原子力発電の×と〇を解き明かす【シン・Dr.フドー研究所】Vol.12

電験三種の論説問題にズームイン

2025.09.17

Vol.12
原子力発電②

　電験の学習が、どのように現場実務に結びつくかを研究する「Dr.フドー研究所」。設立から4年、電験三種の問題を徹底的に分析し、現場実務と照合した結果、論説の「正誤問題」と「空白問題」に攻略の糸口をみつけることができた。電験三種を制し、主任技術者を志す受験者に狂喜乱舞のテーマを究明する。それが「シン・Dr.フドー研究所」だ。
　正誤問題の「×の理由」とは？　そして、空白問題に潜む「〇の理由」とは？
　正解の理由に迫ることで知識を確実にストックし、現場実務とのリンクを盤石にすることができる。さあ、いますぐ研究所のドアをノックしようじゃないか！

原子力発電の原理（1）

問題　次の文章は、原子力発電の原理に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）（イ）（ウ）（エ）および（オ）に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

（1）（ア）電子　　（イ）小さい（ウ）質量欠損（エ） mc （オ）核分裂
（2）（ア）電子　　（イ）大きい（ウ）質量増加（エ） mc （オ）核融合
（3）（ア）中性子（イ）大きい（ウ）質量増加（エ） mc² （オ）核融合
（4）（ア）中性子（イ）小さい（ウ）質量欠損（エ） mc² （オ）核分裂
（5）（ア）中性子（イ）小さい（ウ）質量欠損（エ） mc （オ）核分裂

　原子核は、正の電荷を持つ陽子と電荷を持たないとが結合したものである。原子核の質量は、陽子との個々の質量の合計より。この差をといい、結合時には、これに相当する結合エネルギーが放出される。この質量の差をm［kg］、光の速度をc［m/s］とすると、放出されるエネルギーE［J］はに等しい。
　原子力発電は、ウラン等原子燃料のの前後における原子核の結合エネルギーの差を利用したものである。
2001（平成13）年度「電力」問3

○の理由
（ア）原子核は正の電荷を持つ陽子と電荷を持たない中性子が結合したものである。
（イ）（ウ）原子核の質量は陽子と中性子の個々の質量の合計より小さい。この差を質量欠損という。
（エ）結合時に放出されるエネルギーEは「E＝mc²［J］」で表され、アインシュタインの式と呼ばれている。
（オ）原子力発電は、ウラン等原子燃料の核分裂前後における原子核の結合エネルギーの差を利用したものである。
　上記より、正しい組み合わせは（4）と判断できる。
答（4）

原子力発電の原理（2）

問題　次の文章は、原子核分裂に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）（イ）（ウ）および（エ）に記入する語句、数値または記号として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

（1）（ア）中性子　（イ）4 （ウ）質量欠損　（エ）［MW］
（2）（ア）陽子　　（イ）4 （ウ）質量欠損　（エ）［MeV］
（3）（ア）陽子　　（イ）2 （ウ）質量増分（エ）［MeV］
（4）（ア）中性子（イ）2 　（ウ）質量欠損（エ）［MeV］
（5）（ア）中性子（イ）4 　（ウ）質量増分（エ）［MW］

　ウラン235の原子核1個にを入射すると、種類の原子核に分裂する。このときや、γ線とともにに相当する約200 の膨大なエネルギーが放出される。このような現象を原子核分裂という。
2000（平成12）年度「電力」問5

○の理由
　（ア）～（エ）ウラン235の原子核1個に中性子を入射すると、2種類の原子核に分裂する。このとき、中性子やγ線とともに質量欠損に相当する約200［MeV］の膨大なエネルギーが放出される。
　上記より、正しい組み合わせは（4）と判断できる。
答（4）

原子炉（1）

問題　沸騰水型原子炉（BWR）に関する記述として、誤っているのを次の（1）～（5）から一つ選べ。
（1）燃料には低濃縮ウランを、冷却材および減速材には軽水を使用する。
（2）加圧水型原子炉（PWR）に比べて原子炉圧力が低く、蒸気発生器がないので構成が簡単である。
（3）出力調整は、制御棒の抜き差しと再循環ポンプの流量調節により行う。
（4）制御棒は、炉心上部から燃料集合体内を上下することができる構造となっている。
（5）タービン系統に放射性物質が持ち込まれるため、タービン等に遮へい対策が必要である。
2022（令和4）年度上期「電力」問4

×の理由
　沸騰水型原子炉では、発生した水蒸気から水気を取り除くための汽水分離器や蒸気乾燥器が炉心の上部に設置されている。
　このため、BWRでは制御棒は炉心下部から燃料集合体内を上下する構造となっている。つまり、上部には先客がいるので、制御棒は下部から上下する構造となる。
　上記より、誤っている選択肢は（4）と判断できる。
答（4）

原子炉（2）

問題　沸騰水型軽水炉（BWR）に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。
（1）燃料には低濃縮ウランを、冷却材および減速材には軽水を使用する。
（2）加圧水型軽水炉（PWR）に比べて出力密度が大きいので、炉心および原子炉圧力容器は小さくなる。
（3）出力調整は、制御棒の抜き差しと再循環ポンプの流量調整により行う。
（4）加圧水型軽水炉に比べて原子炉圧力が低く、蒸気発生器がないので構成が簡単である。
（5）タービン系に放射性物質が持ち込まれるため、タービン等に遮へい対策が必要である。
2005（平成17）年度「電力」問4

×の理由
　沸騰水型原子炉（BWR）は原子炉で直接蒸気を発生させることから、加圧水型原子炉（PWR）に比べて蒸気条件が悪いので出力密度が小さく（約半分）なる。
　BWRは格納容器内部に汽水分離器や蒸気乾燥器が収納されているので、炉心および原子炉圧力容器は大きくなる。
　上記より、誤っている選択肢は（2）と判断できる。
答（2）

原子炉（3）

問題　原子力発電に用いられる軽水炉には加圧水型（PWR）と沸騰水型（BWR）がある。軽水炉に関する記述として、誤っているものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。
（1）軽水炉では、低濃縮ウランを燃料として使用し、冷却材や減速材に軽水を使用する。
（2）加圧水型では、構造上、一次冷却材を沸騰させない。また、原子炉の反応度を調整するために、ホウ酸を冷却材に溶かして利用する。
（3）加圧水型では、高温高圧の一次冷却材を炉心から送り出し、蒸気発生器の二次側で蒸気を発生してタービンに導くので、原則的に炉心の冷却材がタービンに直接入ることはない。
（4）沸騰水型では、炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合して、タービンに送る。
（5）沸騰水型では、冷却材の蒸気がタービンに入るので、タービンの放射線防護が必要である。
2013（平成25）年度「電力」問4

×の理由
　沸騰水型では炉心で発生した蒸気を直接タービンに送る。
　熱交換の役割をする蒸気発生器があるのは加圧水型で、沸騰水型には蒸気発生器はない。
　上記より、誤っている選択肢は（4）と判断できる。
答（4）

原子炉（4）

問題　原子力発電に関する記述として、誤っているものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。
（1）原子力発電は、原子燃料の核分裂により発生する熱エネルギーで水を蒸気に変え、その蒸気で蒸気タービンを回し、タービンに連結された発電機で発電する。
（2）軽水炉は、減速材に黒鉛、冷却材に軽水を使用する原子炉であり、原子炉圧力容器のなかで直接蒸気を発生させる沸騰水型と、別置きの蒸気発生器で蒸気を発生させる加圧水型がある。
（3）軽水炉は、天然ウラン中のウラン235の濃度を3～5％程度に濃縮した低濃縮ウランを原子燃料として用いる。
（4）核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉を熱中性子炉といい、軽水炉は熱中性子炉である。
（5）沸騰水型原子炉の出力調整は、再循環ポンプによる冷却材再循環流量の調節と制御棒の挿入および引き抜き操作により行われ、加圧水型原子炉の出力調整は、一次冷却材中のホウ素濃度の調節と制御棒の挿入および引き抜き操作により行われる。
2021（令和3）年度「電力」問5

×の理由
　軽水炉は減速材と冷却材に軽水を使用する原子炉で、沸騰水型（BWR）と加圧水型（PWR）がある。
　一方、黒鉛減速ガス冷却炉は減速材に黒鉛、冷却材に炭酸ガスを使用する原子炉である。国内では東海発電所が1998年まで営業運転をしていた。
　上記より、誤っている選択肢は（2）と判断できる。
答（2）

原子炉（5）

問題　次の文章は、原子力発電に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）（イ）（ウ）（エ）および（オ）にあてはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

（1）（ア）汽力発電　　（イ）原子炉（ウ）自然エネルギー（エ）プルトニウム239 （オ）ウラン235
（2）（ア）汽力発電　　（イ）原子炉（ウ）化石燃料　　　（エ）ウラン235 　　　　（オ）ウラン238
（3）（ア）内燃力発電（イ）原子炉（ウ）化石燃料　　　　（エ）プルトニウム239 （オ）ウラン238
（4）（ア）内燃力発電（イ）燃料棒（ウ）化石燃料　　　　（エ）ウラン238 　　　　（オ）ウラン235
（5）（ア）太陽熱発電（イ）燃料棒（ウ）自然エネルギー（エ）ウラン235 　　　　（オ）ウラン238

　原子力発電は、原子燃料が出す熱で水を蒸気に変え、これをタービンに送って熱エネルギーを機械エネルギーに変えて、発電機を回転させることにより電気エネルギーを得るとい点では、と同じ原理である。原子力発電では、ボイラの代わりにを用い、の代わりに原子燃料を用いる。現在、多くの原子力発電所で燃料として用いている核分裂連鎖反応する物質はであるが、天然に産する原料では核分裂連鎖反応しないが99［％］以上を占めている。このため、発電用原子炉にはガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法での含有率を高めた濃縮燃料が用いられている。
2009（平成21）年度「電力」問4

○の理由
（ア）原子力発電は、蒸気タービンに送って熱エネルギーを機械エネルギーに変え、発電機を回転させて電気エネルギーを得るという点では、汽力発電と同じ原理である。
（イ）（ウ）原子力発電では、ボイラの代わりに原子炉を用いて、化石燃料の代わりにウランなどの原子燃料を用いる。
（エ）（オ）原子力発電所で燃料として用いている物質はウラン235で、天然ウランにはウラン238が99.3％を占めている。このため、発電用原子炉にはガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法でウラン235の含有率を高めた濃縮燃料が用いられている。
　上記より、正しい組み合わせは（2）と判断できる。
答（2）

原子炉（6）

問題　次の文章は、原子力発電の設備概要に関する記述である。記述中の空白箇所（ア）（イ）（ウ）および（エ）にあてはまる組み合わせとして、正しいものを次の（1）～（5）のうちから一つ選べ。

（1）（ア）減速材（イ）加圧器（ウ）蒸気発生器（エ）再循環ポンプ
（2）（ア）減速材（イ）蒸気発生器（ウ）加圧器（エ）再循環ポンプ
（3）（ア）減速材（イ）加圧器（ウ）蒸気発生器（エ）給水ポンプ
（4）（ア）遮へい材（イ）蒸気発生器（ウ）加圧器（エ）再循環ポンプ
（5）（ア）遮へい材（イ）蒸気発生器（ウ）加圧器（エ）給水ポンプ

　原子力発電で多く採用されている原子炉の型式は軽水炉であり、主に加圧水型と沸騰水型に分けられるが、いずれも冷却材とに軽水を使用している。
　加圧水型は、原子炉内で加熱された冷却材の沸騰をにより防ぐとともに、一次冷却材ポンプで原子炉、に冷却材を循環させる。で熱交換を行い、タービンに送る二次系の蒸気を発生させる。
　沸騰水型は、原子炉内で冷却材を加熱し、発生した蒸気を直接タービンに送るため、系統が単純になる。
　それぞれに特有な設備には、加圧水型では、、一次冷却材ポンプがあり、沸騰水型ではがある。
2015（平成27）年度「電力」問4

○の理由
（ア）軽水炉では、冷却材と減速材に軽水（普通の水）を使用している。
（イ）（ウ）加圧水型（PWR）は原子炉内で加圧された冷却材の沸騰を加圧器で加圧することにより防ぐとともに、一次冷却材ポンプで原子炉、蒸気発生器に冷却材を循環させる。
（エ）沸騰水型（BWR）に特有な設備として再循環ポンプがある。
　上記より、正しい組み合わせは（1）と判断できる。
答（1）

文／不動弘幸　イラスト／藤井としたか

技術者必携ライセンスの解答例を一挙公開！