Q&A
外気冷房の不具合(2)空調機内部の温度上昇事例【設備の相談11】
事例で解決!
2024.09.12
相談
外気冷房時に外気をうまくコントロールできずに室内温度が上昇してしまうのですが、何が原因なのでしょうか?
回答
空調機にも問題が発生
外気冷房は、外気温度の低い中間期~冬期でも冷房が必要とされる場合、外気を多く取り入れて冷房に利用し、熱源の消費エネルギーを削減する省エネ手法です。
前回、外気冷房の不具合について調査をした結果、屋外で計測している外気温度より、個々の空調機が導入している外気の温度が高いことが原因であるとわかりました。
ところが、さらに調査を進めると、外気取り入れ条件の問題だけでなく、空調機内部にも温度上昇の原因があると判明しました。
今回は空調機側の問題について取り上げます。
不具合の発生
関東にある高層ビルで、外気冷房制御を行うと、外気冷房時に室内温度が上昇してしまうという不具合が発生しました。
そのため、中間期は設備管理者が手動でダンパを全外気側に固定し、さらにコイルへの通水と加湿を遮断して、そのまま室内に外気を取り入れていました。
しかし、この空調機の設計意図を確認すると、全外気運転はできない構造であるにもかかわらず、実際には自動制御回路は全外気運転ができるものとしてダンパ動作が設定されていることがわかりました。
そこで、この設計意図との違いが空調機内部で温度上昇に影響を及ぼしているのか、空調機周辺の温度を実測して確認しました。
空調機内部での温度変化
空調機のエアバランスを確認してみると、定格外気量が5000CMHであるのに対し、定格給気量は8300CMHで、外気と給気の定格風量に差がありました。このことから、設計時は全外気運転だけでなく、全外気運転時でも還気と混ぜて給気風量を確保する外気冷房を想定していたと考えられます。
ところが、実際には全外気運転時には還気ダンパは完全に閉止状態になっていました。
空調機周辺の温度分布調査の結果(図1)から、空調機を通過する間に外気は約2℃、温度上昇していることがわかります。温度上昇は以下の2点で発生していました。
①ファン駆動モータ部:約1℃
②空調機組み込みの還気ダンパ部:約1℃
これについて、それぞれの原因を検討しました。
①ファン駆動モータ部
外気冷房とは関係なく、空気がファン駆動モータ部を通過するときは必ず温度が上昇します。
②空調機組み込み還気ダンパ部
空調機組み込みの還気ダンパ(写真1)の羽根の合わせ目からのリークが温度上昇の原因と考えられました。リークの原因は、空調機内への組み込みなので還気ダンパの羽根の合わせ目が長いこと、そして、もともと還気ダンパ全閉としての運転が想定されていないにもかかわらず、無理に全外気運転を行ったことで空調機の給気側と排気側の機内差圧が拡大し、還気ダンパのリークを助長させていたことでした。
結果として、給気温度が室内温度を超えるケースも出てきていました。
空調機内での温度上昇の予防策
外気冷房効果を確実に得るためには、還気ダンパをノンリーク型にするなど、空調機の運用方法を明確にして機器を設計する必要があります。また、外気取り入れガラリの寸法制約などによって取り入れ外気量が影響を受ける場合もあるため、その確認も必要です。
この建物では外気冷房判断を適切に行うことができず、給気温度が室内温度を超え、外気導入が冷房負荷(増エネ)となる場合もありました。そこで、給気温度と還気温度を比較し、給気温度が高いときには外気冷房を禁止するという制御への変更を提案しています。
運用が増エネにならないために
外気冷房に限らず、設計意図と運用に差異がある場合がありますが、パソコンの運転データだけではわからないことがあります。現場の稼働状況に合わせた調査を行い、因果関係を整理することが解決の近道です。
この建物では、これらの調査により原因が判明し、運用を見直すキッカケになったと建物所有者から感謝されることになりました。
※「設備と管理」2015年10月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)