License
電験受験に役立つ比の計算【電気数学のすゝめ10】
電験取得のための第一歩
2024.08.01
10限目 比~応用編①~
生徒 比を学習して以来、周りをみると、いろんなところに比が使われていました。調味料の配分やカードなんかも比で表示されていたなんて!
先生 案外と生活に関係しているんだよね。もちろん、電気にも関係しているよ。
生徒 じゃあ、電験三種にも必要ってこと?
先生 もちろん! 分圧とか分流とか、いろいろな場面で必要になる知識だよ。せっかくだから、実際に計算問題を解いてみよう。
練習問題
図のような回路がある。この回路の電源電圧Vは30Vで、また、抵抗R1に加わる電圧V1と抵抗R2に加わる電圧V2の比はV1:V2=7:3であった。このとき、電圧V1、V2を求めなさい。
答
V1:V2=7:3だから、
[V]
[V]
したがって、V1=21V、V2=9V
答 V1=21V、V2=9V
先生 うん、正解。要領よく計算できたね。それじゃあ、ここで、この問題と答に着目してほしいんだ。実は、重要なルールが隠されているんだけど、わかるかな?
生徒 重要なルール? う~ん……。
先生 まず、答はV1=21V、V2=9Vだから、2つを加えると21+9=30になる。これはV1+V2=30=Vと同じ値になることがわかるよね。ここから、直列回路の場合、それぞれの抵抗にかかる電圧の和は電源電圧になると導くことができる。これがキルヒホッフの第2法則(電圧則)なんだ。
生徒 比の計算だから、何となく解いただけなんだけど、そんなルールがあったんですね。
先生 うん。直列回路の場合、電流は回路のどこでも同じ大きさになるんだよ。そして、抵抗の場合は……。
生徒 抵抗はわかります! 合成抵抗で勉強しました。それぞれの抵抗の値の和が全体の抵抗の値ですよね?
先生 正解! しっかり身についているね。実は、もうひとつ重要なルールがあるんだ。実際に抵抗値を求めて確認してみよう。電流I=30Aとして、練習問題の回路の抵抗R1、R2を求めてみよう。抵抗はオームの法則
で求めることができるよね。
生徒 R1は
[Ω]、
R2は
[Ω]となります。
先生 それじゃあ、R1とR2の比は?
生徒 比は、
です…… あっ、抵抗の比は電圧の比と同じだ! でも、だからなんだ?
先生 これを覚えておけば、それぞれの抵抗値と電源電圧しかわかっていなくても、それぞれの抵抗にかかる電圧がわかるんだよ。これが分圧の法則。抵抗が電圧を分けているという意味なんだ。
生徒 電流を求める手間が省けるんですね。スバラシイ!
先生 ま、まあね……。
生徒 先生、このルールは並列回路でも同じなんですか?
先生 並列回路では別のルールがあるんだ。よし、実際に練習問題を解いてみようか。
練習問題
図のような回路がある。この回路全体に流れる電流Iは30Aで、また、抵抗R1に流れる電流I1と抵抗R2に流れる電流I2の比はI1:I2=3:2であった。このとき、電流I1、I2を求めなさい。
答
I1:I2=3:2だから、
[A]
[A]
したがって、I1=18A、I2=12A
答 I1=18A、I2=12A
先生 さて、ここから何かわかったかな?
生徒 並列回路のときは、それぞれの抵抗を流れる電流の和が全体の電流値だ!
先生 そういうことだ。I=I1+I2が成り立っているよね。これをキルヒホッフの第1法則(電流則)と呼ぶんだ。それぞれの抵抗にかかる電圧と電源電圧は等しくなる。そして、抵抗は……。
生徒 並列回路は和分の積で合成抵抗Rを求めたけど、規則性なんてあったかな?
先生 じゃあ、確かめてみよう。抵抗はオームの法則
で求めることができるよね。ここで電圧V=30Vとして計算するとどうなるかな?
生徒 R1は
[Ω]で、R2は
[Ω]となります。直列回路のときみたいに比で表現すると、
です。
先生 それじゃあ、I1:I2はどうなるかな?
生徒 18:12=3:2です…… あっ、電流の比の逆になっている!
先生 並列回路の場合、抵抗と電流にはI1:I2=R2:R1の関係性があるんだよ。
生徒 つまり、抵抗の比がわかれば、それぞれの抵抗に流れる電流がわかるってことですか?
先生 うん、そういうこと。これを分流の法則といって、抵抗が電流を分けているんだよ。最後に練習問題に取り組んで終わりにしよう。
生徒 はい、ありがとうございました!
練習問題
1.図のような回路がある。以下の問いに答えなさい。
(1)抵抗R2に加わる電圧V2を求めなさい。
(2)抵抗R1の抵抗値を求めなさい。
(3)抵抗R1と抵抗R2の合成抵抗Rを求めなさい。
(4)回路全体に流れる電流Iを求めなさい。
2.図のような回路がある。以下の問いに答えなさい。
(1)抵抗R1に流れる電流I1を求めなさい。
(2)抵抗R1と抵抗R2の合成抵抗Rを求めなさい。
(3)この回路全体の電流Iを求めなさい。
(4)抵抗R1、R2に加わる電圧V1、V2、電源電圧Vを求めなさい。
3.図のような回路がある。以下の問いに答えなさい。
(1)抵抗R1に加わる電圧V1を求めなさい。
(2)抵抗R2に流れる電流I2を求めなさい。
(3)この回路全体の電流Iを求めなさい。
(4)抵抗R1と抵抗R2の合成抵抗Rを求めなさい。
(5)抵抗R3の抵抗値を求めなさい。
(4)この回路全体の合成抵抗Rを求めなさい。
答
1
(1)V2=V-V1=45-15=30[V]
(2)V1:V2=R1:R2より、15:30=R1:8
内項の積=外項の積より、
30×R1=15×8=120、R1=4[Ω]
(3)R=R1+R2=4+8=12[Ω]
(4)
[A]
答(1)30V(2)4Ω(3)12Ω(4)
A
2
(1)I1:I2=R2:R1より、I1:10=8:10
内項の積=外項の積より、
10×8=10×I1、80=10×I1、I1=8[Ω]
(2)
[Ω]
(3)I=I1+I2=8+10=18[A]
(4)
[V]
答(1)8Ω(2)
Ω(3)18A(4)80V
3
(1)V1=I1×R1=3×6=18[V]
(2)抵抗R2に加わる電圧V2はV1に等しいから、
[A]
(3)I=I1+I2=3+6=9[A]
(4)
[Ω]
(5)抵抗R3に加わる電圧をV3とすると、V3=V-V1=30-18=12[V]となり、V1:V3=R4:R3より、18:12=3:2=2:R3と求めることができる。
ここから内項の積=外項の積より、
2×2=3×R3、4=3×R3
したがって、
[Ω]
(6)
[Ω]
別解として、オームの法則より、
[Ω]
答(1)18V(2)6A(3)9A(4)2Ω(5)
Ω(6)
Ω
(講師/村山 慎一)