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指数と平方根を学ぶ【電気数学のすゝめ14】
電験取得のための第一歩
2024.12.10
14限目 指数と平方根
先生 前回、文字式と指数について学習したけど、覚えているかな?
生徒 もちろんですよ!
先生 それじゃあ、復習してみようか。
練習問題
次の文字式を計算しなさい。
(1)a3×a5 (2)a9÷a4 (3)(a2)6
(4)b8÷b8 (5)c2÷c7
(6)
÷b3
答
(1)a3×a5=a3+5=a8
(2)a9÷a4=a9-4=a5
(3)(a2)6=a2×6=a12
(4)b8÷b8=b8-8=b0=1
(5)c2÷c7=c2-7=c-5=
(6)
÷b3=
×
=
=
=
先生 うん、正解だ。指数の計算は大丈夫そうだね。
生徒 正直、(5)と(6)は自信がありませんでした。c2-7を計算するのか、
だったか思い出せなくて……。
先生 よし、もう一度、復習してみようか。難しく考える必要はないよ。シンプルにa-1=
、a-2=
と表しているだけ。例えば、a5÷a7を計算するなら、a5÷a7=a5-7=a-2=
となるよね。
生徒 意外とルールが多いんですね。なんで「a-2=
」となるんですか?
先生 確認してみよう。a5÷a7=
=
×a=
となるよね。一方、指数で計算するとa5÷a7=a5-7=
a-2だ。したがって、a-2=
と求めることができる。
生徒 そうか、分数で考えればいいんだ!
先生 そう。a7でわるということは、
をかけることと同じなんだ。(6)も同じように考えると答のとおりに求められるよ。
生徒 これで指数にマイナスがついても自信を持って計算できます!
先生 実は、指数が分数になることもあるんだよ。
生徒 ええっ! ややこしそうだ……。
先生
とか、
とか出てくるよ。
生徒 どうやって計算するんですか?
先生 こういった値を求めるケースは少ないから安心していいよ。ただ、平方根は電験三種に頻出するから、しっかり理解したいよね。
生徒 はい! ところで、先生、平方根って?
先生 うん。例えば、√2(ルート2)なんて言葉、聞いたことないかな?
生徒 √(ルート)は習ったことはあります。どんな意味だったっけ……。
先生 √2は2乗して2になる数のことだよ。ようするに、√xは2乗してxになる数のことを表しているんだ。
生徒 だんだん思い出してきました。それにしても、そんな複雑な数をつくらなくても……。
先生 √の発見は、紀元前500年前のピタゴラスの時代までさかのぼるんだ。でもね、この時代は√の存在は秘密にされていたんだよ。
生徒 えっ、なんでですか?
先生 ピタゴラスにとって都合の悪い概念だったからだよ。理由はあとで話すとして、まずは、どのように√が発見されたのかを説明しよう。「ピタゴラスの定理」は知っているよね? 別名で「三平方の定理」だ。
生徒 はい! 「直角三角形ではa2+b2=c2が成り立つ」でしたよね?
先生 うん、そうだ。例えば、a=3、b=4、c=5やa=5、b=12、c=13なら、三平方の定理が成り立つのはわかるよね。
生徒 それぞれ代入すると「32+42=9+16=25=52」「52+122=25+144=169=132」になります!
先生 ところが、ピタゴラスの弟子が「a=1、b=1のとき、cはどうなるのですか?」と質問をしたといわれているんだ。
生徒 「12+12=2=c2」だ。だから2乗して2になる数が必要になったんですね。
先生 うん。でも、ピタゴラスが教えていた数には√の概念が含まれていなかったんだ。このことが世間にバレたら、いままで説いてきた教えがウソということになってしまう。
生徒 それで、ピタゴラスは?
先生 一説によると、その弟子を粛清して√の概念を隠ぺいしたともいわれているんだ。
生徒 うわっ、コワイ!
先生 皮肉にも、ピタゴラスの定理が、彼が教えていた数の概念を揺るがすことになってしまったんだよね。
生徒 そうなんですね。
先生 1限目で「自然数」や「整数」といった数の分類を取り上げたけど、覚えているかな?
生徒 やった記憶はあるんですけど……。
先生 わかった。もう一度、整理してみようか。
先生 「有理数」と「無理数」という分類に注目してみて。当時、ピタゴラスが考えていた数は「有理数」で、√は「無理数」になるんだ。だから、ピタゴラスは困ったんだよ。
生徒 有理数と無理数って、何が違うんですか?
先生 有理数は分数で表すことができる数で、無理数はできない数。この「分数で表すことができない」というのは、実は極めて不思議な性質なんだ。
生徒 そうなんですね……。最初の黒板に「
=√a」ってありましたけど、なぜ、このように表すんですか?
先生 うん、いい質問だ。√aは2乗してaになる数だよね。√aがaの何乗なのかを知りたいから、とりあえず「√a=am」としておこう。このmがわかれば、√aがaの何乗なのかわかるよね。
生徒 わからない値があったら文字式を利用すればいいのか!
先生 この考え方は方程式を立てるときの基本になるから覚えておくといいよ。
生徒 はい!
先生 √aの定義は覚えているかな?
生徒 「√aは2乗してaになる数」です。
先生 うん、正解だ。そうなると「√a=am」から「(√a)2=(am)2=a」が成り立つよね。ここで「(am)2」は、どのように変形できる?
生徒 指数の法則から「(am)2=a2m」になります。
先生 そうだね。一方で「a=a1」と表すことができるよね。これをまとめると「(√a)2=(am)2=a2m=a=a1」となる。ここで、アンダーラインを引いた部分に注目して。「a2m=a1」となったとき、mの値はわかるかな?
生徒 え~っと、指数を比べればいいから2m=1で、m=
だ!
先生 だから、「√a=
」になるんだ。
生徒 わかりました!
先生 さて、前置きが長くなったけど、平方根「√」について本格的に触れていこう。
生徒 はい。
先生 2乗してaになる数を「aの平方根」と説明したけど、例えば、2乗すると9になる数はわかる?
生徒 これはカンタン。3です!
先生 う~ん、惜しい!
生徒 えっ、なんで?
先生 3だけじゃなくて、-3も2乗すると9になるよね。だから、答は3と-3なんだ。
生徒 う~っ、引っかけ問題じゃないですか。
先生 引っかけているわけじゃないんだけどね……。二次方程式の性質がわかれば、こうした問題にも確実に対応できるようになるよ。いまの時点では「平方根は?」との問題には、プラスとマイナスの2つあると覚えておくといいよ。
生徒 は~い。
先生 それじゃあ、練習問題で確認しよう。
練習問題
次の文章が正しいか誤りか答えなさい。誤っている場合は正しい答を求めなさい。
(1)16の平方根は4である (2)
(3)
(4)
答
(1)誤り。16の平方根は±4となる(平方根はプラスとマイナスの2つ)。
(2)誤り。
(3)正しい。
(4)誤り。
先生 次は平方根が、どの程度の大きさになるか考えてみようか。
生徒 計算するんですか?
先生 √の計算方法はあるけど、それは知らなくても大丈夫。まずは、よく使う平方根の値を覚えよう。
生徒 また暗記か……。
先生 でもね、有名な語呂合わせがあるから大丈夫だよ。「一夜一夜に人見ごろ」って聞いたことない?
生徒 あります!
先生 これは√2の語呂合わせで、ほかに有名な値は「√3=1.7320508(人並みにおごれや)」「√5=2.2360679(富士山麓にオウム鳴く)」があるよ。
生徒 この3つなら知っています。
先生 通常、語呂合わせのケタ数まで計算することはないけど、小数点4ケタくらいまではスラスラと書けるようにしたいね。
生徒 はい!
先生 さて、今度は平方根の大きさを考えてみようか。例えば、√2の値を暗記していなかったら、どうやって大きさがわかるかな?
生徒 う~ん。
先生 まずは、平方根の定義に戻ってみようか。どんな定義だった?
生徒 2乗して2になる数です。
先生 そうだね。2乗すると√のなかの数字が出てくるから、そうなると、いままで扱ってきた数(有理数)と比較ができると思わない?
生徒 そうか! でも、どの数と比較すればいいんだろう。
先生 できる限り正確な値を求めたいから、√2に近い数値と比較したいよね。まず、√2よりも大きくて、√2に近い整数を考えよう。さて、何かわかる?
生徒 3、ですか?
先生 その根拠は?
生徒 2より大きいからです。
先生 惜しい! 考え方は正しいよ。それじゃあ、2と√2は?
生徒 え~っと……。
先生 まずは、それぞれの数を2乗してみてよ。
生徒
で、22=4だから、2<4になって……。
先生 今度は√をつけてみて。
生徒
で、
だから、
だ!
先生 そうだね。これは2乗した値を、ある程度…… そうだな、1から10までは把握しておくと便利だよ。
生徒 九九でやったからバッチリです!
先生 これを覚えておくと、√2や√3が2より小さいことがわかるよね?
生徒
で、
となるからです。
先生 うん、正解だ。それじゃあ、√2より小さくて最も大きい整数は?
生徒 1です。
となるからですよね?
先生 しっかり理解しているみたいだね。確認のため、練習問題に取り組んでみようか。
練習問題
√2、√3、√5、√6、√7、√8、√10、√11、√12、√13、√14、√15を以下の数直線上に記しなさい。
答
……
先生 よし、次は√の計算に取り組んでみようか。
生徒 やっぱり、計算があるんですね……。
先生 √が「無理数」という新しい数として導入されたのは、いままで扱ってきた数と同じように四則演算などの計算ができるからなんだよ。
生徒 そうなんですね。
先生 それじゃあ、√の性質と計算方法を説明しよう。(1)と(2)は取り上げたから、(3)からだ。これはかけ算だね。√同士のかけ算は√のなかの数をかけた値に「√」をつけるだけという意味なんだ。例えば「
」となる。(4)は「√のなかで2乗になる数があったら√の外に出す」というルールなんだ。例えば「
」ということだ。わかる?
生徒 はい、大丈夫です。
先生 (5)はわり算ね。ルールはかけ算と同じで、例えば「
」になる。(6)は√のなかの数が同じ場合は、たし算ができるという意味なんだ。「
」だね。反対に(7)はひき算。たし算と同じ流れで「
」となる。最後に(8)は「有理数」と「√(無理数)」のかけ算。「
、
」だ。
生徒 いろいろなパターンがあるんですね。
先生 マスターするには数多くの問題をこなすのみ。最後に練習問題に取り組んで終わりにしよう。
生徒 は~い。
練習問題
次の計算をしなさい。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
答
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(講師/村山 慎一)