Q&A
内視鏡による排水主管検査と維持管理業務の改善【設備の相談15】
事例で解決!
2025.03.04
相談
「レストランの厨房のグリストラップから逆流した」との連絡を受けて、現場を確認後、グリストラップ清掃と高圧洗浄を行いました。しかし、それでも頻繁に排水管が詰まるので、内部に障害物や残留物があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
回答
グリストラップと床排水溝から逆流現象
今回は、内視鏡による排水管内部検査と厨房での日常業務の改善を行った事例を取り上げます。
この建物のレストランのグリストラップは、バイオによる油脂処理が行われ、排水の水質については十分に配慮されていました。
ところが、レストランの繁忙時(食器などの洗浄時)に敷地排水管と小口径マスの詰まりにより排水が逆流し、排水主管の排水不良現象(写真1)を起こすので、グリストラップ清掃と排水管の高圧洗浄を実施しました。

内視鏡検査
高圧洗浄で詰まりを除去したVP200Aの排水管が半年後に再び詰まったため、内部に障害物や残留物があると判断し、高圧洗浄後に内視鏡検査を実施しました。
その内視鏡検査では配管内部に障害物を確認できなかったが、内視鏡が水没した状況が確認できたため、逆勾配の可能性があると判断して配管レベルの調査を実施しました。
なお、100Aの配管の場合、曲がり部や継ぎ手部の直管端部に照明つきカメラ(直径30mm)が引っかかるため、先端可動式の内視鏡の使用をオススメする。
配管レベル調査
レーザー水平器をセットして基準高さからコンベックスで各小口径マスの管底深さを記録し、順次レベル差を割り出しました(図1、写真2)。その結果、一部で陥没などによる逆勾配での水たまりがあるものの、全体では1/200の順勾配であることを確認しました。


原因と日常業務の改善
内視鏡検査とレベル調査で配管内に大きな問題がないことを確認できたため、排水不良の原因は食べものの残渣や油脂が大量に流れて管壁に固着したためと判断しました。
そこで、油脂類が下水道施設に及ぼす影響を鑑み、以下を遵守することで油脂の固着を減少させることとしました。
・調理で残った油は回収する
・調理器具や食器などに付着した汚れは、布や紙などでできるだけふき取る
・ラーメンのスープなどはできるだけ回収する
また、以下の付着物清掃作業を定期的に行うこととしました。
①敷地排水主管の付着物清掃
煙突清掃の応用で、床掃除用のナイロンパッドを円形鉄板で挟み、両端にステンレスワイヤー(配管内への引き込みにはスネークワイヤーとの併用を推奨)を10m取りつけ、水上のマスと水下のマスの両方からワイヤーを綱引きして配管内の汚れをかき出します(写真3)。
②固着油脂の削ぎ
固着油脂をワイヤーキャップ(φ75)と木板(150sq)で粗削りします(写真4)。
これにより、配管内の詰まりを早期に除去することが可能で、高圧洗浄作業を行う必要がなくなったため、排水設備を損傷させず、グリストラップ清掃と高圧洗浄作業費を削減できました。


※「設備と管理」2016年2月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
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