できるようになります。
(5)発信機の確認応答装置(図5)
発信機が押された際に受信機が火災信号を確認した旨を当該発信機に送る機能(発信機の確認灯が点灯)が必要です(P型2級、P型3級を除く)。
(6)地区音響再鳴動機能
地区音響を停止するスイッチを設ける場合は、停止状態、または地区音響を鳴動中スイッチで停止した状態で一定時間経過(10分以内)、発信機操作または、ほかの警戒区域の感知器などから火災信号を受信した際に自動的に地区音響装置を鳴動(再鳴動)させる機能が必要です。
(7)蓄積機能
蓄積式の受信機に装備される機能です。
非火災報(誤報)を防ぐため、感知器からの火災信号が一定時間継続して発信されていることを確認してから火災表示を行う機能です。蓄積時間は5秒を超え60秒以下とすることと定められています。また、蓄積中に発信機が押された場合は蓄積機能を解除することとされています。
(8)予備電源
受信機には停電時でも機能するように予備電源(蓄電池)が必要です(P型2級1回線、P型3級を除く)。予備電源には以下の1)~5)が定められています。
1)密閉型蓄電池であること
2)電池の口出し線は色分けして、受信機との接続部に誤接続防止のための措置を講じること
3)予備電源の電池容量が適正か測定できる試験装置を設けること
4)停電時に自動的に予備電源に切り替わり、復旧した場合には、自動的に主電源に切り替わる装置を設けること
5)予備電源の容量は監視状態60分継続したあと、2回線を作動させ、すべての地区音響装置を10分間継続して鳴動させることができる容量以上であること
(9)その他の機能
1)確実に作動し、かつ、取り扱い、保守点検および附属部品の取り替えが容易にできること
2)腐食により機能に異常を生ずるおそれのある部分には、防食のための措置を講ずること
3)不燃性または難燃性の外箱で覆うこと
4)定格電圧が60Vを超える受信機の金属製外箱には、接地端子を設けること
5)主電源の両極を同時に開閉できる電源スイッチを受信機の内部に設けること(P型3級、GP型3級、G型1回線を除く)
6)主電源を監視する装置を受信機の前面に設けること(電源灯)
7)受信機の試験装置は、受信機の前面において容易に操作できること
8)復旧スイッチ、音響停止スイッチは専用のものとすること(スイッチを内部に設ける場合またはP型3級、GP型3級は除く)
9)定位置に自動的に復旧しないスイッチが定位置にないとき、音響装置または点滅する注意灯(スイッチ注意灯)が作動すること
10)地区音響装置停止は、次によること
・地区音響停止スイッチが停止状態にある間に、受信機が火災信号を受信したときは、一定時間以内(10分以内)に自動的に地区音響装置を鳴動状態に移行すること
・火災表示中に地区音響停止スイッチを停止した状態のときに、受信機が火災信号を受信した場合は、自動的に鳴動状態に移行すること
11)蓄積時間を調整する装置を設ける場合は受信機の内部に設けること
12)受信機は、電源の電圧が変動した場合、機能に異常を生じないもの
・主電源:定格電圧の90%以上110%以下
・予備電源:定格電圧の85%以上110%以下
13)受信機は、周囲の温度が0度以上40度以下の場合、機能に異常を生じないもの
P型1級受信機
P型1級受信機は、回線数に制限がなく構造、機能について以下の事項が定められています。
(1)構造、機能
1)火災信号を受信したとき、赤色の火災灯および音響装置により地区表示灯により火災の発生した警戒区域を自動的に表示して地区音響装置を自動的に鳴動させる(地区音響停止スイッチが停止状態のときに、火災信号を受信した場合は一定時間内に自動的に地区音響装置を鳴動させる状態に移行すること)。
2) 火災表示は復旧スイッチを操作しない限り保持すること
3)主音響装置の音圧は85dB以上であること
4)火災表示試験装置を設けること
5)受信機と感知器など(終端器)との間の配線の導通試験(断線していない確認)ができること
(2)表示部、操作部(図6)
①火災灯:赤色の表示灯で火災の発生を知らせます。
②地区表示装置(地区表示灯):火災が発生した地区(警戒区域)を表示します。この表示灯のあるプレート(地区窓)に警戒区域の場所名を記載します。
③交流電源灯:主電源が供給されているときに点灯します。予備電源(電池)に切り替わった際には消灯します。
④スイッチ注意灯:各スイッチが定位置にないときに点滅します。
⑤発信機灯:発信機が押されたときに点灯します。
⑥蓄積灯:蓄積中に点灯します。
⑦電話灯:発信機からの電話呼出の際(発信機の電話ジャックに電話器のプラグを挿したとき)に点灯します。このとき電話呼出音も鳴動します。
⑧電話ジャック:発信機からの電話呼出の際に、電話子器を接続することで通話ができます。
⑨主音響装置:火災発生時に鳴動して、火災発生を受信機本体で知らせます。
⑩主音響停止スイッチ:主音響を停止します(受信機本体音響の停止)。
⑪地区音響停止スイッチ:火災発生時に鳴動する地区音響装置の鳴動を停止します。
⑫復旧スイッチ:受信機を火災表示状態から復旧して通常状態に戻します。
⑬回線選択スイッチ:火災表示試験、導通試験を行う際に対象回線を選択します。
⑭火災表示試験スイッチ:模擬的に火災信号を受信した状態にして、受信機が正常に動作するかを確認する試験スイッチです。
⑮導通試験スイッチ:感知器回線が断線していないかを確認するスイッチです(受信機-終端器との間で導通を確認)。
⑯試験復旧スイッチ:感知器の作動試験を行う際に、受信機の保持機能を一定時間で自動的に復旧するスイッチです。感知器ごとに手動で復旧スイッチを操作する手間を省くことができます。
⑰電圧計:電源の電圧を表示して、正常であることを確認します。予備電源に切り替わった際には予備電源の電圧を表示します。
⑱予備電源試験スイッチ:予備電源に切り替え、予備電源が正常かを確認します。
⑲予備電源:停電などの主電源異常の際に自動的に切り替わり一定時間、電源補償します。
以上のなかで「⑫復旧スイッチ」「⑩⑪音響停止スイッチ」は専用とすること。「⑬~⑱試験装置」は受信機前面に設けることと定められています。
文/川野 泰幸