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さまざまな文字式の計算を学ぶ【電気数学のすゝめ13】
電験取得のための第一歩
2024.10.30
13限目 文字式の計算
先生 前回は数値表現について、さまざまな方法があることを学習したね。電験三種の計算問題で必要になってくる内容だけど、今回も同様に、解答には欠かせないテーマ「文字式の計算」に触れようと思います。さて、早速だけど、問題です。
「1個50円のリンゴを6個と、1個500円のパイナップルを2個買ったときの代金はいくらでしょうか」
生徒 これは簡単ですよ。「50×6+500×2=300+1000=1300円」になります。
先生 うん、そうだね。日常生活に密着していることだから簡単だよね。それでは、次の問題はどうかな。
「1個50円のリンゴをa個と、1個500円のパイナップルをb個買ったときの代金はいくらでしょうか」
生徒 買う個数が具体的な数字じゃないのか……。普通に考えると「50×a+500×b」となりますね。
先生 そう、それで正解だ。この問題のように具体的な数字じゃなくて、文字を使って表現する式を文字式と呼ぶんだ。
生徒 いきなり文字になったので少し戸惑いましたよ。
先生 わからなくなったら、具体的な数字に置き換えて考えてみるといいよ。さて、文字式のルールを黒板にまとめてみたから確認してみようか。
生徒 意外とルールが多いんですね。
先生 そうなんだ。まずは、黒板のルールを守って「(5a+15b)-(2a+5b)」を解いてみようか。
生徒 式のなかに「①文字の部分が同じ項」があるから、1つにまとめるんだな。そのためにはカッコを外さないと…… って、マイナスは、どうすればいいんだ?
先生 分配の法則を使うとカッコを外すことができるよ。
生徒 分配の法則?
先生 そう。この法則は式の計算をするときに重要になるから、しっかり覚えよう。
分配の法則
A(B+C)=A×B+A×C=AB+AC
A(B-C)=A×B-A×C=AB-AC
生徒 はい!
先生 この法則を頭に思い浮かべながら、まずは「-(2a+5b)」の部分を考えてみよう。この式に「1」が隠れているよ。
生徒 黒板のルール③ですね。う~ん、どこだろう……。あっ、カッコの前だ!
先生 うん、正解だ。「-1×(2a+5b)」ということだね。そうなると、分配法則でカッコを外すことができるよね。
生徒 もちろんです!「-(2a+5b)=(-1)×2a+(-1)×5b=(-2a)+(-5b)=-2a-5b」になります。つまり「(5a+15b)-(2a+5b)=5a+15b-2a-5b」です。
先生 このままでは中途半端。ルール①で文字が同じ項はまとめるから……。
生徒 「5a+15b-2a-5b=(5-2)a+(15-5)b=3 a+10 b」です!
先生 うん、そうだね。カッコの前に「-」がついていたら、カッコ内の符号は逆になることを覚えておこう。「-(A+B)=-A-B、-(A-B)=-A+B」だ。それじゃあ、練習問題に取り組んで、しっかりマスターしよう。
練習問題
次の文字式を計算しなさい。
(1)3a+ab+b-2ab
(2)(8x-y)+(-3x+y)
(3)(4x2+7y-4)+(6x2-4y+9)
(4)-(10a-6)
(5)(6a+7)-(3a-2)
(6)-3(2x-3y)-2(2x+11)
(7)-6p(9p+3)
(8)(6a-9b)÷3
(9)24(-
x+
)
(10)x×y×x
答
(1)3a+ab+b-2ab=3a+b+(1-2)ab=3a+b-ab
(2)(8x-y)+(-3x+y)=(8-3)x+(-1+1)y=5x
(3)(4x2+7y-4)+(6x2-4y+9)=(4+6)x2+(7-4)y+(-4+9)=10x2+3y+5
(4)-(10a-6)=-10a+6
(5)(6a+7)-(3a-2)=(6a+7)+(-3a+2)=(6-3)a+(7+2)=3a+9
(6)-3(2x-3y)-2(2x+11)=(-6x+9y)+(-4x-22)=(-6-4)x+9y-22=-10 x+9y-22
(7)-6p(9p+3)=(-6p)×9p+(-6p)×3=-54p2-18p
(8)(6a-9b)÷3=
a-
b=2a-3b
(9)24(-
x+
)=-
x×24+
×24=-16x+10
(10)x×y×x=x2y
生徒 はい、できました!
先生 うん、よくできました。練習問題で文字式に慣れてきたと思うから、文字式のルール⑤について、もう少し掘り下げて学習していこう。
生徒 練習問題の(7)と(10)で使ったルールですよね。
先生 うん。同じ文字を2回以上かけたとき、かけた個数を右上に小さく書いたけど、これを指数というんだ。文字式のかけ算、わり算では指数が頻繁に登場するよ。
生徒 かけた個数を右上に書くだけだから簡単ですよ! A×A×A=A3ってことでしょう?
先生 それじゃあ、A3×A5は、どうやって解く?
生徒 え~っと、A3はA×A×Aで、A5はA×A×A×A×Aだから、この2つをかけて(A×A×A)×(A×A×A×A×A)でAが8個あるからA8です。
先生 正解、なんだけどね、手間がかかったと思わない?
生徒 8個ならいいけど、もっと数が多くなるとタイヘンです。
先生 もっと簡単に計算できる指数の法則があるんだ。
生徒 さっきの問題もA3×A5=A3+5=A8と計算できるんだ。8個もAを書いてソンした気分です!
先生 まあまあ。考えることは大切なんだよ。
生徒 この法則、かけ算はシンプルなんですけど、わり算は複雑ですね。
先生 うん、そうだね。
生徒 質問なんですけど、どうしてA0=1になるんですか? 0ではないの?
先生 そこなんだよね。具体的な数字で考えてみようか。普通に計算すると「35÷35=
=1」となるよね。これを指数の法則を使うと「35÷35=35-5=30」となって、つまりは「30=1」と求めることができるんだ。
生徒 なるほど! 練習してマスターしないと!!
先生 うん、その調子だ。練習問題を解いてみよう。
練習問題
次の文字式を計算しなさい。
(1)a3×a8
(2)(-3ab)3
(3)(-2a3)2
(4)(2x2y2)2×4y2
(5)(-2ab4)2×5a3
(6)a5÷a3
(7)b10÷b10
(8)8x4y3÷4x2y
(9)a4÷a6
(10)36x5y÷6x6y
答
(1)a3×a8=a3+8=a11
(2)(-3ab)3=(-3)3×a3×b3=-27 a3b3
(3)(-2a3)2=(-2)2×(a3)2=4×a3×2=4 a6
(4)(2x2y2)2×4y2={22×(x2)2×(y2)2}×4y2=(4×x2×2×y2×2)×4y2=4x4y4×4y2=4×4×x4×y4+2=16 x4y6
(5)(-2ab4)2×5a3={(-2)2×a2×(b4)2}×5a3=(4×a2×b4×2)×5a3=4a2b8×5a3=4×5×a2+3×b8=20 a5b8
(6)a5÷a3=a5-3=a2
(7)b10÷b10=b10-10=b0=1
(8)8x4y3÷4x2y=
=2x4-2y3-1=2x2y2
(9)a4÷a6=
=
=
(10)36x5y÷6x6y=
=
=
先生 ここまではカンペキだね。よし、いよいよ本格的な文字式に取り組んでいこう。
生徒 えっ、これで全部じゃないんですか?
先生 ここまでは基本中の基本だよ。
生徒 そんなぁ~。
先生 大丈夫、取り組んできたことをフルに活用すれば対応できるからさ。早速、始めよう。「3x(5x+4)」はわかるよね?
生徒 分配の法則ですよね。「3x(5x+4)=(3x×5x)+(3x×4)=15 x1+1+12 x=15x2+12x」になります。
先生 うん、正解だ。それでは、少しレベルを上げて「(x+a)(x+b)」はどうかな?
生徒 分配の法則を使うと、(x+a)(x+b)=x(x+a)+b(x+a)=x1+1+ax+bx+ab=x2+(a+b)x+abとなります。
先生 うん、正解。ドンドンいこう。次は「(x+a)2」ね。
生徒 え~っと、(x+a)2は(x+a)(x+a)ってことだから、(x+a)2=(x+a)(x+a)=x(x+a)+a(x+a)=x1+1+ax+ax+a1+1=x2+2ax+a2ですね。
先生 しっかり公式を使いこなしているね。次はね……。
生徒 まだあるんですか?
先生 あと3問はやろうかと……。
生徒 分配の法則で解くのは手間がかかるんですけど、何かいい方法はありませんか?
先生 それなら公式を暗記するしかないかな。実は、この2問は展開の公式なんだよね。
生徒 展開の公式?
先生 分配の法則を使って式のカッコを外してきたけど、この計算のことを「式を展開する」というんだ。展開の公式を覚えておけば、分配の法則のように手間の多いプロセスを踏まないで、すぐに解答が求められるよ。
生徒 分配の法則で求めた2問は公式①と②ですね。
先生 そう。公式を暗記するとラクだけど、もし公式を忘れてしまったら、さっきのように分配の法則で解けばいいんだよ。
生徒 私は絶対に公式をマスターする派です!
先生 それじゃあ、しっかり練習問題に取り組もうか
練習問題
次の文字式を展開しなさい。
(1)(a+3)(b-2)
(2)(x+4)(x-4)
(3)(a+6)2
(4)(x+y)2
(5)(a+b)(a-b)
(6)(a-1)(a2+3a+1)
(7)(x+2)3
(8)(2x+3)(6x+4)
(9)(x+y+1)(x+y+2)
(10)(x-y)2-(x+y)2
答
(1)(a+3)(b-2)=ab-2a+3b-6
(2)(x+4)(x-4)=x2-42=x2-16
(3)(a+6)2=a2+6 a+6 a+62=a2+12 a+36
(4)(x+y)2=x2+2 xy+y2
(5)(a+b)(a-b)=a2-b2
(6)(a-1)(a2+3a+1)=a3+3a2+a-a2-3a-1=a3+2a2-2a-1
(7)(x+2)3=(x+2)2(x+2)=(x2+4x+4)(x+2)=x3+4x2+4x+2x2+8x+8=x3+6x2+12x+8
(8)(2x+3)(6x+4)=12x2+8x+18x+12=12x2+26x+12
(9)(x+y+1)(x+y+2)=x2+xy+2x+xy+y2+2y+x+y+2=x2+3x+2xy+y2+3y+2
別解として、x+y=Aとすると、
(x+y+1)(x+y+2)=(A+1)(A+2)=A2+3A+2
となり、x+y=Aより、
A2+3A+2=(x+y)2+3(x+y)+2=x2+3x+2xy+y2+3y+2
と求めることができる。
(10)(x-y)2-(x+y)2=(x2-2xy+y2)-(x2+2xy+y2)=x2-2xy+y2-x2-2xy-y2=-4xy
先生 展開をマスターしたら、次は因数分解に取り組んでみよう。
生徒 因数分解?
先生 うん。因数分解は展開の逆の作業になるんだよ。例えば「A(B+C)=AB+AC」という式で考えると、左から右が「展開」で、右から左が「因数分解」になるんだ。因数分解の公式も展開の公式の逆になるから、覚えやすいと思うよ。
生徒 展開の公式を覚えておけば、因数分解もできるということですね。
先生 そういうことだ。特に公式②~⑤は重要だから、しっかりマスターしよう。
生徒 はい!
生徒 ところで、ほかの公式で何かポイントはありますか?
先生 公式③は公式②の「a=b」の場合と考えることができるから、要領は同じだよ。例えば「x2+6x+9」を因数分解する場合、「a+a=2a=6(2倍して6になるa)」と「a×a=a2=9(2乗して9になるa)」を考えればいいんだ。ここから「a=3」とわかるから、「x2+6x+9=(x+3)2」となるよね。
生徒 なるほど!
先生 公式④は公式③のaに「-」がついただけだから、考え方は公式③と同じ。公式⑤は「x2-4」とか「x2-9」「x2-36」のように「x2-〇」の形があったら、公式⑤が利用できるんじゃないか考えるクセをつけておくことだよ。
生徒 それじゃあ、2乗の数を暗記しておいたほうがいいですね。
先生 うん。最低でも2~10までの2乗の数は覚えておくといいね。突然だけど、問題ね。「x2-36」を因数分解すると、どうなる?
生徒 「36=62」だから、「x2-36=x2-62=(x+6)(x-6)」です!
先生 正解だ。
生徒 この知識って、どのように電気と関係してくるんですか?
先生 文字式は方程式を解くときに必要になるんだ。あとは、ちょっとした計算の工夫にも使えるよ。例えば「101×99」は暗算で求められる?
生徒 う~ん……。
先生 これはね、公式⑤を利用するんだ。x=100、a=1を代入してみてよ。
生徒 「101×99=(100+1)(100-1)」だ! ということは「101×99=(100+1)(100-1)=1002-12=10000-1=9999」です!!
先生 うん、そういうこと。ただ、すべて公式で因数分解できるわけではなくて、例えば「(a-b)x+(a-b)y」は、どうやって考える?
生徒 まずは展開するのかな……。
先生 この場合は置換法を使って考えるんだ。
生徒 置換法?
先生 (a-b)=Aと置き換えるんだよ。そうすると「(a-b)x+(a-b)y」は「Ax+Ay」という式になって、これなら因数分解はできるよね?
生徒 「A(x+y)」だから「(a-b)(x+y)」です!!
先生 うん、正解だ。しっかりマスターしているね。最後に、因数分解の練習問題に取り組んで終わりにしよう。
生徒 はい、ありがとうございました!
練習問題
次の文字式を因数分解しなさい。
(1)4x2y-8xy2
(2)a2-6a+9
(3)x2+8x+12
(4)4a2-9b2
(5)x2+4x+4
(6)2a2+6a
(7)6a2+33a-18
(8)x2-9y2+6x+9
(9)x-x5
(10)a4-b4
答
(1)4x2y-8xy2=4xy(x-2y)
(2)a2-6a+9=(a-3)2
(3)x2+8x+12=(x+6)(x+2)
(4)4a2-9b2=(2a+3b)(2a-3b)
(5)x2+4x+4=(x+2)2
(6)2a2+6a=2a(a+3)
(7)6a2+33a-18=3(2a2+11a-6)=3(2a-1)(a+6)
(8)x2-9y2+6x+9=(x+3)2-9y2={(x+3)+3y}{(x+3)-3y}=(x+3+3y)(x+3-3y)
(9)x-x5=x(1-x4)=x(1+x2)(1-x2)=x(1+x2)(1-x)(1+x)
(10)a4-b4=(a2+b2)(a2-b2)=(a2+b2)(a-b)(a+b)
(講師/村山 慎一)