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人的資源管理のキーワードを詳細解説!【技術士のHOTワードWeb 第24回】
「総合技術監理部門」の合格につながる
2026.08.26
第24回
専門職制度、ジョブ型とメンバーシップ型、役職定年制、年金制度
技術士における21の技術部門のなかで、一線を画すカテゴリーである総合技術監理部門。時々刻々と変化する最新テクノロジーの知識を吸収する専門性だけでなく、さまざまな分野を総合的に判断できるマネジメント能力も求められる。まさに、スキルアップのために取得する部門だ。
本連載は、総合技術監理部門の試験に必要な「キーワード集」(文部科学省が公表)のなかから、HOTなキーワードを徹底解説するものである。今回は、人的資源管理分野から5つのキーワードを取り上げる。
(1)専門職制度
人的資源管理(HRM:Human Resource Management)における専門職制度は、管理職(マネジメント職)とは別に特定の専門分野における高度な知識やスキル、経験を持つ従業員を正当に評価し、処遇するための人事制度である。従来の日本企業に多くみられた「管理職にならなければ昇進、昇給できない」という単一のキャリアパス(複線型人事制度の対義語)を見直し、専門性を追求するプロフェッショナルが意欲を持って働き続けられる環境を整えることを目的としている。
①専門職制度が導入される主な背景
専門職制度の必要性が高まっている背景には、表1に示すビジネス環境の変化と労働者の価値観の多様化がある。

②管理職制度との違い
専門職制度は管理職制度と並ぶ「複線型人事制度」の一翼を担う。両者の本質的な違いは表2のとおりである。

③専門職制度のメリットとデメリット
制度を機能させるためには本制度とのメリットとデメリットの両面を理解する必要がある。表3にメリットとデメリット、課題をまとめる。

④専門職制度を成功させるためのキーポイント
専門職制度を形骸化させず、有効に機能させるためには、表4に示す運用設計が不可欠である。ここで、専門職制度に関連する過去問を表5に示す。


(2)ジョブ型(職務主義)とメンバーシップ型(属人主義)
この2つは初発の総合技術監理キーワード集2019から、大項目「雇用管理」の別々の中項目キーワードとして収められている。日本における人的資源管理(HRM)の議論において「ジョブ型」と「メンバーシップ型」は、雇用契約や組織と個人の関係性を分類する重要な2大コンセプトである。
日本では古くから定着してきた「メンバーシップ型」に対し、近年は欧米型の「ジョブ型」へ移行、あるいは両者を組み合わせたハイブリッド型を模索する企業が増えている。それぞれの特徴、メリットとデメリットを以下に解説する。
①2つの雇用モデルの根本的な違い
最大の違いは「仕事に人を割り当てる(ジョブ型)」か、「人に仕事を割り当てる(メンバーシップ型)」かという点にある。表6に相違点をまとめる。

②ジョブ型(欧米で一般的な雇用モデル)
ジョブ型は、あらかじめ職務の内容、責任範囲、必要なスキル、勤務地などを「ジョブ記述書」として明確に定義し、その枠のなかで契約を結ぶモデルである。表7にジョブ型のメリットとデメリットをまとめる。

③メンバーシップ型(日本伝統の雇用慣行)
メンバーシップ型は主に戦後の日本企業で発展した「終身雇用」や「年功序列」を前提としたモデルである。表8にメンバーシップ型のメリットとデメリットをまとめる。

④近年の動向はジョブ型
日本のビジネス環境においてジョブ型への関心が高まっている背景には表9の3点が存在している。
ただし、日本の法的な解雇規制や新卒採用の文化を考慮すると、完全なジョブ型への移行は容易ではない。そのため現在の多くの日本企業では「管理職層や専門職から部分的にジョブ型を導入する」「メンバーシップ型をベースにしつつ、評価や報酬にジョブ型の要素を組み込む(ハイブリッド型)」といったアプローチが現実的な解として選択されている。
表10にジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用についての過去問を示す。


(3)役職定年制
企業において一定の年齢に達した従業員を管理職などの役職から退かせる人事制度である。一般には55歳前後で適用されるケースが多く、役職を免じられたあとは専門職や一般従業員、あるいは顧問などの立場で同じ企業に属する。
①役職定年制のメリットとデメリット
役職定年制のメリットとデメリット、課題について表11に示す。

②近年の動向
高齢者雇用安定法の改正に伴い、企業には70歳までの就業機会確保が努力義務化されている。これを受け、ベテラン従業員の戦力化は、これまで以上に重要視されている。
従来のような一律の年齢での役職免除は見直されつつあり、個人の能力や業績評価に基づいて役職継続の可否を判断する「選択制」を導入する企業や、制度自体を廃止してシニア層の処遇改善を図る企業も増加傾向にある。組織の若返りと、ベテランのモチベーション維持を、いかに両立させるかが現代の人事戦略における重要なテーマとなっている。
(4)年金制度
人事管理(HRM)において、年金制度は従業員の「リテンション(人財の維持)」や「ウェルビーイング(福利厚生)」を支える極めて重要な報酬戦略の一部である。HRMの視点から年金制度をとらえる場合、主に以下の3つの役割と現代のトレンドを理解する必要がある。
①HRMにおける年金制度の3つの主要な役割
(A)リテンション(Retention:人材の維持、定着)と採用競争力の向上
充実した企業年金制度(退職金、退職年金)を導入することは、求職者に対する強力なアピールとなり、優秀な人材の確保につながる。また、在籍年数や貢献度に応じて年金額が変動する設計にすることで、中長期的な定着を促す効果がある。
(B)モチベーション(Motivation:動機づけ)とエンゲージメント(Engagement:組織への愛着、絆)の向上
将来の生活設計に対する不安を和らげることで、従業員が安心して目の前の業務に集中できる環境を整える。これは心理的な安全性をもたらし、組織へのエンゲージメントを高める要因となる。
(C)シニア人材の計画的な代謝とキャリア支援
定年退職後の経済的な基盤を保証することで、シニア層の円滑な引退や再雇用制度と組み合わせた柔軟な人員配置(適材適所)の計画的な運用が可能になる。
②主要な企業年金制度の仕組み
企業がHRMの一環として設計する年金(企業年金)は表12に示す2つのタイプに分類される。

③近年のHRMにおける変化とトレンド
近年、雇用の流動化(転職の一般化)や多様な働き方の広がりに伴い、年金制度の在籍型(1つの会社に長くいることを前提とした設計)からの転換が進んでいる。
(A)DBからDCへの移行(リスクの移転とポータビリティ)
企業の財務リスクを軽減し、従業員が転職するときにも年金資産を持ち運べる(ポータビリティ)ようにするため、確定給付型(DB)から確定拠出型(企業型DC)へ移行、あるいは併用する企業が増加している。
(B)投資教育の充実(従業員支援)
確定拠出年金(DC)を導入する場合、従業員に対する「投資教育(マネーリテラシー教育)」がHRMの重要な責務となる。適切な運用を促すためのサポートを行うことが、新たな福利厚生の形となっている。
(C)「選択制DC」など、多様なニーズへの対応
給与の一部を前払いで受け取るか、確定拠出年金の掛け金に回すかを従業員が自ら選択できる制度など、個人のライフステージや価値観に合わせた柔軟な報酬設計が求められている。
現代のHRMにおける年金制度は、単純に「老後の生活保障」という枠組みを超え、「多様なキャリアパスを支援し、自律的な資産形成を促すための戦略的ツール」へと進化している。
[参考]
「日本的ジョブ型雇用」
湯元 健治著、株式会社日本経済新聞出版社(日経BP社)、2021年
文/南野 猛(技術士:情報工学、総合技術監理)
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