Q&A
「Noコスト」で行う運用改善による省エネ事例【設備の相談26】
事例で解決!
2026.06.29
相談
コストをかけずに省エネを行いたいのですが、どうしたらいいでしょうか? 何かいい方法があったら教えてください。
回答
「Noコスト」な省エネの実践
省エネには、どのような方法があるか考えてみると、以下の3つが挙げられます。
①設備投資、設備更新による省エネ
②設備のチューニングによる省エネ
③運用改善による省エネ
これらの方法には、それぞれ特徴があります。
①は効果的ですが、設備の新設および改修などで費用が発生します。一方、②は費用が軽微、あるいは発生しない場合がありますが、専門的な知識が必要となります。
これらに比べて、③は費用をかけずに、さらには設備の専門家でなくても実践できます。
今回は事例を踏まえながら「③運用改善による省エネ」を取り上げます。
現場を歩き、現状をチェック
運用改善による省エネで最も大切なことは現場を歩き、現状を把握することです。目でみて状態をチェックすることが必要ですが、ただチェックするだけでは不十分で、何が起きているかメモし、それを一覧表にして関係者全員で共有することが重要になります。
疑問から生まれた省エネ活動
以前、総務部門に所属していた筆者は、自社ビル(BEMSを導入している最先端の省エネビル)の運用管理を担当していましたが、省エネのシロウトの発想で、機械任せで問題ないのか疑問を感じ、地下にある機械室から最上階まで歩いて現状を調べてみることにしました。
設備の整理で問題が浮き彫り
現場を歩く前に、どのフロアに、どんな設備があるか確認しようと思いました。すべての設備を対象にするのは難しいため、エネルギーの使用量が多いと予想される空調設備に絞ってリスト化し、使用方法をチェックしました。
この作業を行って現場に入ると、さまざまな問題が浮き彫りとなりました。
一例として、ある来客ブースではオープンの2時間半前から空調を運転していました。念には念を入れて来客のための環境づくりを行っていたわけですが、現在はオープン30分前からの運転に変更しています。お客さんにとっては同じ室温環境なので、毎日、2時間も地球温暖化に加担していました。
すべてのフロアを何度も回り、リスト化したのが表1です。
また、あるフロアでは妙に暑く、別のフロアでは妙に涼しい場所があることに気づき、暖房期、中間期、冷房期の目標温度を何℃にするか、目安となる温度設定のリストも作成しました(表2)。
これらのリストを作成し、見直しを行ったことで実質的な省エネ活動が始まり、総務部門とビル管理会社が同じ情報を共有することにより、運用改善による省エネの大きな第一歩となりました。


クレームは改善の近道
再び地下から最上階まで歩き、省エネのネタを探しました。次に注目したのは照明でした。
まずは、筆者が執務しているフロアと、その上下階の廊下の照明を間引いて半分にしました。仕事上、大きな問題がないと思いながら、クレームがあるかどうか、あるとしたら、どんな内容か、半分は実験的な考えで導入しました。
すると、予想外のところからクレームがありました。上の階が社長室だったため、注意を受けたのです。
すぐに外した照明を戻したのですが、数カ月後、社長が執務フロアに入ってきて「このビルの廊下は、なんでこんなに明るいんだ」との指摘を受けました。
千載一遇、天から贈りものが降ってきたのです。これを社長命令と考え、全フロアの廊下の照明を間引きすることにしました。その前に各フロアをビル管理担当者と回り、明るすぎる場所、暗くしてもいい場所を確認しながら間引きする位置を確定していきました。
気がつくと、外部照明も含めて、1年間で1364本の蛍光灯の間引きに至りました。
1つ1つの積み重ねが大きな成果につながる
その後、社員も自分たちが働く事務スペースの不要な照明を間引くようになり、数年後、その本数を図面で確認すると2841本になっていました。
省エネ効果は1年間で21万6468kW・hになり、同ビルの冬の半月分の電力量に相当することがわかりました。わずか数十Wの照明ですが、1つ1つの積み重ねが大きな成果となりました。
何よりも大切なことはコツコツと愚直に行った活動が社員に伝わり、大きな成果を生みだしたことです。コストをかけない運用改善の省エネだけで、3年間で24%のエネルギーを削減し、累計で約1億円のコストダウンを達成しました。
※「設備と管理」2017年1月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
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