Q&A
中央監視盤のデータを利用した省エネチューニング【設備の相談12】
事例で解決!
2024.11.05
相談
中央監視盤にある数多くのデータを活用して省エネに結びつけるには、どういった方法があるのでしょうか?
回答
中央監視盤のデータに着目
今回の相談はオフィステナントビルの事例です。ビルの特性上、入居するテナントの業務に影響を及ぼさないことが第一条件ですが、まずは、収集された各種データだけでは把握できない対象施設の運用状況と条件を十分に理解することが必要となります。そして、建物管理会社からヒアリングを行ったうえで、中央監視盤から得られるデータを基にした設備の運用改善を実施しました。
対象施設の概要
対象施設の概要を以下に記します。
・所在地:都内某所 ・建物用途:オフィス、ホール、店舗
・延床面積:約80000m2 ・中央監視盤:監視点数は約1200点
・冷熱源:蒸気吸収冷凍機900USRT、ターボ冷凍機600USRT、熱回収ターボ冷凍機600USRT、水冷チラー100USRT×7台
低層系冷水流量の調整
データ分析の結果、要求冷水流量が30~100m3に対して、実際は200~300m3と過大な冷水が流れていました。また、冷水往還の差圧が設定値の150kPaに対して、100~200kPaと安定しない状態となっていました(図1)。
そこで、建物管理会社との共同作業で低層系二次側の冷水流量調整を行い、熱交換器の冷水ポンプの稼働を2台から1台に変更し、冷水流量が200m3/hから50~70 m3/hに減少しました。
この結果、冷水往還の差圧は150kPaで安定し、熱交換器の冷水ポンプのインバータ周波数は50Hzから45Hzに、電流値は25Aから21Aに低下しました(図2)。また、その省エネ効果の試算結果は表1のようになりました。
冷水送水温度の設定変更
水冷チラーの冷水出口温度は、年間を通じて7℃に設定されていました。そこで、夏期に比べて冷房負荷が少ない中間期と冬期の冷水出口温度を見直すことで水冷チラーの運転効率の向上を図ることにしました。冷水出口温度を高くすることによって冷媒の蒸発温度が高くなり、冷凍機(圧縮機)の所要電力が低減します(図3)。夏期、中間期、冬期の水冷チラーの運転時間は表2のとおりで、その省エネ効果を以下の式から試算したところ、表3の結果が得られました。
削減電力量[kW・h]=設備容量[kW]×チラー平均負荷率(0.9)×台数×運転時間[h]×圧縮機の所要動力削減率
ここから、中間期と冬期の削減電力量が以下のように求められました。
中間期削減電力量=90[kW]×0.9×3[台]×732[h]×0.08≒15800[kW・h]
冬期削減電力量=90[kW]×0.9×1[台]×363[h]×0.12≒3500[kW・h]
省エネチューニングの実施には、建物所有者や建物管理会社への省エネ提案内容の説明と、その十分な理解が必要になります。相互の情報共有(コミュニケーション)の場を設けて、協力体制を築くことが重要です。
常駐設備管理スタッフは、建物全般の運用についての取り扱い説明を受けていますが、運転する設備機器の選定時は最大負荷を考慮します。この考え方は原則として正しいのですが、テナントの入れ替わりやテクノロジーの発達によって、竣工当初より熱負荷が減少し、結果、過剰となった熱源設備の扱いに困りながら運用しているケースも少なくありません。
また、運用ノウハウの引き継ぎがされないまま建物管理会社が変更となり、効率的な設備運用が継承されないケースもあります。
中央監視盤から得られるデータを詳細に分析すると、設備機器の運用状況を再点検することが可能で、同時に省エネルギー、省コストを実現するための課題の発見や改善提案にもつながります。
今回は建物所有者と建物管理会社の全面的な協力とともに、大きな省エネ効果をもたらすことができて、非常に感謝された事例となりました。
※「設備と管理」2015年11月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)