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発信機、表示灯、地区音響装置の設置基準を理解する【消防設備士甲種第4類講座】第11回
これを押さえて!
2025.12.19
第11回
自動火災報知設備の設置(3)
前回に続き、自動火災報知設備の設置基準について解説します。今回は「発信機」「表示灯」「地区音響装置」の設置要件に加え、設備の「電源」についても触れていきます。
発信機の設置
(1)受信機との接続
発信機は火災信号を手動で発信するものです。
主な発信機にはP型1級、P型2級があります(厳密には、P型1級、2級以外にT型発信機があります。しかし、T型は使用例が少ないことと、試験への出題実績が少ないことから説明を省略します)。この2種類の発信機は、それぞれ接続できる受信機が定められています(表1)。P型1級受信機、GP型1級受信機、R型受信機およびGR型受信機に接続するものはP型1級発信機、P型2級受信機およびGP型2級受信機に接続するものはP型2級発信機です。
P型2級1回線受信機およびP型3級受信機は、警戒範囲が狭いことから発信機の設置は不要です。
(2)発信機の設置
発信機の設置基準を以下に示します。
①発信機は階ごとに、その階の各部分から発信機までの歩行距離が50m以下となるように設置します(図1)。
②発信機の設置高さは受信機の押しボタンが床上0.8m以上1.5m以下の位置に入るように設置します(図2)。
③発信機の直近に表示灯を設置します。



表示灯の設置
表示灯は発信機の位置を示すために発信機の直近に設置します。以下に設置基準を示します。
①表示灯は赤色の灯火とし、取り付け面と15度以上の角度に沿って10m離れた位置から点灯していることが容易に識別できるように設置します(図3)。
②表示灯を屋内消火栓の表示灯と兼用する場合は消火栓ポンプが起動したときに点滅すること。この場合、発信機、消火栓が近傍に設置され、表示灯へは消火栓の起動装置から配線します(詳細は製図編で解説します)。

地区音響装置の設置
地区音響装置は、感知器または発信機の作動と連動して防火対策物の全域に警報ができるように設置します。
ただし、P型2級受信機1回線、GP型2級受信機1回線、P型3級受信機、GP型3級受信機には、地区音響装置の接続ができなくてもよいこととされています(在館者への警報は主音響装置が兼ねます)。
(1)地区音響装置の音圧
音圧は取り付けられた音響装置の中心から1m離れた位置で90dB以上必要です。なお、音声を発するものにあっては92dB以上の音圧が必要です(図4)。
(2)地区音響装置の設置
地区音響装置は階ごとに、その階の各部分から1つの地区音響装置までの水平距離が25m以下となるように設置します(図5)。
(3)地区音響装置の鳴動範囲
地区音響装置の鳴動方式には防火対象物の階高、規模により建物全館を一斉に鳴動する「一斉鳴動方式」と、火災が発生した階付近を先行して鳴動する「区分鳴動方式」があります。
(4)一斉鳴動方式
地区音響装置を感知器または発信機の作動と連動して全区域に対し、一斉に鳴動させる基本的な鳴動方式です。
(5)区分鳴動方式
大規模な建物での火災発生時にパニック状態にならないように考えられた方式です。火災時に危険な階を優先して鳴動させます。対象となる大規模な建物は地階を除く階数が5以上、かつ延べ面積が3000m2を超える防火対象物です。
火災発生時の鳴動範囲は以下のとおりです(図6)。
・出火階が2階以上の階の場合:出火階+直上階(出火階のすぐ上の階)
・出火階が1階、地下1階の場合:出火階+直上階+地階すべて
・出火階が地下2階以下の場合:地階すべて
その後、以下の場合に全館鳴動に移行することが定められています。
①一定の時間が経過した場合
「一定の時間が経過」とは、防火対象物の用途、規模ならびに火災確認に要する時間、出火階および直上階などからの避難が完了すると想定される時間などを考慮し、おおむね数分から10分以内と定められています。
②新たな火災信号を受信した場合
「新たな火災信号」とは、以下のいずれかによるものです。
・発信機からの信号
・他の警戒区域からの火災信号
・他の感知器からの火災信号(R型など、感知器の区別ができるものに限る)
・その他、消火装置などからの火災の発生を確認した旨の信号
(6)2台以上の受信機が設けられている場合
一の防火対象物が2台以上の受信機が設けられている場合、地区音響装置はいずれの受信機からも鳴動させられるようにしなければなりません。
(7)地区音響装置の設置免除
防火対象物またはその部分に非常放送設備が設置され、かつ感知器または発信機などと連動して作動する場合は、この放送設備を地区音響装置に代えることができるとされています。この場合は地区音響装置の設置は不要です。



電源
自動火災報知設備の電源には「常用電源」「非常電源」「予備電源」の3種類があります。
(1)常用電源
常用電源は通常時に設備を稼働させるための電源です(商用電源のこと。多くはAC100V)。常用電源の取り方は以下のように定められています(図7)。
①常用電源は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐せずに取ること。
②電源の開閉器は専用とし、自動火災報知設備用のものである旨を表示すること。

(2)非常電源
非常電源は常用電源が停止したときに電力を供給します。消防用設備の非常電源としては「非常電源専用受電設備」「自家発電設備」「蓄電池設備」「燃料電池設備」があります。このなかで自動火災報知設備の非常電源として使用できるのは「非常電源専用受電設備」と「蓄電池設備」だけです。さらに、自動火災報知設備の非常電源は以下のように定められています(表2)。
①延べ面積1000m2以上の特定防火対象物に設置する自動火災報知設備の非常電源は「蓄電池設備」とすること。
②その他の防火対象物に設置する自動火災報知設備の非常電源は「蓄電池設備」または「非常電源専用受電設備」とすること。
③自動火災報知設備にあっては「予備電源」の容量が基準に定める非常電源の容量以上である場合は非常電源を省略できること。
(3)予備電源
受信機、中継器などに内蔵される停電対策用の蓄電池です。自動火災報知設備にあっては「予備電源」の容量が基準に定める非常電源の容量以上である場合は非常電源を省略できると定められています。
自動火災報知設備では、予備電源の容量が非常電源で必要とされる基準以上である場合がほとんどなので、非常電源は省略できることが一般的です。

練習問題
例題1 P型1級発信機の設置として誤っているものはどれか。
①床面から1.2mの位置に設置した。
②R型受信機に接続した。
③階ごとに、その階の各部分から水平距離が50m以下となるように設置した。
④発信機の表示灯を消火栓の位置表示灯と兼用した。
解説
①:発信機の押しボタンは床面0.8~1.5mの範囲で設置します。よって、正しい。
②:P型1級発信機はP型1級、GP型1級、R型、GR型に接続します。よって、正しい。
③:発信機の設置は水平距離ではなく、歩行距離です。よって、これが誤りです。
④:表示灯は消火栓の位置表示灯と兼用できます。よって、正しい。ただし、そのときは消火栓ポンプが起動したときに点滅する必要があります。
したがって、③が誤りです。
答え:③
例題2 地下2階、地上6階建て、延べ面積4000m2の防火対処物において、地区音響装置の出火階と区分鳴動として警報を発する階の組み合わせが正しいものはどれか。
①出火階:4階 警報鳴動階:4階、5階
②出火階:1階 警報鳴動階:1階、2階 地下1階
③出火階:地下1階 警報鳴動階:1階、地下1階、地下2階
④出火階:地下2階 警報鳴動階:地下1階、地下2階
解説
出火階と警報鳴動階の関係は以下のとおりです。

したがって、②が誤りです。
答え:②
例題3 自動火災報知設備の地区音響装置について誤っているものはどれか。
①階ごとに、その階の各部分から水平距離が25m以下となるように設置する。
②音響による地区音響装置の音圧は取り付けられた音響装置の中心から1m離れた位置で90dB以上である。
③非常放送設備を感知器または発信機などと連動して作動するように設置した場合は地区音響装置の設置を省略できる。
④一の防火対象物に2台以上の受信機を設置した場合、地区音響装置は、いずれかの受信機から鳴動させられるようにする。
解説
一の防火対象物に2台以上の受信機を設置する場合は、地区音響装置はいずれかではなく、いずれの受信機からも鳴動させられるようにする必要があります。
したがって、④が誤りです。
答え:④
例題4 自動火災報知設備の電源について誤っているものはどれか。
①電源の開閉器に自動火災報知設備用である旨を表示した。
②予備電源の容量が、基準に定める非常電源の容量以上であったので非常電源を省略した。
③電源を交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずに取った。
④延べ面積が1000m2以上の特定防火対象物の非常電源として非常電源専用受電設備とした。
解説
①:電源の開閉器は専用とし、自動火災報知設備用のものである旨を表示する必要があります。よって、正しい。
②:自動火災報知設備にあっては「予備電源」の容量が基準に定める非常電源の容量以上である場合は、非常電源を省略することができます。よって、正しい。
③:電源は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐せずに取る必要があります。よって、正しい。
④:延べ面積1000 m2以上の特定防火対象物に設置できる自動火災報知設備の非常電源は蓄電池設備だけです。よって、これが誤りです。
その他の防火対象物では「蓄電池設備」または「非常電源専用受電設備」が使用できます。
したがって、④が正解です。
答え:④
文/川野 泰幸
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