Q&A
空冷ヒートポンプチラーのハンチング減少事例【設備の相談13】
事例で解決!
2024.12.11
相談
空冷ヒートポンプチラーのハンチングが発生しています。安定した運転にするには、どうしたらよいでしょうか?
回答
中央監視盤のデータを活用
以前、中間期に空冷ヒートポンプチラー(以下、チラー)の冷水出口温度を見直して省エネを図ったのですが、ハンチングが発生して安定した運転ができなくなるという事例を経験しました。そこで、今回は、中央監視盤のデータを活用して最適な設定に調整し、送水温度を安定させる省エネチューニングを取り上げます。
対象施設の概要
対象施設の概要を以下に記します。
・所在地:都内某所 ・建物用途:病院(病床数は約70床) ・延床面積:約9000m2
・冷熱源:空冷ヒートポンプチラー(冷凍能力879kW、暖房能力450kW)
なお、このチラーは9つのユニットで構成され、ユニット単位で1台のユニットに3台の圧縮機を内蔵しています。1台の圧縮機を運転することを1段増、停止することを1段減と、それぞれ呼びます。
データの分析
温度計測点のデータより、往温度がハンチングしているとの指摘を受け、運転データを詳細に分析したところ、低負荷時で安定運転時間帯にチラー圧縮機が短時間に2段増~2段減を繰り返していたことが判明しました(図1)。

原因の分析
チラー圧縮機は、冷水入り口温度と冷水出口温度により圧縮機の増段、減段を行います。今回の圧縮機の運転状況を分析したところ、負荷が増加して出口温度が上昇し、圧縮機が1段増になっても、増段圧縮機の能力が100%になるまでの間、さらに出口温度が上昇し、冷凍機は負荷が増えていると判断して2段目の圧縮機も起動していました。
対策の実施と効果
チラーは出口温度を一定に安定させようとするほど細かく発停を繰り返しています。発停回数が多いと、その分、圧縮機が起動するときの起動電流も大きくなります。さらに、圧縮機にはインバータがついていないため、チラー圧縮機が運転開始後、その能力を発揮するまでに2分以上の時間を要し、この間に次段の圧縮機まで起動するのでムダな電力を消費しています。
そこで、冷水出口温度をムリに安定させるのではなく、発停回数が減少するように運転パラメータを再検討しました。具体的には増減段の発停タイミングに遅延を設定(温度を不感)してハンチングを減少させ、1日あたりの発停回数を約70%削減して省エネを実現しました(図2~3、表1)。
これにより、冷水配管系の制御の安定化のほか、年間のエネルギー削減効果が改善し(前年比で-10.3%)、省エネにつながったことで病院関係者に評価していただきました。



※「設備と管理」2015年12月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
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