電気関係資格取得応援セミナーin大阪【技術者のタマゴたち】第3回

次世代を担うエンジニア列伝

2025.11.14

実務と座学で「即戦力の知識」をマスターする

電気技術者のためのノウハウが満載！

　だれの言葉か定かではないが、昔から「学生の本分は勉強である」といわれている。特に、社会に出たときに即戦力となる専門知識を身につける工業高等学校となると、マスターすべきことは山ほどあるため、まさに勉強三昧のスクールライフだ。
　そして、工業高等学校はカリキュラムをこなすだけではない。特に、電気分野では現場で活躍するためにライセンスの取得が求められる。電気工事士、危険物取扱者、消防設備士、電気主任技術者と数ある資格のなか、第二種電気工事士の取得を必達に掲げ、第一種電気工事士から電験三種へと発展していく流れがメインストリームとなっている、が……。
　資格取得といっても、そう都合よく合格できるものではない。より専門的な知識と技術を身につけるために、プラスαの勉強三昧となるスクールライフが待っている。
　早朝、もしくは放課後に補習を行い、帰宅してからは自主学習。もちろん、カリキュラムにおける課題や実習レポートは必ずこなさなければならない。息抜きの時間は限られ、試験直前ともなると常にテキストやノートとにらめっこ状態。そこまで追い込んで、ようやく栄冠に手がかかる、という流れが電気分野におけるライセンス取得までのプロセスだろう。とにかく、知識と技術を吸収することに膨大な時間を費やさなければならないのだ。
　一筋縄ではいかないライセンス教育。その反面、取得したときのリターンは当然ながら大きい。社会に入った時点で「電気技術者」としてカテゴライズされる。つまりは、免許皆伝者と認められるということ。現場デビューも早く、それだけ経験値も積み上げることができる。スムーズなキャリアアップを引き寄せることが可能になるのだ。
　だから、資格に挑む。ハードルは高くても、電気工事士、そして、電験へと果敢にチャレンジする。
　濃淡はあるにせよ、さまざまな取り組みを学校単位で実践。いくつかの学校が集まって合同勉強会を実施するケースもある。受験する仲間が多いほど、切磋琢磨して予想外の結果を手繰り寄せるもの。特に、模擬設備で実務を体験しつつ、現役技術者のレクチャーを受けられるとあっては、資格取得の意欲は一段と高まるはず。
　こうして、近畿地区の工業高校を対象に「電気関係資格取得応援セミナー」が2日間のスケジュールで開催されるに至ったのだ（今回は大阪府以外の学校からの参加はなし）。

オープンタイプの受電設備で実務研修。VCT（電力需給用計器用変成器）の説明を受け、電気の流れのイメージを膨らませる。

標準抵抗器を利用した接地抵抗測定にチャレンジ。使用するツールの動作チェックも電気技術者がマスターすべき基本業務の1つ。

ホワイトボードを使って、オームの法則で電流値を算出。「なぜ、そうなるのか？」を基礎から、ていねいにレクチャーしてくれる。

現場実務の体験で学習意欲を刺激

　夏休みを利用して開催された同セミナーは、大阪府内の4つの工業高校から合計20名の生徒が参加。関西電気保安協会の人財開発センターで「実務」と「座学」をミックスさせた充実のプログラムを体験する（内容は初日、２日目ともに同じ）。
　座学を中心とした試験対策、例えば、電験三種では数校が集まって合同勉強会を実施している地域はある。これは大阪府も例外ではない。しかし、模擬設備を利用して実務を連動させるプログラムを展開しているのは大阪府の特徴だ。
　参加校は大阪府に限らず、関西圏が対象。今年は大阪府立都島工業高等学校（全日制、定時制）、大阪府立今宮工科高等学校、大阪府立泉尾工業高等学校、星翔高等学校で、開催年によっては兵庫県、京都府、滋賀県からの参加もある。夏休みに開催するため参加校の数にバラつきはあるが、資格への取り組みに積極的な学校が集まるのは例年のことだという。
　ここで、今回のプログラムを簡単に紹介する。
　まず、オリエンテーションから始まり、高圧受電設備（実習施設）を見学しながら、関連する第一種電気工事士試験の過去問題に着手。現役技術者が「実務」に沿った解説を生徒たちに展開していく。
　3班体制でローテーションしながら受電設備の概要を学び、午前中のプログラムが終了。昼食休憩のあと、電気主任技術者がマスターすべき実務理論「電路の絶縁」「地絡保護」「過電流保護」を座学で解説し、休憩を挟んで、試験業務と測定実務の体験プログラムをこなす。
　そして、最後は関西電気保安協会の電験三種担当講師との意見交換。受験アドバイスから生徒たちのギモン解消などに対応して16時20分に閉幕を迎える。
　10時からスタートした正味5時間の濃密プログラムは、日々の自学自習の何倍もの効果をもたらすことだろう。それだけ現役技術者の経験談や現場実務の体験プログラムは、同じ目標を掲げる仲間たちのモチベーションになるということだ。
　対象ライセンスを、これまでの「電験三種」から「第一種電気工事士」まで間口を広げてプログラムを設定した合同勉強会。未来の電気主任技術者、電気工事士が、ここから誕生する日も遠くはないだろう。