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各類に共通する消防関係法令を学ぼう【消防設備士甲種第4類講座】 第3回
これを押さえて!
2024.07.26
第3回 共通法令②
消防設備士試験での消防関係法令は、「各類に共通の部分」と「第4類に関わる部分」に分かれています。今回は、前回に続き法令の共通部分について解説します。また、後半に、これまでと今回分を合わせた内容についての練習問題を掲載しています。それなりに細かな値を問う問題も出題されますので整理しながら覚えていくようにしてください。
設置単位
(1)設置単位の原則
消防用設備等の設置および維持の技術上の基準の適用については、原則として敷地単位ではなく棟単位です。例えば工場などで同じ敷地のなかに複数の建物があっても、建物(棟)ごとに消防用設備等の設置を判断します。
(2)設置単位の例外
設置単位の原則は棟ごとですが例外として「開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている場合」、「複合用途防火対象物の場合」があります。

★開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている場合
防火対象物が開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている場合は、それぞれ区画ごとに防火対象物とみなします。
例えば、図1のように低層がショッピングセンター、高層がマンションである場合、通常であれば、物品販売店と共同住宅から構成される複合用途防火対象物((16)項イ)ですが、開口部のない耐火構造の床または壁で区画(※1)されている場合は、それぞれ別の防火対象物(例では共同住宅(5)項ロと物品販売店(4)項)として扱うことができます。
※1 開口部のない耐火構造の床または壁で区画:この区画のことを、消防法施行令第8条に規定されていることから一般的に「令8区画」といいます。

★複合用途防火対象物の場合
複合用途防火対象物の場合は、「棟」ごとではなく、それぞれの用途ごとに1つの防火対象物としてみなすことと規定しています(図2)。
ただし、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報器、漏電火災警報器、非常警報設備、避難器具および誘導灯の設備は複合用途防火対象物であっても棟全体を1つの防火対象物として基準を適用することと規定しています。
また、地下街については、複数の用途であっても全体とし、1つの防火対象物として扱います。
無窓階(むそうかい)
消防の独特な用語として無窓階があります。無「窓」階といっても窓がない階ということではなく、避難上、消火活動上有効な開口部(窓等)を有しない階のことをいいます。
有効な階の規定を定めて、それを満足しない階を無窓階といいます。無窓階は避難、消火活動が困難になるので規制が厳しくなります。
(1)普通階と無窓階
以下の要件を満たせば普通階、満たせない場合、無窓階となります(図3)。
【地上10 階以下の階ごとに】
1)隣地境界線から1m以上の空間(空地や道路)があること
2)直径1m以上の円が内接、または幅75cm以上、高さ1.2m以上の開口部が2以上あること
3)直径50cm以上の円が内接する開口部が上記 2)の開口と合わせて床面積の1/30以上あること
【地上11 階以上の階ごとに】
4)直径50cm以上の円が内接する開口部との合計が床面積の1/30以上あること
【開口部の位置】
5)上記の開口部の位置は、床から開口の下端まで1.2 m 以内であること

適用除外
(1)既存防火対象物の適用除外
消防法の改正が行われた場合でも、すでに建っている(既存)防火対象物は、消防法改正前のままとすることができます(適用の除外)。
ただし、次の 1)~3)のものについては適用の除外を受けることができず、消防法改正後の新法令基準に従う必要があります。これを「既存遡及(そきゅう)」といいます。
1)防火対象物の用途に関係なく既存遡及するもの
・比較的簡易な設備(消火器、簡易消火用具、漏電火災警報器、非常警報器具、非常警報設備、避難器具、誘導灯、誘導標識など)
2)防火対象物の用途、設備により既存遡及するもの
・特定防火対象物または令別表第1(17)項(重要文化財等)に設置された自動火災報知設備
・特定防火対象物または温泉の採取施設がある施設に設置されたガス漏れ火災警報設備
3)条件により既存遡及するもの
・特定防火対象物
・非特定防火対象物から特定防火対象物に用途変更したもの
・従前の法令に違反しているもの
・法令改正後に1/2 以上または1000㎡以上の増築、改築したもの
・ 消防法改正施行後に大規模な修繕、あるいは模様替えをしたもの(主要構造部の壁を過半以上工事した場合)
検定制度
検定制度は、消防用機械器具等について、その形状や構造、材質、成分、性能が総務省令で定められた技術上の規格に適合していることを国として確認する制度です。
検定に合格していない消防用機械器具等は販売、陳列、工事に使用できません。
(1)検定対象機械器具等
検定が必要な機械器具は以下のものです。
1)消火器
2)消火器用消火薬剤(二酸化炭素を除く)
3)泡消火薬剤(水溶性液体用のものを除く)
4)自動火災報知設備の感知器、発信機
5)自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備の中継器
6)自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備の受信機
7)住宅用火災警報器
8)閉鎖型のスプリンクラーヘッド
9)流水検知装置
10)一斉開放弁(接続内径が300 mm を超えるものを除く)
11)金属製避難はしご
12)緩降機
(2)検定方法
検定は、「型式承認」と「型式適合検定」の2段階で確認します。
★型式承認
総務省令で定める「技術上の規格」に適合しているかどうかを日本消防検定協会(※2)で確認し、その試験結果をもって総務大臣が型式承認を行います。
※ 2 日本消防検定協会:消防法の規定に基づき設置された試験機関
★型式適合検定
製造されたものが型式承認されたものに適合しているかを日本消防検定協会が検査します。この型式適合検定に合格したものには、検定合格証(図4)を表示できます。

練習問題
例題1 消防設備士の業務について正しいものはどれか。
① 甲種消防設備士は、免状に指定された類の消防用設備等の工事と、すべての類の消防用設備等の整備を行うことができる。
② 消防設備士は、工事の着手時に着工届、工事完了後に設置届を提出しなければならない。
③ 防火対象物の関係者は「所有者」「管理者」「消防設備士」である。
④ 消防用設備等であっても軽微な整備については、消防設備士の資格がなくても行うことができる。
解説
①:整備についても免状に指定された類のものしかできません。よって誤り。
②:設置届は関係者が提出します。よって誤り。
③:関係者は、「所有者」・「管理者」・「占有者」です。よって誤り。
④:軽微な整備(ヒユーズ類、ネジ類等部品の交換等)については、消防設備士資格者以外でも可能です。よってこれが正解です。
答え:④
例題2 消防法に規定する用語について、誤っているものはどれか。
① 防火対象物とは、「山林または舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物または物件」をいう。
② 複合用途防火対象物とは、1つの防火対象物に複数の用途をもつ防火対象物をいう。
③ 特定防火対象物とは、不特定多数の者が出入りする施設など火災の際に、より人命が危険にさらされ火災による危険性の高い対象物のことをいう。
④ 特定一階段等防火対象物とは、地階あるいは3階以上の階に特定用途部分が存在し、屋内階段が1つしか利用できないものをいう。
解説
①は消防対象物の説明です。防火対象物は「山林または舟車、船きょもしくはふ頭に繋けいりゅう留された船舶、建築物その他の工作物もしくはこれらに属する物」です。防火対象物は「…これらに属する物」、消防対象物は「…または物件」と覚えましょう。
答え:①
例題3 特定防火対象物に係る記述で、誤っているものは次のうちどれか。
① 事務所は特定防火対象物ではない。
② 博物館、図書館は特定防火対象物ではない。
③ ホテルは特定防火対象物であるが、寮は特定防火対象物ではない。
④ 小学校、幼稚園は特定防火対象物である。
解説
幼稚園は特定防火対象物ですが、小学校は非特定防火対象物です(連載第2回の表1)。
答え:④
例題4 消防法に規定する消防用設備等について、誤っているものはどれか。
① 自動火災報知設備は警報設備である。
② 誘導灯、避難はしごは避難設備である。
③ 屋内消火栓、防火水槽は消火設備である。
④ 連結送水管は消火活動上必要な施設である。
解説
防火水槽は消防用水です(連載第2回の図2)。
答え:③
例題5 消防用設備等の届出についての記述について、正しいものはどれか。
① 関係者は消防設備の着工日10日前に設置届を消防署へ提出した。
② 乙種消防設備士が工事完了10日後に着工届を消防署へ提出した。
③ 延べ面積が100㎡となる特定一階段等防火対象物で設置届を提出した。
④ 延べ面積が275㎡となる飲食店の設置届を提出した。
解説(連載第2回の表2を参照)
③ :特定一階段等防火対象物については面積に関係なく設置届が必要です。よってこれが正解です。
① :設置届は、関係者が設置完了後4日以内に提出します。よって誤り。
② :着工届は、甲種消防設備士が工事を着手しようとする10 日前までに提出します。よって誤り。
④ :設置届は消防検査を受けるために提出するものです。飲食店(特定防火対象物)は、300㎡以上で設置届が必要です。例題は300 ㎡以下のため設置届の提出は不要です。よって誤り。
答え:③
例題6 消防用設備等の点検結果の報告期間として、正しいものはどれか。
① 幼稚園:6か月に1回
② 小学校:6か月に1回
③ 映画館:1年に1回
④ 共同住宅:1年に1回
解説
③ :映画館は(1)項イの特定防火対象物です。よって1年に1回の報告期間で正解です。
① 、②:6か月は機器点検を実施する期間です。よって誤り。
④ :共同住宅は非特定防火対象物なので3年に1回の報告が必要です。よって誤り。
答え:③
例題7 防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、次のうちどれか。
① 収容人員が20 人の飲食店
② 収容人員が20 人のグループホーム
③ 収容人員が40 人のマンション
④ 延長50 m のアーケード
解説
②:グループホームは(6)項ロなので10 人以上で防火管理者の選任が必要です。よってこれが正解です。
① :飲食店は特定防火対象物((6)項ロ以外)なので収容人員30 人以上で防火管理者の選任が必要です。よって誤り。
③ :マンションは非特定防火対象物なので収容人員50 人以上で防火管理者の選任が必要です。よって誤り。
④ :アーケード、準地下街、山林、舟車は、収容人員、面積等にかかわらず防火管理者の選任は不要です。よって誤り。
答え:②
例題8 法改正が行われた場合の既存防火対象物の消防用機器等の扱いについて、誤っているものはどれか。
① 1/2 以上を改築した場合は、現行の基準が適用される。
② 床面積1000 ㎡ 以上の工場には、現行の基準が適用される。
③ 消火器にあっては、既存防火対象物であっても現行の基準が適用される。
④ 倉庫を飲食店に用途変更した場合は、現行の基準が適用される。
解説
② :工場は非特定防火対象物なので、面積にかかわらず既存遡及は不要です。よって、これが誤りです。
① :法令改正後に1/2以上または1 000㎡以上の増築、改築したものは既存遡及が必要です。
③ :消火器、漏電火災警報器などの比較的簡易な設備については用途に関係なく既存遡及が必要です。
④ :倉庫から飲食店への用途変更は、非特定防火対象物から特定防火対象物に用途変更なので既存遡及が必要です。
答え:②
例題9 消防用機械器具等の検定に関する記述で誤っているものはどれか。
① 漏電火災警報器は検定対象機械器具等に含まれる。
② 非常警報設備は検定対象機械器具等に含まれない。
③ 検定に合格していない機械器具等は販売してはならない。
④ 型式承認をされないと型式適合検定を受けることができない。
解説
①:漏電火災警報器については、以前は検定対象でしたが平成26 年に検定から自主表示に移行しました。現在では、検定対象外です。よって、これが誤りなので正解です。
②:非常警報設備は検定対象外です。
③:検定合格しいない機器は販売だけでなく陳列、工事も行うことはできません。
④ :検定は型式承認と型式適合検定はセットです。型式承認された機器が型式通りのものか確認するのが型式適合検定です。
答え:①
文/川野 泰幸