Q&A
外気冷房の不具合(1)外気から取り込む温度が高い事例【設備の相談10】
事例で解決!
2024.08.23
相談
外気冷房時に外気をうまくコントロールできずに室内温度が上昇してしまうのですが、何が原因なのでしょうか?
回答
外気冷房とは?
外気冷房は、外気温度の低い中間期~冬期でも冷房が必要とされる場合、外気を多く取り入れて冷房に利用し、熱源の消費エネルギーを削減する省エネ手法です。外気を取り入れる判断は図1に示すような空気線図の範囲で行われます。
しかし、外気の取り入れ口やセンサの位置、空調機の仕様によっては有効に作動しない場合があります。その事例を、2回にわたって紹介します。
今回は外気の取り入れ口やセンサの位置の問題点について取り上げます。
不具合の発生
関東にある高層ビルで、外気冷房時に外気の取り入れがスムーズにできず、室内温度が上昇するという不具合が発生しました。
この建物では屋上に設置している百葉箱で外気温度を計測し、その計測値で空調機の外気冷房を判断しています。測定データを確認すると、ある年の10月4日13時20分(曇り)の外気温度は22.4℃でしたが、空調機を導入している20階の外気温度は24.7℃と屋上よりも2.3℃高くなっていました。
建物の形状は南北に長く、ガラリは西側外壁に設置されています。周囲には日射をさえぎる建物はなく、午後には南西面全体が日射を受けることから、空調機を導入している20階の外気温度が高い原因として日射の影響が考えられました。
そこで、計測した外気温度と空調機がガラリから取り組む外気温度の関係を詳しく調査しました。
外気温度は、どこでも同じ!?
簡易データロガーを外気導入部(OA)に設置し、実際に空調機を導入している外気温度の時刻変化を確認しました(図2)。
10月26日14時30分(晴れ)に計測した外気温度は21.0℃で、これに対して20階の空調機の外気取り込み温度は25.0℃と4.0℃も高い値となりました。
一方、10月27日13時30分(曇り)では外気温度が15.8℃に対し、20階の空調機の外気取り込み温度は18.0℃と2.2℃の差であり、晴れのほうが温度差は大きくなりました。その状況を図3に示します。
計測温度と各階の外気取り込み温度の差は、日射がある日は大きく、曇りでも差が発生しています。建物自体が日射や天空放射の影響を受けているものと考えられます。
検討している対策
このように、各階の空調機が導入している外気の温度は日射などの影響を受け、屋外の百葉箱で計測している外気温度と異なっていました。実際に空調機が吸い込む外気の温度を用いて外気冷房の判断をしなければ、しっかり外気冷房の効果を得ることはできません。
そこで、この建物では空調機ごとに外気計測用センサを新設し、外気冷房判断を行う方法を検討しています。
現在はビルオートメーション技術の進展で、1本の外気センサを施設全体で共有することが一般的になっていますが、この建物のように、形状によっては外気温度の測定場所を適切に選定しないと正しい外気取り込み温度を計測することができません。
次回は空調機側の問題について取り上げます。
※「設備と管理」2015年9月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)