Q&A
落雷による給水設備のリレー故障事例【設備の相談25】
事例で解決!
2026.05.25
相談
避雷設備がない共同住宅を賃貸経営しているのですが、落雷による設備の故障には、どのような事例がありますか。また、住宅に有効な落雷対策があったら教えてください。
回答
柱上変圧器の落雷焼損の影響
共同住宅で発生した落雷によるリレーの故障と、その対応事例を取り上げます。
夏の夕方、東京都内で落雷があり、電力会社の柱上変圧器(写真1)が焼損しました。変圧器の焼損によって送電地域一帯の動力系統が停電しましたが、その共同住宅の管理者が停電に気づいて各所に連絡を始めたのは深夜になってからのことでした。
管理者が深夜まで停電に気づかなかった理由のひとつは、動力系統のみの停電であり、共同住宅の電灯やコンセントには影響がなかったためです。
もうひとつは、屋上の高置水槽に残水があり、動力系統の揚水ポンプが起動しなくても、すぐに断水とはならず、深夜に高置水槽の水を使いきって、そこで初めて断水となって動力系統の停電が判明したからです(図1)。
電力会社による復電と揚水ポンプの起動
管理者から連絡を受け、共同住宅に到着して停電の状況を聞き取り、電力会社に連絡しました。深夜、電力会社によって焼損した柱上変圧器が交換されたあと(写真2)、動力系統の復電が確認できたので給水設備の復旧を試みました。
給水設備が正常であれば、高置水槽の水位が一定レベルまで下がると揚水ポンプが自動運転し、受水槽から高置水槽に水が補給されます。また、水位がさらに低いレベルになると減水警報が作動し、管理者に異常を知らせます。
ところが、高置水槽にはほとんど水が残っていない状態で復電したにもかかわらず、減水警報は作動することなく、揚水ポンプは自動で起動しませんでした。
さらに、手動運転で満水状態にしても警報が作動しないことから、計装系リレー関係の故障と考え、復旧作業に取りかかりました。
しかしながら、この共同住宅には予備のリレーがなく、すぐに完全復旧させるのは困難でした。深夜といっても断水したままにはできず、ポンプ室と高置水槽に作業者を配置して、連絡を取りながら手動運転で高置水槽に揚水しました。
その間に最寄りの事業所でリレーを調達し、交換作業と動作試験を行いました。
夜を徹しての対応になりましたが、朝までに給水設備を完全復旧させました。
共同住宅の落雷対策
高圧配電線路には架空地線の避雷設備が設置されていますが、柱上変圧器が落雷焼損した場合、誘導雷が配電系統に波及することでリレーなどが故障するおそれがあります。
そこで、この事例の共同住宅では誘導雷対策として電源用SPD(サージ保護デバイス)を設置しました。直接的な雷の被害を受けなくても、近くに雷の大電流が流れた場合、電磁誘導で発生するサージなどでPCや電子精密機器が破損するおそれもあるので、SPD設置やシールド対策は有効と考えられます。
なお、一般に20m以下の建物では建築基準法による避雷設備(避雷針)の設置義務はありませんが、雷の多発地域では設置を検討するといいでしょう。
さらに、共同住宅の設備などを早急に復旧するために、日常から緊急対応できる専門事業者(電気、設備、建築)とのホットラインを確保しておくことをオススメします。



※「設備と管理」2016年12月号に掲載
(回答者/TMES設備お悩み解決委員会)
このシリーズ
解決!設備の相談
