Q&A
設備管理におけるサーモグラフィの活用例【設備の相談20】
事例で解決!
2025.09.03
相談
サーモグラフィを用いた画像は便利そうですが、設備管理業務での具体的な用途を教えてください。
回答
電気設備~受変電設備や分電盤の点検
サーモグラフィ(写真1)は物体の表面温度の分布を広範囲に把握できるため、いわゆる「見える化」の代表選手と呼べるものです。今回は設備別の活用例を取り上げます。
電気設備の異常の有無を確認する作業において、通電中にできることは限られてきます。例えば、端子のネジの締めつけに緩みが生じていると、電路の接触面積の不足により抵抗が大きくなり、過熱の結果、焼損に至る場合があります。
停電作業であれば工具を用いて締めつけ状態の確認や増し締めができますが、作業箇所が多く、非常に手間がかかるため、ピンポイントで状態把握ができると便利です。
従来、サーモラベルを必要箇所に張って目視点検を行ったり、放射温度計を使用したりしていると思いますが、測定したいポイントが多い場合、サーモグラフィを用いて広範囲の温度分布を確認し(写真2)、その後、気になる箇所(写真3)について詳細に確認することで作業の手間を軽減できます。



熱源設備~配管保温の改善提案に向けた調査
機械室内の熱源機器や冷温水配管などで保温、断熱が不十分な箇所は意外と多く、これを改善することで放熱によるエネルギーロスを低減することができます。
これは、言葉にするのは簡単ですが、改善が必要な箇所を実際に特定するのは一筋縄ではいきません。
しかし、保温が必要な箇所と不要な箇所の見極めはサーモグラフィなら一目瞭然です。例えば、温水配管の場合、温度の数値で表示されるだけでなく、色の違いという視覚に訴える効果があるので、建物所有者に改善提案をするときは有効な手段となるでしょう(写真4)。

衛生設備~給湯配管の漏えい箇所の特定
壁内に埋設された横引きの給湯配管から漏水が発生し、壁面に染み出しているという状況下、サーモグラフィを使用したところ、温水が垂直に漏れている様子が一目瞭然だった事例があります。
温水や冷水など、周囲と温度差がある流体の漏えいにおける初動の探索に有効で、天井裏などの暗所の作業でも効果があると思います。
その他~外壁タイルなどの剥離状況の調査
剝がれかけた外壁タイルは壁面との間に「すき間」ができるので、正常なタイルと比較すると温度差が生じるといわれています。サーモグラフィを使用することで打診よりも安全に、なおかつ、簡易に異常箇所を発見できる方法として期待されています。
目視でも明らかに劣化だと判断できる部分にサーモグラフィを照射してみると、表層に剥離がある箇所が周囲より明るい(温度が高い)ことが確認できました(写真5)。サーモグラフィで問題箇所を確認できるほど周囲との温度差が生じるには、相応の空間(剥離による空気層)が必要になります。
また、調査する時間帯は日中よりも朝方のほうが良、不良箇所の温度差が大きくなることがわかりました。日射による温度上昇の早さに差があるためだと推測します。

サーモグラフィは高価なツールという印象もありますが、以前よりも低価格化が進み、さらにはスマートフォンで手軽に撮影できるアプリも登場し、極めて身近な存在となっています。業務での活用を検討する段階であるといっても過言ではありません。
※「設備と管理」2016年7月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
