Q&A
配管劣化診断の実施事例【設備の相談14】
事例で解決!
2025.01.27
相談
冷温水管が使用開始から20年となり、腐食などによる劣化が懸念されています。配管の状態を確認するには、どのような方法がありますか?
回答
配管の劣化診断
一般鋼管の耐用(使用可能)年数は15~20年、樹脂ライニング管やステンレス管は30~40年といわれています(管理状況によっても大きく年数が変わります)。特に、一般鋼管は使用年数が長くなると腐食、詰まりなどが進行し、トラブルが発生しやすくなります。そのため15年程度が経過したとき、または何らかの異常(漏水、通水不良)が発生した場合、配管の健全性を診断する必要があります。
そこで、今回は配管劣化診断の実施事例を取り上げます。
劣化診断を行う前に、設備の資料を収集します。対象となるのは主に以下の図書、図面で、これらを参考に流体、管種ごとに最適な調査方法と調査箇所を検討します。
・工事仕様書(流体ごとの管種や保温などの仕様)
・配管システム図(機器表、系統図など)
・配管平面図(配管の設置位置やサイズがわかる図面)
調査は配管のすべての部位の劣化状況を調査するものではなく、配管の特性を理解し、性状が近似している区間から代表箇所を選びます。その調査データから全体の劣化状況を推測し、効率的で精度の高い診断を行います。
調査部位
調査する部位は大きく以下の3カ所に分けられます。
・主管部:熱源機器、ポンプ周辺など
・中間部:シャフト内の立て管
・端部:機器、器具の周辺
主管部は一般に配管サイズが大きく、肉厚もあるので残肉厚が多く、やや安心な部位です。端部は負荷が多い機器や器具の周辺の配管を選びます。流量が多く、腐食および閉塞が進行しやすい状況にあるからです。
調査方法
調査方法には「破壊調査」と「非破壊調査」の2種類があります。それぞれに特徴があるため、診断目的とコストに合った調査方法を選択します。
①破壊調査:サンプリング調査
調査部位を切り出し、配管を半割りに切断して内部を目視で調査します(写真1)。サビがあれば薬品洗浄して原管部を露出させ、腐食部の肉厚をポイントマイクロメータなどで測定します。
・配管内の様子を直に確認することができる。
・精度の髙い肉厚測定ができる。
・配管の切り出しに水損などのリスクを伴う。
・費用が高い。
・ほぼすべての配管(管種)で適用が可能。

②非破壊調査:エックス線による撮影
配管にエックス線を照射し、内部の様子を観察する方法です。配管の肉厚の違いで写真に濃淡が生じ、腐食の状況が判断できます(写真2)。濃度の違いにより、簡易的に肉厚の測定も行えます。
・腐食状況が感覚的に理解できる。
・精度の高い肉厚計測はできない。
・継ぎ手部の構造が複雑な部位も状況が判断できる。
・エックス線の照射時は安全確保が必要になる。
・ほぼすべての配管(管種)で適用が可能。

③非破壊調査:超音波による肉厚測定
配管表面に超音波探触子をあて、発信した超音波のエコーの時間を測定して肉厚を測定する方法で、精度の高い測定が可能です(図1)。
・平滑な直管部の肉厚測定に適している。
・精度が非常に高い。
・ピンホールなどの局部浸食部位は測定不可能。
・ネジ、継ぎ手部の測定はできない。
・一般鋼管に適用可能。

④非破壊調査:内視鏡による調査
カメラケーブルを管内に挿入し、先端のカメラで管表面を撮影してモニターで状況を確認します(写真3)。カメラケーブルが挿入できる開口(排水トラップやエア抜きバルブなど)があれば、比較的簡単に管内の観察が可能です。
・排水管の閉塞状況などの確認に適している。
・カメラケーブルの届く範囲の調査となる。
・ほぼすべての配管(管種)で適用が可能。

上記以外にも多様な調査方法がありますが、それぞれの方法の特徴を理解し、建物の機能や第三者に対してトラブルが発生しないように綿密な作業計画を立てることが重要になります。
※「設備と管理」2016年1月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)