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平方根の有理化と虚数を学ぶ【電気数学のすゝめ15】
電験取得のための第一歩
2025.02.17
15限目 平方根の有理化と虚数
先生 前回、平方根について学習したね。√2は、どんな数だったか覚えているかな?
生徒 2乗して2になる数です。
先生 じゃあ、およその値は覚えているかな? 小数点3ケタまででいいよ。
生徒 1.414です。
先生 うん、そうだね。もう1問、2乗すると3になる数は?
生徒 ±√3です!
先生 正解! 最後は引っかけ問題だったけど、しっかり身についているね。それじゃあ、今回のテーマについて解説していこう。

先生 まずは「有理化」だ。
生徒 名前からして難しそう……。
先生 やることは簡単だよ。分母にある「√」をなくしてしまうだけなんだ。
生徒 う~ん。どうすればいいんですか?
先生 まず、最も単純な有理化の例を解説しよう。黒板の流れはわかるかな?
生徒 分子と分母に√aをかけていますよね。
先生 そうだね。例えば、
を有理化する場合、分母にある√5を「
」というように分子と分母にかけるんだ。
生徒 分子となんで分子と分母に√5をかけるんですか?
先生
はいくつになる?
生徒 1です。あっ、そうか。分子と分母が同じ数なら値は変わらないか!
先生 そう、だから等号が成り立つんだ。計算はできるかな?
生徒 「
」です!
先生 うん、正解だ。分母の「√」がなくなったでしょう。
生徒 そうですけど、なんで有理化が必要なんですか?
先生 例えば「√2≒1.41421356」となるよね。
を計算しようとすると、有理化しない場合は「
」を計算しなければならない。でも、有理化すると「
=1.41421356÷2=0.707106781」と求めることができる。かなり計算がラクになったと思わない?
生徒 なるほど……。有理化の意義はわかったんですけど、なんで「有理化」という名前がついているんですか?
先生 無理数である「√」を有理数にするから有理化というんだ。
生徒 そういうことなんですね。
先生 よし、まずは練習問題に取り組んでみよう。
練習問題
次の式の分母を有理化して表しなさい。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
答
(1)
(2)
(3)
別解として、
と求めることができる。
(4)
(5)
(6)
別解として、
と求めることができる。

先生 ここからは「有理化その2」に入るよ。
生徒 は~い。
先生 次は「分母に√の和や差が含まれている場合の有理化」を考えてみよう。例えば「
」は、どうすればいいと思う?
生徒 分母の√2+√3を分子と分母にかけると思います。「
」で分母の「√」は消せるはずです。
先生 うん。それでは「(√2+√3)2」を計算してみようか。
生徒 わかりました。え~っと「(√2+√3)2=(√2)2+2(√2×√3)+(√3)2=2+2√6+3=5+2√6」です…… あれ、√が残っちゃった。
先生 ヒントは展開の公式。「√」を消すには、どうすればいいかな?
生徒 あっ、わかった! 「(a+b)(a-b)=a2-b2」を使うんだ!!
先生 うん、正解だ。これを踏まえて「
」の有理化をやってみようか。
生徒 分子と分母に「√2-√3」をかけて「
」です!
先生 それでは、「
」は、どうする?
生徒 分子と分母に「√2+√3」をかけます!
先生 うん、そうだね。よし、有理化をマスターするために練習問題に取り組もうか。
生徒 はい!
練習問題
次の式の分母を有理化して表しなさい。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
答
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)


先生 さて、次は2乗して「-1」になる数を考えてみようか。
生徒 えっ、そんな数はあるんですか?
先生 実はね、ないんだよ。
生徒 へっ???
先生 だからね、つくるんだよ。黒板のように虚数という数を定義して、それを「j」と表すんだ。以前にも書いたけど、数の分類で「⑥虚数」に該当する数だね。
生徒 勝手につくってもいいんですか?
先生 何でもいいわけではないよ。新しい概念として定義するには、例えば、四則演算ができるとかルールが必要なんだ。
生徒 ふ~ん、そうなんですね。ところで、素朴な疑問なんですけど、なんで虚数は「j」で表すんですか?
先生 虚数を「j」で表すのは電気の世界でのルールなんだ。数学の世界では「i」を使って、想像上の数字という意味で「imaginary」の「i」が由来とされているんだけど、電気の世界で「i」は電流を意味するでしょう。紛らわしいから、アルファベットの順番で「i」の次の文字ということで「j」になったようなんだ。
生徒 そうなんですね。
先生 実数と虚数を組み合わせた数を複素数といって、数の分類の⑦のことだね。これで、すべての数を学習したことになるよ。
生徒 これで全部なんですね。意外と少ない。
先生 今回、複素数は基本的な計算だけを取り上げるけど、こんなものじゃないからね。「複素数平面」「オイラーの公式」「インピーダンス」と、より複雑になっていくテーマはあるから、まあ、楽しみにしていてよ。
生徒 先生、脅かさないでくださいよ。
先生 基礎から1つずつ取り組めば大丈夫。さあ、まずは複素数の基本からやろう。
生徒 は~い。

先生 それでは順番に解説していこうか。電気の世界では複素数を「
」のように変数の上に「・」をつけて表して、実数の部分を実部、虚数の部分を虚部と呼ぶようにしているんだ。ここまではわかるよね?
生徒 はい。
先生 うん。次は共役複素数で、これは実部と虚部が同じ値で、虚部の符号がプラスとマイナスのもの同士のことを指すんだ。例えば「1+j2」の共役複素数は「1-j2」で、当然、逆も成り立つよ。
生徒 なるほど。大丈夫です。
先生 最後は四則演算。たし算、ひき算は実部同士、虚部同士を分けて計算するんだ。例えば、たし算は「(1+j3)+(2+j5)」なら「(1+2)+j(3+5)=3+j8」となって、ひき算は「(7+j8)-(2+j3)=(7-2)+j(8-3)=5+j5」と求めることができる。わかるかな?
生徒 実部と虚部は一緒にしてはいけないんですね。√の計算に似ています。
先生 いいところに気がついたね。わり算も計算方法は似ているかな。
生徒 そうなんですね。
先生 その前に、かけ算に触れよう。これは式を展開するだけだけど、注意すべきポイントは「j2=-1」になること。例えば「(1+j2)×(3+j4)=1×3+1×j4+j2×3+j2×j4=3+j4+j6+j2(2×4)=3+j(4+6)+(-1)×8=3-8+j10=-5+j10」となって「j2」に「-1」を代入して計算するんだ。
生徒 文字式だと複雑だけど、数字だと式を展開しているだけだから暗記しなくても対応できそうです。
先生 そうなんだ。方法さえ覚えれば大丈夫だよ。それじゃあ、最後にわり算だ。これは「√の有理化」と基本は同じ。共役複素数を分子と分母にかけて、分母を実数で表していることがポイントだ。
例えば「
」と表すことができるよ。
生徒 そうか、共役複素数同士のかけ算は実数になるんですね!
先生 うん、そういうこと。これは重要な計算方法だから、しっかり対応できるように覚えておこう。それじゃあ、今回はここまで!
生徒 はい、ありがとうございました!
(講師/村山 慎一)
電気数学のすゝめ 記事一覧
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- 【第2回】電験取得のための分数の四則演算
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- 【第5回】電験取得のための計算の基礎
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- 【第10回】電験受験に役立つ比の計算
- 【第11回】続・電験受験に役立つ比の計算
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- 【第13回】さまざまな文字式の計算を学ぶ
- 【第14回】指数と平方根を学ぶ
- 【第15回】平方根の有理化と虚数を学ぶ