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続・電験受験に役立つ比の計算【電気数学のすゝめ11】電験取得のための第一歩
電験取得のための第一歩
2024.08.29
11限目 比~応用編②~
先生 前回は、電気回路で使用する重要な「キルヒホッフの法則」を取り上げたね。電流と電圧の2つの法則で、それぞれで合成抵抗の計算に比を使用しました。
生徒 回路内の比の関係がわかれば、値を簡単に求めることができました!
先生 うん、そうだね。でも、まだまだ教えていないことはあるんだ。
生徒 えっ、これで全部じゃないんですか?
先生 もちろん! これまではa:bというように2つの数を比較していたけど、a:b:cと3つの数を比較する場合もあるんだ。まず、次の問題を解いてみよう。
「リンゴが18個あります。Aくん、Bくん、Cさんに2:3:4で分けることにしました。それぞれ何個ずつ分ければいいでしょうか」
生徒 3つになったら混乱してきた……。まずは図を描いてみよう。
生徒 この図をみると、2つの比のときと同じように計算したらいいんじゃないかな。
先生 うん、そのとおりだ。
生徒 計算してみると……。
Aくん:
Bくん:
Cさん:
つまり、Aくんが4個、Bくんが6個、Cさんが8個と分ければいいんだ!
先生 じゃあ、次の問題はどうかな?
「いくつかのリンゴがあります。そのリンゴをAくん、Bくん、Cさんで2:1:3になるように分けたところ、Aくんは6個のリンゴを受け取りました。Bくん、Cさんには何個のリンゴが配られたでしょう。また、リンゴは全部でいくつあったでしょう」
生徒 Aくんには6個のリンゴが配られたから「6:Bくんのリンゴ:Cさんのリンゴ=2:1:3」となるけど、さて、ここからどうしよう……。
先生 まずは、図を描いてみよう。このようなパターンの3つの比の場合、「Aくん:Bくん」「Bくん:Cさん」、あるいは「Cさん:Aくん」と、2つの比で計算するんだ。リンゴの個数がわかっているAくんと比較して「Aくん:Bくん」から取りかかってみよう。比はいくつになる?
生徒 2つならカンタンです! 「6:Bくんのリンゴ=2:1」として、内項の積=外項の積から「Bくんのリンゴ×2=6×1」となって、Bくんは3個のリンゴをもらいました!
先生 うん、正解。次は同じようにCさんも求めてみよう。
生徒 そうなると「6:Cさんのリンゴ=2:3」として、内項の積=外項の積から「Cさんのリンゴ×2=6×3」で、Cさんは9個のリンゴをもらいました。つまり、リンゴは全部で6+3+9だから、18個だ!
先生 よし、正解か確かめてみよう。「Aくん:Bくん:Cさん=6個:3個:9個」だから、この比は3で割って簡単にできるよね。そうすると「Aくん:Bくん:Cさん=2:1:3」で、問題の比と同じになる。うん、正解だ。これは簡単だったかな?
生徒 3つの比の場合は2つの比に分けて考える。つまり、どれか1つの値がわかれば、すべて比で計算できるってことですね!
先生 うん、そうだね。それじゃあ、こんなパターンはわかるかな?
「A、B、Cという3つの数があります。A:B=4:3、B:C=12:7のとき、A:B:Cを求めなさい」
生徒 A:BとB:Cで比がバラバラだ。どうやってA:B:Cにすればいいんだろう……。
先生 こんな問題のときはA:BとB:Cの比で共通しているBに着目するんだ。このBの値をA:BとB:CでそろえればA:B:Cの比で表すことができるよ。
生徒 Bの値をそろえる?
先生 「A:B=4:3」「B:C=12:7」で、A:Bの「3」に4をかけて「12」にすると、B:CのほうのBと値が同じになるよね。このとき、Bの値を合わせたら、Aの値にも同じ数をかけることに注意しよう。つまり、「A:B=4:3」は「A:B=16:12」となる。これでBの値が「12」でそろったから、2つの比を合体させて「A:B:C=16:12:7」と求めることができるんだ。
生徒 共通の記号を探して、その値を同じ数にすればいいんですね。
先生 そう。これを連比というんだよ。2つの比のときと同じで、連比の各値に0以外の同じ数をかけたり、割ったりしても大きさは変わらないことを覚えておこう。
生徒 3つの比は電験三種に出題されるんですか?
先生 うん。こんな内容で出題されているよ。
「P2:pc2:Po=1:s:(1-s)で、すべりs=0.05、P2=100[kW]としてpc2とPoの値を求めなさい」
生徒 う~ん、それぞれの値を代入して、3つの比を2つに分けていけば……。
先生 そう、その調子でコツコツと計算していけばいいんだ。よし、練習問題に取り組んで今回は終わりにしよう。
生徒 はい、ありがとうございました!
練習問題
(1)3:2:a=12:b:32から、aとbの値を求めなさい。
(2)a:b=6:7、b:c=28:3のとき、a:b:cを最小の整数比で表しなさい。
(3)A、B、Cの3人で140個のアイスを販売しました。それぞれが販売した個数を比較すると、A:B=2:3、B:C=4:5となりました。それぞれの販売個数は何個か求めなさい。
(4)すべりs=0.06で運転している三相誘導電動機の二次入力P2が1000kWのとき、P2:pc2:Po=1:s:(1-s)から二次損失pc2と出力Poの値を求めなさい。
答
(1)3:2:a=12:b:32から「3」と「12」を比較すると、右辺の比の数は左辺の比の数に「4」をかけていることがわかる。
したがって、3×4:2×4:a×4=12:b:32となり、2×4=b、a×4=32から、a=8、b=8と求めることができる。
答 a=8、b=8
(2)「a:b=6:7」「b:c=28:3」において、2つの比に共通する「b」に着目。a:bの「7」に4をかけて「28」にすると、b:cの「b」と同じ値になる。
したがって、a:b=6:7=6×4:7×4=24:28となり、a:b:c=24:28:3と求めることができる。
答 a:b:c=24:28:3
(3)「A:B=2:3」「B:C=4:5」において、2つの比に共通する「B」に着目。それぞれ「3」と「4」から最小公倍数は「12」と求められる。
A:B=2×4:3×4=8:12
B:C=4×3:5×3=12:15
ここから、A:B:C=8:12:15と求めることができる。
したがって、それぞれの販売個数は以下となる。
A=
B=
C=
なお、Cの個数は「140-(Aの個数+Bの個数)」でも求めることができる。
答 A=32個、B=48個、C=60個
(4)それぞれの数値を代入すると、P2:pc2:Po=1000:pc2:Po=1:0.06:(1-0.06)=1:0.06:0.94より、pc2は以下で求めることができる。
1000:pc2=1:0.06、pc2×1=1000×0.06、pc2=60[kW]
一方、Poはpc2=60を代入して以下となる。
pc2:Po=60:Po=0.06:0.94、Po×0.06=60×0.94=56.4、Po=56.4÷0.06=940[kW]
答 pc2=60kW、Po=940kW
(講師/村山 慎一)