Q&A
冷温水系統の水質改善事例【設備の相談21】
事例で解決!
2025.10.10
相談
冷温水配管系統の水質に不都合が生じています。排水を行わずに水質を改善する方法を教えてください。
回答
事例の概要
建物所有者から寄せられた相談に対し、環境保全と作業効率を勘案して「排水をしないフラッシング方法(凝集沈殿法)」で冷温水配管系統の水質改善を行った事例を取り上げます。
今回の事例の冷温水配管は4系統あり、合計の保有水量は約100m3で、設置してから約30年が経過していました。
初期フラッシング不足による初期不純物や経年劣化などに伴い、使用中に発生するサビなどの蓄積が冷温水配管内の水質悪化につながります。これを防ぐため、一般に初期の段階から配管系統への固定フィルタの設置や防錆剤の添加が行われます。
ところが、今回の事例では配管系統に固定フィルタが設置されず、防錆剤も添加されていません。このようなケースで配管内の水質を改善するには、初期フラッシングと同様に「水抜き排水~水張り~配管内フラッシング~水抜き排水」を何回か繰り返して浄化するのが一般的です。
しかし、この方法は水抜き、水張りを繰り返すことで溶存酸素が配管系統内に持ち込まれ、配管内部の腐食が懸念されます。さらに、配管系統の使用を停止しなくてはならないうえ、わずらわしい作業調整なども使用停止に伴って必要になります。なお、この事例では排水系統に排水できないという事情もありました。
そこで、配管系統の使用停止も排水も行うことなく、既存の冷温水配管のフラッシングができる「排水しないフラッシング方法」を提案しました。
排水しないフラッシングシステム
このシステムの概略を図1に示します。フラッシングする配管系統の一部を分岐して、フラッシング水処理装置に接続します。懸濁している配管内の水はフラッシング水処理装置で連続的に浄化され、処理後のキレイな水が配管内に戻されることで配管系統のフラッシングが行われます。凝集沈殿で除去された懸濁物はろ布でろ過され、産業廃棄物として廃棄します。
その特徴を列挙すると以下のとおりです。
・排水することなく配管フラッシングが可能
・フラッシング時間の短縮によるコスト削減(小規模物件で配管保有水量が少ない場合は搬出入時間のかからないバークフィルタを用いたシステムのほうがコストメリットが出ることもある)
・環境保全に配慮した技術
・法令遵守(亜鉛濃度が高い配管内の水は排出しない)
・フラッシング結果のみえる化(配管内の水の濁度を測定しながら水浄化処理を実施)
フラッシング水処理装置の仕様は表1のとおりです。
なお、フラッシングの効果は濁度計で計測して確認しますが、目標値は以下の理由から処理水の濁度で20度以下としています。
・工業用水の供給標準水質の濁度は20mg/L(≒20度)以下
・従来方法によるフラッシング完了時の配管内の濁度平均値が20度程度


冷温水配管系統の水質改善結果
排水しないフラッシング方法により、冷温水配管系統の水(約100m3)を排水しないで水質の改善に成功しました。その結果を図2、写真1に示します。処理前の濁度は350度弱でしたが、処理後には約10度まで改善しました。
今回の排水しないフラッシング方法の採用により、冷温水配管系統の使用停止をしないで他の設備との調整負荷を軽減するとともに、環境負荷低減も達成することができました。


※「設備と管理」2016年8月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
このシリーズ
解決!設備の相談関連記事

License

Q&A

Q&A

License

Q&A

How to

Q&A

Q&A