Q&A
銅管の腐食による冷媒ガス漏れ事故と対策【設備の相談24】
事例で解決!
2026.03.27
相談
テナント入居者から「空調が効かない」との苦情があり、調査したところ、ビルマルチエアコンの冷媒銅管の「蟻の巣状腐食」による冷媒漏れとわかりました。予防保全として、どのような対策をすればよいでしょうか。
回答
事例の概要
低温の冷媒銅管の表面が断熱材の損傷のために結露し、化学反応により断熱材をとめている接着テープの接着剤からカルボン酸が生成され、蟻の巣状腐食が発生した事例です(写真1)。
近年、ビルマルチパッケージエアコンの普及に伴い、冷媒銅管が腐食して冷媒が漏れる事故の報告が増えています。漏水による被害が、建物内部に限定されることが多い水配管に比べ、フロン系冷媒の漏えいは地球環境に大きな影響を及ぼします。「フロン排出抑制法」(2015年4月に施行)では漏えいの管理を厳しく要求しています。
適切に施工された冷媒銅管は、本来、長寿命ですが、配管通過ルートとなる天井内などの空間の環境雰囲気や、断熱材や施工に使用する材料の影響を受けて腐食することがあります。
蟻の巣状腐食のメカニズム
蟻の巣状腐食は銅、水、酸素、有機物や溶剤のような揮発性触媒が共存する場所で発生する微細な局部腐食です。有機物が化学反応によりカルボン酸(蟻酸、酢酸など)を生成して腐食が進行します。
銅管断面が土中につくられた蟻の巣のような形となり、内外面が貫通して冷媒が漏えいしますが、この進行は極めて早い場合があります。そのメカニズムを図1に示します。
カルボン酸の生成元となる物質として、ロウづけ時に使用する酸化防止剤、建材や断熱材に含まれる接着剤、食品添加物(香味料、保存料など)、入浴剤や化粧品の芳香剤などがあり、身近にある多様な物質からカルボン酸がつくられます。直接、これらの物質が含まれていなくても、銅イオンが触媒となって酸化、還元反応を繰り返してカルボン酸を生成するケースもあるので注意が必要です。
通常、冷媒液管側は表面温度が高いために結露は起きないと考えられがちですが、一部の機種では膨張弁の位置により液管側であっても低温となり、断熱次第で結露して腐食が発生します(図2)。年間冷房系統では、いったん結露が発生すると乾く時間がないので特に注意が必要になります。
冷媒銅管の腐食防止策
①漏えい場所の特定
トーチ、センサなどを用いて漏えい場所を特定します。ロウづけ、フレア継ぎ手などの接続部からの漏えいでないことが確認できたら、断熱材の継ぎ目、つぶれ箇所、雨がかり、冷媒温度からみて断熱厚が不足している部分などを重点的に調べます。
②原因有機物の排除、結露の防止策
ほかに冷媒が漏えいしている場所がなくても、同じ環境下にあれば腐食進行中のおそれがあるので、配管を補修するとともに、カルボン酸の原料となっている資材を排除する必要があります。
また、断熱材のすき間の補修、つぶれ、絞りすぎの部分の修理、増し巻きなどを行い、断熱材の不具合による結露を防止します。
ラギング、スリムダクトなどのすき間はコーキングシールを施して雨水の浸入を防止します。
③耐食性を持つ配管材料への更新
通常のリン脱酸銅の数倍の耐食性を持つ材料が開発されたので、それらの配管の採用を検討することも考えられます。
④適切な施工
施工には以下の事項に注意します。
・配管交換時の資材の保管
雨ざらしにしない。
塗料(有機溶剤)の近くに保管しない。
厨房排気にさらさない。
・ロウづけ施工時の適切な酸化防止
・適切な断熱施工
配管の伸縮を配慮したすき間の発生防止。
窮屈な収納による断熱不良の防止。
冷媒温度(液管)の再確認と適正な断熱厚の確保。
上記の対策は蟻の巣状腐食以外でも有効と考えられます。銅管の腐食原因は種々あり、通気管からの硫化水素により硫酸腐食した事例や、食品施設でのイースト菌による腐食性ガスの発生事例などがあります。いずれの事例も水分の存在がポイントで、結露を防ぎ、銅管表面を乾燥状態に保つことで大半の腐食が抑制可能であると考えられます。



※「設備と管理」2016年11月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
このシリーズ
解決!設備の相談← 前の記事
天井のカビ発生防止策【設備の相談23】
次の記事 →
なし

