Q&A
多目的空調冷却塔における泡の発生事例【設備の相談8】
事例で解決!
2024.06.11
相談
冷房のシーズンイン点検後、空調運転を開始したところ、冷却塔下部の水槽から多量の泡が発生。周辺に飛散するトラブルを引き起こしました。冷却塔は清掃し、水処理薬剤も投入していたのですが、ときどき再発しています。この発泡を防ぐには、どうしたらよいでしょうか?
回答
泡の発生原因と現状確認、予防策
建物管理者から「冷却塔でたびたび発生している泡が周辺環境や通行人にかかるおそれがあるため、発泡を防ぐ方策に取り組みたい」との相談がありました。
冷却塔の水槽には目的に応じて各種薬剤が投入されます。この現場ではレジオネラ属菌対策のために冷却水処理薬品の塩素系固形タブレット剤を添加していたところ、シーズンイン点検後、運転開始後や通常運転期間中に、しばしば泡が発生(写真1)。消泡剤をまいて泡消しを行っていました。
冷却塔での発泡の一般的な原因として以下のことが考えられます。
①冷却塔冷却水の過濃縮
②冷却水処理薬品の過剰添加
※問題視されることは多いが、抑制につながる場合もあるので現状把握が重要
③冷却水系内のスライム発生量が多く、系内の汚れが薬剤と反応する
④冷却塔の充てん材と下部水槽までの間隔が広く、泡立ちやすい構造になっている
上記の4点について、この現場での現状確認と予防策を実施しました。
対策① 冷却水の過濃縮
表1に示すように、日々の点検における冷却塔冷却水伝導率の数値は860~1160μS/cm程度で安定し、濃縮の想定範囲内なので、過濃縮の心配はないと判断しました。
対策② 薬品の過剰添加
定期的に投入している固形タブレット剤は薬剤濃度を均一に管理するのが難しく、添加直後は濃度が高くなり、泡が発生しやすくなるため、薬剤の投入量を減らして投入する間隔を短縮しました。
また、間欠投入時は、あらかじめシリコン系の消泡剤を用意し、薬剤投入時の泡の発生を素早く発見して即座に対応するため、表2のようなチェックシートを使用して、1年間、その効果を確認しました。その結果、泡の発生頻度は少なくなりましたが、完全に改善するまでには至りませんでした。
対策③ 系内の汚れと薬剤の反応
冷却水系内におけるスライム発生量が多く、そうした汚れが薬剤と反応することで泡が発生していました。その対策として、シーズンイン点検後、冷却塔水槽の水洗浄を実施していましたが、配管系統が長いため、循環洗浄は行っていませんでした。
対策④ 冷却塔周りの構造
冷却塔の充てん材と下部水槽までの間隔が広く、泡立ちしやすい構造になっているものの、連続で発生していないため、これに起因するものとは考えにくいと結論づけました。
泡発生に対する対策
上記のような簡易的な予防策を実施して泡の発生頻度は減少しましたが、完全解決には至っていませんでした。そこで、どのように本格的な対策をすればいいか、再検討しました。
その結果、費用はかかるものの、2つの改善方法が浮上しました。
1つは濃度コントロールが困難な固形タブレット剤から液体薬剤に変更し、連続注入装置を導入する方法です。
もう1つは冷却塔だけでなく、配管系統も含めてシーズンインの前に洗浄剤を使ってラインを徹底的に洗浄し、その後の薬剤投入を休止する方法です。
この2つの改善方法を建物管理者に提案して議論したところ、費用対効果が高いことから2つめの方法を実施することになりました。
そして、この対策を実施したことで冷却塔の水洗浄のみでは落としきれなかった配管内のスライムなどの汚れが除去され、レジオネラ属菌の供給源も断つことにつながりました。
また、固形タブレット剤の添加をやめることで泡の発生源がなくなり、冷却塔からあふれなくなるという安定した結果を得ることができました。
さらに、冷却水処理薬品を使用しないで徹底的に洗浄することで維持費は安くなり、建物管理者から感謝されました。
※「設備と管理」2015年7月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)