Column
第4言「電験三種認定校をレッドリストに!」【電気教育、言いたい放題】
2023.12.07
第4言「電験三種認定校をレッドリストに!」
海外ではアメリカ・ファースト、東京では都民ファースト。よくニュースで報道されていた言葉だが、高校教育界では「進学校ファースト」が根底に流れていると思う。
特に、公立高校の入試選抜方式の報道をみると、進学拠点校を中心に決めているとさえ感じる。早い段階で優秀な生徒を確保したいのか、「進学専門学科」や「公立中高一貫校」という「外来種」が出現した。これでは従来の工業、商業、農業、水産業、林業などの専門教育の生態系を荒らす! と声を大にして言いたい。
毎年、受験シーズンが終わるころには有名難関大学の合格者数の高校ランキングが週刊誌をにぎわす。順位が上下した当該校は一喜一憂しているだろう。また、新聞広告では予備校や塾での有名難関大学の合格実績も登場する。これらを冷静に考えると、その合格実績の成果は校長? 進路指導部? 学年団? カリスマ教師? それとも予備校? さらには強烈なゴッドマザー? いろいろな要因はあるが、成果は受験者自身だろう。合格者の2割程度は浪人生も含んでいるやんけ、と言いたい。別に、筆者が優等生コンプレックスとか、ひがみ根性で言っているわけではない。念のため。
さて、電験三種の受験指導をしていても「三種合格は学校の名誉のためか? 校長の顔を立てるためか? 指導している私のため? 全部違うやろ! こっちは100kmマラソンの伴走者であり、黒子じゃ! 三種合格はキミたち自身のためであり、キミたちの成果。だから、もっと闘志を燃やせ!」と、いつも背中を押してきた。
電験三種の場合、現役の高校生が合格することは極めて難しい。卒業して2~3年後になると毎年のように合格しているが、現役生には難関の資格だ。それでも行政は電験三種の認知度も含め、合格者の調査対象は現役生のみのようである。
昨年、ある私学の女子中高一貫校では進学実績数の非公開を貫いているという新聞記事を目にした。その学校の目標として「自分を大切にしつつ、社会奉仕できる人を育てること。それに賛同してもらおうと思えば、進学実績を公表しないことを続けない限り理解されない」とあり、続けて「あえていうなら、医学系3割、理系学部3割、残りは文系や芸術系、海外留学です。実績数を公表すれば、教員が目標を見失ってしまうかもしれない。生徒に対して「どう育てようか」よりも「この勉強で、この大学に行ける」という教育になってしまうことを危惧しています」と掲載してあった。
思わず衝撃が走った。それと同時に、深い感銘を受けた。筆者が教鞭を執っているのは工業高校なので、最大限の実力をつけた人材を産業界に輩出できるように、生徒の育成に全力を注ぎたいと、あらためて心に誓った。
特に、バブル崩壊後やリーマンショック後でも、学校を挙げて進路指導をしてきたつもりだったが……。上には上がいるものだ。どのような技術者を育成するか、新たな課題を突きつけられた思いだった。
進学校の陰に隠れているが、工業教育もしっかりと活動している。工業高校自身も含め、特に電験三種認定校については、ぜひとも「絶滅危惧種」に指定してほしいと願う。
プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。