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「短絡」と「地絡」、何が違うの?【現場のギモン、超解決塾】其ノ二
2026.10.14
其ノ二
「短絡」と「地絡」
「人間は考える葦である」とパスカルは言い、「大切なのは、問うのをやめないことだ」とアインシュタインは語り、「問うことを好めば即ち裕」と孔子は論語に著している。
ギモンを持つことは必要不可欠なことであり、すなわち、人間の権利でもあるのだ。
わからない。だから、知りたい。この単純明快な思考の展開に対して、さまざまなアンサーを用意して塾生の「ギモン」を待っているのが超解決塾だ。
電気の現場で仕事をこなす技術者が抱く「?」を基礎から徹底的に解説していく。今回は、現場で頻繁に登場する「短絡」と「地絡」について考えてみる。
電気の流れ
(1)電路とは?
発電所で発電された電気は、送電線や変電所、配電線などを経由して需要場所に送られ、最終的には電動機を回転させたり、照明器具を点灯させたりします。
このように電気は発電所から負荷まで送られ、この電気の通り道を電路といいます。
電気設備に関する技術基準を定める省令(以下、電技)第1条第1項第1号では電路を以下のように定義しています。
「電路とは、通常の使用状態で電気が通じているところ」
つまり、正常な状態では、電気は電路を流れることになります。電路は電線やケーブルの導体、変圧器や電動機の巻線などです。この電路以外に電気が流れるときは異常状態であり、絶対に避けなければなりません。そのためには電路を常に絶縁しておく必要があります。
なお、電技第5条では絶縁について以下のように定めています。
「電路は、大地から絶縁しなければならない」
写真1は高圧母線をがいしで支持して、母線と大地間を空気で絶縁しています。
また、写真2は変圧器の内部で、絶縁油で満たされ、これにより巻線を絶縁しています。
このように、すべての電路は絶縁され、この絶縁を常に適正な状態に維持するのが絶縁管理であり、電気技術者にとって最も重要な仕事です。万一、絶縁が不良になり、電気が電路以外に流れることを短絡、または地絡といいます。この短絡と地絡の違いは、電気が流れる経路の違いです。


(2)短絡
図1のように、短絡は電路同士が負荷を通さずに接触した状態を指します。例えば、電線の被覆が破れた状態で接触してしまう、あるいは開閉器の動作時に発生したアークで充電部同士がつながってしまうなどの現象です。
短絡は、電路が低インピーダンスで接触するので、極めて大きな電流が流れ、すぐに遮断しないと大事故につながります。
写真3は高圧気中開閉器(PAS)が内部で短絡した事例です。完全に破壊され、そのエネルギーの大きさがわかると思います。


(3)地絡
地絡も短絡と同様に電路以外に電気が流れる現象ですが、電路間ではなく、図2のように大地と接触した状態を指します。
地絡は、電線に樹木やクレーンのアームなどが接触したり、がいしにヒビが入ったりして起こります。
接地方式で異なりますが、一般に地絡電流は短絡電流より小さくなります。しかし、地絡状態の電気機器の表面は充電状態なので、接触すると感電事故につながります。また、可燃物が存在した場合、地絡電流による発熱で発火するおそれがあって危険です。
写真4は高圧CVケーブルが絶縁破壊して地絡した事例です。短絡と比べて損傷は小さいですが、停電が発生するため復旧には多くの時間と費用がかかります。


保護装置
(1)短絡保護
電気設備で短絡事故が発生すると、電源側から事故点に向かって短絡電流が流れ込みます。
電力系統は、図3のように何段階かの保護区分があり、それぞれの区分点に遮断器(CB)が設置されています。この遮断器の動作時間を負荷側から電源側に向かって順次長く整定しておくと、事故点を最小範囲で除去できます。これを段階時限による選択遮断方式といいます。
例えば、事故点Fで短絡事故が発生した場合、CB1~CB3に事故電流Is[A]が流れます。遮断器CB1~CB3の動作時間をCB1>CB2>CB3のように設定しておけばCB3のみが動作し、CB1とCB2は動作せず、健全回路への送電は継続されます。

①遮断器による短絡保護
短絡事故では数千から数万Aという大電流が流れるので、それを遮断しようとして開閉器を開放したとしても、電極間にはアーク放電が発生して、遮断できないばかりか、開閉器自体が損傷してしまいます。
このような大電流を遮断できるのが遮断器であり、変流器(CT)や過電流継電器(OCR)と組み合わせて使用します。高圧受電設備で一般的に使用されている電流引き外し方式の回路例を図4に示します。
この方式ではOCRがCTを介して短絡電流を検出して動作すると、OCRのb接点が開き、CTの二次電流が遮断器の引き外しコイルに流れて遮断器が動作します。なお、現在使用されている遮断器は、ほとんどが真空遮断器(写真5)です。


②電力ヒューズ(PF)による短絡保護
最大300kV・Aまでの設備であれば、PF・S方式による短絡保護が可能になります。
PF・S方式は負荷開閉器(LBS)と電力ヒューズ(PF)を組み合わせて使用するもので、CB方式と比較して大幅なコストダウンが図れます。
写真6はPF・S方式である限流ヒューズ付負荷開閉器です。限流ヒューズとは電力ヒューズの一種でアーク電圧を高めることによって短絡電流を限流抑制し、遮断を行う方式のヒューズです。短絡電流が最大値になる前に回路を遮断するため、遮断時間が短く、回路や機器に及ぼす影響が少ないという特徴があります。ただし、ヒューズなので遮断器と異なり、再使用はできません。

(2)地絡保護
①地絡継電器(GR)による地絡保護
GR方式は地絡電流を零相変流器(ZCT)と地絡継電器(GR)の組み合わせで検出し、遮断器や開閉器を開放させる方式です。
電源側(受電設備の外部)で地絡事故が発生すると、地絡電流の一部が構内の対地静電容量から流入し、ZCTを通って外部に流出します。このため構内の対地静電容量が大きく、GRの整定感度以上の地絡電流が流入すると、GRが不必要動作(もらい動作)を起こします。
したがって、この方式は受電設備の対地静電容量が小さい(構内の高圧電力ケーブル長が短い)場合に採用します。
地絡継電器を使用した回路は図5のような構成になります。

②地絡方向継電器(DGR)による地絡保護
構内の対地静電容量による充電電流が大きくなると、GR方式では電源側の地絡事故でもらい動作をする場合があるため、地絡電流の方向を検出できる方式が必要となります。
そのため、零相電流をZCTで検出するほかに、零相電圧をコンデンサ形の零相計器用変圧器(ZVT)で検出し、両者の位相を比較して零相電流の方向を確認します。この方式であれば、構内の地絡事故のみを確実に検出することができます。
地絡方向継電器を使用した回路は図6のような構成になります。

短絡の種類
(1)3線短絡
3線短絡は、図7のように3相とも接触する現象です。この場合、電流や電圧が平衡しているので各相とも大きさは等しくなり、短絡電流は単相回路の計算で求められます。
短絡電流の大きさI3s[A]を求める式は次のようになります。
I3s=|
|=|
|=|
|=

(2)2線短絡
2線短絡は、図8のように三相回路の2相が接触する現象です。この場合は不平衡回路になるので、短絡電流
ただし、
高圧系統では線路や変圧器などのインピーダンスの占める割合が大きく、
|
となります。
したがって、2線短絡電流と3線短絡電流の比率は、
となります。
なお、対称座標法を使用しない場合は次の計算でも求められます。
図8の回路でb相とc相の閉ループを考えます。電源はEbとEcなので線間電圧V[V]、インピーダンスはZbとZcの直列なので2Z[Ω]となります。
したがって、短絡電流I2s[A]は、
となり、対称座標法の値と同じになります。

地絡の種類
地絡の場合、すべて不平衡回路になるので、正確には対称座標法を使用して計算する必要がありますが、計算が複雑になるため定性的に解説します。
(1)1線地絡
①直接接地の場合
・a相の対地電圧は小さく、事故点ではゼロになる。
・中性点の電圧がゼロ(直接接地)なのでb相、c相の対地電圧はほとんど変化しない。
・
②高抵抗接地の場合
・a相の対地電圧は小さく、事故点ではゼロになる。
・b相、c相の対地電圧は事故前の√3倍程度に上昇する。
・

(2)2線地絡
①直接接地の場合
・a相の対地電圧はほぼ変化せず、b相、c相の対地電圧は小さくなる(事故点ではゼロ)。
・
・
②高抵抗接地の場合
・a相の対地電圧は事故前の1.5倍程度に上昇。b相、c相の対地電圧は小さくなる(事故点ではゼロ)。
・
・

高圧受電設備の1線地絡事故
(1)地絡電流の流れ
高圧配電系統は非接地のため、自家用構内で1線地絡が発生した場合、地絡電流Igは図11のように対地静電容量と接地形計器用変圧器(EVT)に流れます。
ただし、Rgは地絡点の地絡抵抗、C1は配電線の1線あたりの静電容量、C2は高圧受電設備の1線あたりの静電容量、RnはEVTの三次巻線の制限抵抗を等価中性点抵抗に換算したものです。

(2)地絡電流の大きさ
地絡電流
線間電圧をVとすると、地絡前の対地電圧は
地絡電流
となります。地絡抵抗Rgがゼロの場合は、
したがって、
|
なお、ZCTに流れる電流
|
と求めることができます。
ここで、上記の式を使って実際に地絡電流IgとZCTに流れる電流IZCTを求めてみましょう。

例題
三相3線6.6kV、50Hzで受電している自家用構内で1線地絡事故が発生した。地絡電流およびZCTに流れる電流を求めよ。
ただし、構内の1線あたりの対地静電容量は0.1µF、配電線路の1線あたりの対地静電容量は3µF、EVTの等価中性点抵抗は10000Ω、接地抵抗は0Ωとして、これ以外の線路定数は無視する。
解答
解説で導いた2つの式にV=6600[V]、Rn=10000[Ω]、ω=2π×50[rad/s]、C1=3×10-6[F]、C2=0.1×10-6[F]を代入して求めます。
①地絡電流Ig
②ZCTに流れる電流IZCT
塾長/田沼 和夫
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