Q&A
空調機フィンの腐食事例【設備の相談22】
事例で解決!
2025.12.16
相談
空調機の定期点検時に、機内で砂状の異物をみつけました。空調機本体や設置環境を確認しましたが、外部の砂が侵入したとは考えにくい状況です。ほかに、どのような原因が考えられるでしょうか。
回答
事例の概要
建物管理者から、空調機内で発見した異物について相談がありました。建物の竣工は1990年で、異物は2000年に入ってから発見したとのことです。
敷地環境としては周囲に砂地がない点と、交通量の多い道路に面している点が挙げられます。
空調機の構造
空調機はエアハンドリングユニット(図1、以下「AHU」と記す)を使用しています。AHUの主な役割は必要とされる条件の空気を室内に供給することです。
まず、プレフィルタと中性能フィルタによって、外気と還気が混合された空気の除塵を行います。
次に、冷水コイルと温水コイルで温度調整したあと、冬期であれば加湿を行い、室内に給気します。コイルは冷水、温水が流れる銅管とアルミニウム製のフィンで構成されています。限られたスペースに必要な伝熱面積を確保するために、フィンは狭い間隔で設置されています。

空調機内の調査
砂状の異物は図1の①と②で発見されました(写真1)。①では温水コイルの底部に堆積し、②では冷水コイルのフィン表面を覆っていました。この異物がAHU外部から機内に侵入したとすれば、2つのフィルタを通過したことになります。しかし、フィルタ表面に異物の付着はなく、破損もありませんでした。
調査ではコイルの状態についても確認しましたが、アルミニウム製のフィンは金属の光沢がなくなり、容易に折れてしまうほど脆く変質していました。
建物内のAHUを調査した結果、数台の機内から同様の異物がみつかりました。このようなAHUのなかにはフィンが腐食したように崩れたコイルも確認されました。
以上の点から、異物は外部の砂ではなく、コイルのフィンから発生したものではないかと考えました。

異物の分析
建物所有者に調査結果を報告し、今後の対応を協議しました。その結果、異物を分析して正体を把握したあと、対策を講じることになりました。
分析は金属材料の研究所へ依頼しました。研究所からの報告によって、異物の主成分がアルミニウム、硫黄、塩素だとわかりました。分析結果に対する研究所の見解は、フィンのアルミニウムが硫黄や塩素を含む酸性物質の影響で溶かされ、酸化物や硫化物、塩化物として析出した、というものでした。
アルミニウムは酸素と反応することで表面に酸化被膜をつくります。この被膜は高い耐食性を持ち、腐食しやすい性質のアルミニウムを保護しています。しかし、周囲の環境によっては酸化被膜が破壊され、腐食が進行するおそれがあります。
AHU機内は結露や加湿の水分に加え、自動車の排ガスなどの腐食性ガスにさらされるおそれがあるため、アルミニウムにとって条件のよい環境ではありません。
対策結果
研究所の分析結果を踏まえ、異物がみつかったコイルを腐食対策が施されたコイルへ更新するように建物所有者に提案しました。対策用のフィンは既存と同様にアルミニウム製ですが、耐食性を高めるためにフィン表面にアクリル樹脂がコーティングされています。この技術は建物竣工後の1990年代中ごろから広く普及が進み、現在も多くのコイルに使用されています。
提案は採用となり、フィンの状態が特に悪いAHUから順次更新することになりました。アクリル樹脂のコーティングは極めて薄く、既存のフィンの間隔とほとんど変わりがないことから、コイルサイズを変更することなく更新工事を行うことができました(写真2)。
相談のあったAHUは更新計画の初年度(2000年代初期)に施工され、コイル更新から現在に至るまで変わりなく運用していますが、フィンの腐食はなく、砂状の異物がみつかることもなくなりました。

※「設備と管理」2016年9月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
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