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電験取得のための計算の基礎【電気数学のすゝめ9】
電験取得のための第一歩
2024.07.05
9限目 比~基礎編②~
先生 前回に続いて、比の基礎的な内容を取り上げます。まずは、次の問題を考えてみよう。「80kgの金塊を親分と子分で5:□になるように分けたところ、子分は30kgになりました。□に入る数字は?」というものだけど、どうだろう?
生徒 う~ん、子分が30kgだったら、親分の取り分は80-30=50kgになります。だから、「親分の取り分:子分の取り分=50:30」になります。でも、問題は「5:□」だから答えが違う……。
先生 うん、限りなく正解に近いよ。あとは比を簡単にするだけなんだ。
生徒 比を簡単にする?
先生 そう。できるだけ小さい整数の比に整理することで、ようするに、約分と同じことだよ。「50:30」の場合、10で割ると小さい整数の比にできそうだよね。
生徒 「50:30」だから、それぞれ10で割ると「5:3」だ。そうなると、□に入る数は3です!
先生 うん、正解だ。それでは、同じ問題で質問ね。親分は子分の何倍多く金塊をもらうことになる?
生徒 え~っと……。
先生 ここで大切なことが比の値なんだ。例えば、
という比があったとき、
が
の何倍になっているかを表す数が比の値なんだ。
生徒 どうやって求めるんですか?
先生 比の値は、比の記号「:」の前の数を、うしろの数で割った数のことなんだ。つまり、
なら、
のこと。「:」を「÷」に置き換えるだけで求められるよ。
生徒 それなら、この問題の場合、5:3の比の値は
だ。ようするに、親分は子分の
倍多く金塊を受け取ることになる!
先生 そういうことだ。比のルールについて、もう少し解説しよう。

先生 黒板に注目してみよう。①の3:2の場合、②の6:4の場合、③の9:6の場合、どれも比の値は
で同じだよね。
生徒 うん、本当だ。それぞれの数は2倍、3倍しているのに、比の値は同じです。
先生 つまり、3:2=6:4=9:6と表すことができる。
だったら、
と
に同じ数をかけても
は等しくなる。もちろん、同じ数で割っても同じ。比が等しいということは、比の値が等しいということだ。そして、比で最も重要なことが「内項の積と外項の積は等しい」という関係なんだ。
生徒 内項と外項って、なんですか?
先生
で考えてみようか。内項は「
」と「
」のことで、外項は「
」と「
」のことを指すんだ。そして、積は「かけ算」のこと。つまり、内項の積は比の内側をかけた数値「
」、外項の積は比の外側をかけた数値「
」のことで、これらの2つの数値は等しいから「
」という式が成り立つんだ。
生徒 すべての比で成り立つんですか?
先生 よし、それじゃあ、3:2=6:4で確かめてみよう。
生徒 はい。まず、内項の積は2×6=12で、外項の積は3×4=12になります! ホントだ…… って、これが何の役に立つんですか?
先生 ものすごく便利なんだけど、まだわからないか……。それじゃあ、次の問題に取り組んでみよう。
「親分と子分は4:3の比で取り分を決めました。親分の取り分が12kgだったとき、子分の取り分は何kgになりますか?」
生徒 え~っと、親分が12kgで「4」になって、子分の取り分を求めるから□とすると、比の数は「3」に該当するから…… あっ、全体の金塊が何kgかわからないから計算できない!
先生 そうなるよね。でも、内項の積と外項の積を使えば、簡単に答は導くことができるんだ。親分と子分の取り分の比は4:3で、実際、親分の取り分は12kgだから、比で表すと「4:3=12:子分の取り分(□)」になる。ここから、内項の積は「3×12=36」、外項の積は「4×□」と表すことができる。内項の積と外項の積は等しいから「36=4×□」となって、4に何かをかけて36になるから、□は9とわかるよね。つまり、子分の取り分は9kgというわけだ。
生徒 うん、カンタンです!
先生 それじゃあ、確実にマスターするために練習問題を解いて、比の基礎は終了にしよう。
生徒 はい、ありがとうございました。
練習問題
次の問いに答えなさい。
(1)コーヒーと牛乳を9:4の比で混ぜてコーヒー牛乳をつくります。コーヒーが36dLに対して、牛乳は何dL必要になるか求めなさい。
(2)歯車AとBがかみ合っています。Aが5回転するとBは3回転します。Aが25回転したとき、Bの回転数を求めなさい。
(3)学校の校庭で男子が14人、女子が63人遊んでいます。男女の比を最も簡単な比で表しなさい。
(4)あるお店のお客さんは男女の比で2:3でした。その日の女性客は66人です。男性客は何人か求めなさい。
(5)新幹線のある車両の空席は8席で、満席のときの16%にあたります。この車両の全座席数を求めなさい。
答
(1)コーヒー:牛乳=9:4
9:4=36:□
内項の積=外項の積より、
4×36=9×□ 144=9×□ □=16
したがって、牛乳は16dL必要になる。
答 牛乳16dL
(2)Aの回転数:Bの回転数=5:3
5:3=25:□
内項の積=外項の積より、
3×25=5×□ 75=5×□ □=15
したがって、Bの回転数は15回転となる。
答 15回転
(3)男子:女子=
答 2:9
(4)男性客:女性客=2:3
2:3=□:66
内項の積=外項の積より、
3×□=2×66 3×□=132 □=44
したがって、その日の男性客は44人となる。
答 44人
(5)空席:全席=16:100
8:□=16:100
内項の積=外項の積より、
□×16=8×100 □×16=800 □=50
したがって、この車両の全座席数は50席と求めることができる。
答 50席
(講師/村山 慎一)
電気数学のすゝめ 記事一覧
- 【第1回】電験取得のための四則演算
- 【第2回】電験取得のための分数の四則演算
- 【第3回】電験取得のための分数の四則演算 その2
- 【第4回】電験取得のための計算の基礎
- 【第5回】電験取得のための計算の基礎
- 【第6回】電験取得のための計算の基礎
- 【第7回】電験取得のための計算の基礎
- 【第8回】電験取得のための計算の基礎
- 【第9回】電験取得のための計算の基礎
- 【第10回】電験受験に役立つ比の計算
- 【第11回】続・電験受験に役立つ比の計算
- 【第12回】小数、百分率、パーユニット法、パーセントインピーダンスを学ぶ
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