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キャリアアップ・ナビゲーターが展開する「It’s Show Time!」【電気の花道4】
資格・de・ダダダ
2025.08.13
Episode 4「三重県立四日市工業高等学校」
「花の命は短くて」で始まる詩と同様に、3年間の高校生活はあっという間に終わってしまう。その限られた時間で輝くために、だれもが何かに夢中になっている。部活もそう、友だちとのアフタースクールもそう、バイトもそう、もちろん、恋愛だって……。多感な10代後半、みんな、青春を謳歌している。
しかし、この高校3年間は助走であって、決してピークではない。さらに輝きを放つ瞬間が、未来には星の数ほど存在しているのだ。
20代、30代と歳を重ねても輝き続けるためには、では、どうすればいいか?
それは、スクールライフに「資格」というエッセンスを追加すること。3年間を「ピークに向かうための準備期間」と考えるだけでいい。
この連載は、長年にわたって名古屋工学院専門学校で教鞭を執ってきた筆者が2018年7月から行っている「キャリア教育支援」で感じた喜怒哀楽を、そこはかとなく書き連ねた青春の応援歌である。
今回の舞台は三重県立四日市工業高等学校。さて、早速、キャリアの種をまいていくことにしよう……。
今回は三重県立四日市工業高等学校を取り上げます。いつも実施している「電気科」と違い、電子工学科の生徒が対象です。
実業高校は地域産業を支える技術者の育成が目的にあります。そのため、四日市工業高校は近くに石油コンビナートがあるので工業化学系の「物質工学科」が設置されています。
また、産業が盛んな地域なので、わずか10kmしか離れていない場所に四日市中央工業高校があり、この学校にも「化学工学科」があります。
このように、地域の特性に合った学科を設置しているので、実業高校の学科をみると、どのような産業が栄えているかを知ることができます。
四日市工業高校は創立103年の伝統校で、三重県で最も大きな工業高校です。グラウンドには「甲子園」という大きな看板が掲げられ、文武両道を大切している様子がうかがえます。
令和5年度には「第9回ものづくり日本大賞「青少年支援部門」文部科学大臣賞」を三重県で初めて受賞しました。
部活動でも、三重県高等学校総合体育大会において、全日制の部で10年連続で総合優勝に輝いています。
そのような学校ですから、他校の先生から「三重県で最も意識の高い生徒が集まる工業高校」という話を聞きます。本校でも、四日市工業高校出身の学生は、私が記憶する限りでは全員が電験三種に合格しています。そのなかには電験二種に合格した学生もいて、私も非常に意識が高い学校との認識があります。ちなみに、マラソンのレジェンド・瀬古利彦さんの母校でもあります。
さて、肝心の「キャリア教育支援」ですが、電気専門の私が電子工学科の生徒たちに講演を行うので、いつもとは異なる妙な緊張感がありました。
資格では「工事担任者」「陸上無線技士」、技術では「5G」「IoT」などのネットワーク技術者のネタを用意して臨みました。
結論として、まったくの杞憂でした。担任の松尾先生からは「四工の生徒のいいところは、やはり元気がいい、礼儀正しいところだと思います。先生や来校者とすれ違ったときは必ずあいさつをするし、自然に場をわきまえた行動ができるところです」と聞いていました。だから、とにかく元気がいい! それだけじゃなくて、しっかりと礼儀も備わっていました。
このような生徒に育てる秘訣を尋ねたところ、松尾先生からは「学校行事があると、どの科も非常に盛り上がるんです。特に、体育祭は運動部に所属している生徒が6割ほどいるので、異様に盛り上がりますね(笑)。科ごとの対抗戦もあり、それぞれの生徒の特長が出てくるから、本当におもしろいんですよ。電子工学科は「オタク」が多いと言われて、運動は苦手な生徒が多いんですが、このときばかりは一致団結して勝負に挑んでいます。また、担任の先生、学科の先生も参加する綱引きは迫力があって、最高に盛り上がりますね。電子工学科は、だいたい1回戦で負けています(苦笑)。各科対抗リレーでは仮装したり、部活のユニフォームで走る部活対抗リレーもあったり、みどころが満載の体育祭ですけど、楽しむ場面は思いっきり楽しみつつ、ハメを外しすぎず、ルールを守れるのが四工生のいいところだと思います」との話をいただきました。
言い得て妙な四工生エピソードです。
本校にも体育祭があり、私が担任をしていた時代は50数クラスの対抗戦でした。私のクラスは「石原軍団」と呼ばれ、歴代最多優勝回数を誇っていました。
このような行事に全力で挑むことで、クラス内の団結心が芽生えるとともに、一生懸命にやることはカッコイイことだと学びます。
このような四工生ですから、資格取得についても主体的に取り組む雰囲気があり、生徒同士、お互いに刺激しあいながら学習しています。そのなかでも電子工学科の取得率は高いそうです。
勉強も部活も学校生活も、すべて楽しめるのが四工生のいいところだと感じました。そのなかで、講演中に気づいたことがあります。
講演しているとき、覚えておいてほしいキーポイントには「ここは伝えたい言葉なので、ぜひ、メモをとってください」と言います。それを合図に、生徒たちはメモをとります。これは大半の学校で行う流れです。ところが、四日市工業高校の生徒は自発的にポイントごとにメモをとっていました。これには感心しました。さすがです。
電気、電子と分野は違いますが、未来のニッポンを支える技術者のタマゴたちです。この「キャリア教育支援」をキッカケに、1人でも多くの生徒が難関資格にチャレンジすることを期待しています。


プロフィール
石原 昭(いしはら・あきら)
1965年生まれ。1990年4月から名古屋工学院専門学校に勤務。夜間部電気工学科のクラス担任を経て、1993年4月から昼間部電気工学科のクラス担任を務める。管理職となる2015年まで22年、ひたすら電験三種の指導を行い、クラス担任として預かった約300名の学生を電験三種に合格させる。現在はテクノロジー学部の運営とともに工業高校生に対して「キャリア教育支援」を展開している。「電験合格請負人」「電験教育の伝道師」の異名で東海地区の電気業界で活躍中。
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