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安全管理のキーワードを詳細解説!【技術士のHOTワードWeb 第25回】
「総合技術監理部門」の合格につながる
2026.10.30
第25回
安全教育、訓練、事故対応訓練、防災訓練、ブラインド型訓練
技術士における21の技術部門のなかで、一線を画すカテゴリーである総合技術監理部門。時々刻々と変化する最新テクノロジーの知識を吸収する専門性だけでなく、さまざまな分野を総合的に判断できるマネジメント能力も求められる。まさに、スキルアップのために取得する部門だ。
本連載は、総合技術監理部門の試験に必要な「キーワード集」(文部科学省が公表)のなかから、HOTなキーワードを徹底解説するものである。今回は、安全管理分野から5つのキーワードを取り上げる。
(1)安全教育
安全管理における安全教育は労働災害を未然に防ぎ、従業員の命と健康を守るための最も重要な基盤である。どれほど強固な安全設備を導入しても、それを扱う「人」に安全意識や正しい知識が欠けていれば、重大な事故は防ぎきれない。ここでは安全教育の目的、法的根拠、効果的な実施手法について解説する。
なお、キーワード「安全教育」は5.4節「事故・災害の未然防止対応活動・技術」に収められている。
①安全教育の目的
安全教育のゴールは、ただ「ルールを覚えさせること」ではなく、不安全行動(危険を招く誤った行動)を排除し、自発的に安全を最優先する組織風土(安全文化)を醸成することにある。
安全教育の主たる目的を表1に示す。

②労働安全衛生法に基づく4つの安全教育
日本の労働安全衛生法では、事業者が実施すべき安全教育が明確に規定されている。主に表2に示す4つに分類される。

③効果的な安全教育の手法
座学で教科書を読み上げるだけの教育は形骸化しやすく、効果が薄い。現場の生きた知識にするためには、表3に示す実践的なアプローチが必要である。

2025年8月に埼玉県内の下水道マンホールで起きた硫化水素による落下事故(死者は4名)、2026年4月に製鉄所敷地内で起きた大型岸壁クレーン解体作業中の落下事故(死者は4名)、2026年8月に発生した鉄道線路内で除草作業中の作業者が特急列車にはねられた事故(死者4名)など、防げたはずの事故ではないかと筆者は考える。
「安全第一」がかけ声だけに終わっていないか?
安全より経済性(収支など)を優先していないか?
作業現場における、急増する高齢者と外国にルーツを持つ作業者への配慮は十分か?
安全意識および安全対策が経営者から下請けを含む最前線の作業者まで浸透、徹底しているか?
これらを深く反省し、事故ゼロを目指してほしい。
安全教育は「一度やれば終わり」のイベントではない。人間の記憶や意識は時間の経過とともに風化するため、定期的な反復教育(再教育)と、現場での継続的な声がけ、パトロールをセットで行うことが事故ゼロを達成するための唯一の道である。
(2)訓練
キーワード「訓練」は5.4節「事故・災害の未然防止対応活動・技術」に収められている大項目である。「安全教育」で学んだ知識をベースに、実践的な行動力を養うことが主たる目的となる。
以下に、安全管理における訓練の重要性、主な種類および効果的に実施するためのポイントを解説する。
①訓練の重要性と目的
安全管理における訓練の目的は大きく分けて表4に示す3点に集約される。

②安全管理訓練の主な種類
キーワード集の安全管理では、労働安全衛生管理(5.3節)に加えて火災、爆発等の事故や地震等の災害に対応する「訓練」として「事故対応訓練」「防災訓練」「ブラインド型訓練」がキーワードとして取り上げられている。
安全管理訓練は「一度やれば終わり」というものではない。人の記憶の風化や、組織の環境変化(メンバーの入れ替えや設備の更新)に合わせ、反復継続して行うことに真の価値がある。
「訓練でできないことは本番(有事)では絶対にできない」という認識を組織全体で共有し、実効性の高い訓練を重ねることが強固な安全文化の醸成へとつながる。
(3)事故対応訓練
安全管理における「事故対応訓練」は労働災害や設備事故、化学物質の漏えいなどが実際に発生した直後の「初期対応」に特化した訓練であり、キーワード「訓練」の中項目である。
いくら事前の予防策を講じても、事故のリスクを完全にゼロにすることはできない。そのため、発生時の被害を最小限に抑える(ダメージコントロール)ための実践的なスキルを養うことが主たる目的となる。
以下に、事故対応訓練の目的、具体的な訓練内容、実施時の留意点を解説する。
①事故対応訓練の目的
事故発生時の現場は極度の緊迫感とパニックに包まれる。そのなかで表5に示す3つの行動を「迅速かつ正確に」行える状態をつくることが目的である。

②具体的な訓練内容
事故対応訓練は役割や想定する事故の規模に応じて、いくつかの手法を組み合わせて実施する。表6に工場等の事故対応訓練の、表7にサイバー攻撃対応訓練の手法例を示す。


③事故対応訓練の留意点
訓練における失敗(連絡が遅れた、対応手順を間違えたなど)は使用中のマニュアルや体制の弱点をみつける貴重なデータである。訓練後の反省会では、個人のミスを責めるのではなく、「なぜ、そのミスが起きたのか、システム(仕組み)のどこを改善すべきか」を議論し、マニュアルを改善することが不可欠である。
事故対応訓練の本質は「平時(日常)の安心」を意図的に破り、「有事(異常時)の緊張感」を疑似的につくり出すことにある。「マニュアルを読んだことがある」という状態と、「実際に動いてみたことがある」という状態の間には、天と地ほどの開きがある。定期的な反復訓練を通じて、組織の「いざというときの回復力(レジリエンス)」を高め続けることが安全管理の現場には求められる。
(4)防災訓練
安全管理における「防災訓練」は地震、津波、台風、水害などの自然災害、それらに起因する大規模な火災などの「広域かつ予測不可能な事態」を想定した訓練であり、キーワード「訓練」の中項目である。
日常的な労働災害(産業事故)を対象とする「事故対応訓練」が個人のケガや局所的な設備トラブルを扱うのに対し、防災訓練は「組織全体、インフラ(電気、通信等)の途絶、地域社会との連携」まで視野に入れた、より大規模な備えを目的とする。
以下に、防災訓練の目的、主な訓練内容、実効性を高めるポイントを解説する。
①防災訓練の目的
防災訓練の目的は表8に示す災害発生時の「生命の安全確保(初動)」から「組織の生き残り(事業継続)」への移行をスムーズに行うことにある。

②主な訓練内容
防災訓練は表9に示す災害の推移(タイムライン)に応じた段階に沿って実施される。

③実効性を高めるポイント
防災訓練の本質は「想定外」を減らし、「想定内」の対応力を広げることにある。自然災害は人間の都合に関係なく、最悪の時間帯、最悪の条件で襲ってくることがある。定期的な防災訓練を通じて、マニュアルに書かれた内容を「組織の生きた行動力」へと変換し続けることが災害への最大の防御となる。
④防災訓練にかかわる過去問題
防災訓練のタイムラインに関連する過去問題の選択肢の一部を表10に示す。

(5)ブラインド型訓練
ブラインド型訓練(状況付与型訓練とも呼ぶ)とは、災害や事故などの緊急事態を想定した安全管理訓練において、参加者に具体的な発生日時やシナリオ(トラブルの内容、被害状況など)を事前に明かさずに行う訓練手法であり、キーワード「訓練」の中項目である。
従来のシナリオ提示型訓練とは異なり、実戦に近い臨場感と緊張感のなかで、組織の「真の対応力」を検証することを目的としている。
①従来の訓練(シナリオ提示型)との違い
一般的な訓練は、いつ、どこで、何が起きるかが全参加者に共有された「筋書きどおり」の進行となる。これに対し、ブラインド型訓練では情報が極限まで制限される。シナリオ提示型訓練とブラインド型訓練の相違点を表11に示す。

②ブラインド型訓練の主なメリット
ブラインド型訓練の主なメリットを表12に示す。

③実施における留意点と進め方
ブラインド型訓練は効果が高い反面、「何もできずに終わる」といった失敗を招くリスクがある。そのため、表13に示す点に留意する必要がある。

④ブラインド型訓練に関連する過去問題
ブラインド型訓練に関連する過去問題を表14に示す。

今回は5.4節「事故・災害の未然防止対応活動・技術」から5つのキーワードを取り上げた。
2025年、日本の労働災害における休業4日以上の死傷者数は13万5333人(前年比385人減)、そのうち死亡者数は700人(前年比46人減)と、5年ぶりに減少へと転じた。最も深刻な課題は労働者の高齢化に伴う労働災害の増加である。2025年のデータでは60歳以上の死傷者数が4万2318人に達し、過去最多を更新した。死傷者全体の31.3%(約3割)、死亡者に至っては全体の42.7%(約4割)を高齢者が占めている。
また、日本における自然災害の動向は気候変動の影響による「気象災害の激甚化、頻発化」と、周期的に発生する「大規模地震への警戒、対応」の2つの軸で大きく変化している。
例えば、線状降水帯の発生に関連する「記録的短時間大雨情報」の発表回数は2025年に163回と過去最多を記録した。
このように、日本の災害動向は「過去の統計や経験則が通用しにくくなっている」のが最大の特徴で、行政によるインフラ整備(公助)だけでなく、ハザードマップの確認や備蓄、職域および地域での「事故対応訓練」「防災訓練」といった「自助、共助」のアップデートが、これまで以上に重要視されている。
[参考]
「マンガ・イラスト・図解でまるっとわかる! 防災・被災ハンドブック[増補改訂版]」
天野 勢津子著、矢守 克也総監、株式会社イースト・プレス、2024年
「防災士20年の歩み 羅針盤なき航路を進めた一意専心の足跡」
日本防災士機構編、特定非営利活動法人 日本防災士機構、2023年
文/南野 猛(技術士:情報工学、総合技術監理)
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