Column
「□いアタマを○くする」作戦で工業教育改革に喝!【電気教育、言いたい放題8】
電気科教員の「はてしないグチ」
2024.07.11
第8言「ジョーカーは出すタイミングが命!」
工業教育改革で心配ごとは、電験三種認定の堅持と3年間の教育課程の内容であったが、何とかクリアした。しかし、さらに行政からは「課題研究の担当者に数学、理科の教員も担当させなさい」との指導が入った。
近隣の進学専門校が探求活動時に教員の専門科目に関係なく、いっせいに担当することとなったからだ。これにより、進学実績を急上昇したそうだ。ホントか!?
工業の課題研究も同様にすれば実績が上がるはず……。探求学習を先取りした、単純な発想が根底にあるのだろう。
校内の普通教科を担当する先生方は「工業高校の実習設備で、いろいろな探求学習が可能だろう」と、口にするのは簡単だ。そこで、言わせていただこう。
「もともとの設置目的は? 整備や管理は? 予算は? 安全対策は?」
まだまだある。
「生徒の思いつきで設備以上のことを要求した場合は?」
普通教科を担当する先生方は工業の教員免許を持っていない。工作機械や実習装置の取り扱いを理解しているはずがない。電気科は資格取得に力を注ぐことを理解しているのだろうか……。中央省庁、行政は工業教育にリスペクトをしているのか疑問に思うことが多々あるのだ。
年度当初に教頭先生から個人的に「どうしてもエネルギー教育をやってほしい。『電気科は電験三種の認定基準を金科玉条にして何も変わらないのか?』と言われてるんや」と泣きつかれ、めんどくさい申請書などを丸投げされた。毎日、電験三種の指導があるんだけどな……。
申請の目的として「いま、エネルギーや環境問題に取り組まなければ末代の恥と考えます。例えば、宮大工は1000年先を見通して神社、仏閣を建てます。その足元にも及びませんが、電気技術を生かして従来の発電、再エネなどを含め、総合的に地域と連携して研究し、生徒も学校も近隣も活性化したいと考えます」と、その場しのぎの計画書案、予算案を提出したら、一発で認定となった。モノは言いようである。
それが、だ……。
後日、教頭先生が「ウチの学校では、こんなことをやっています」と行政に嬉々として報告した。そうしたら「申請書をみせてほしい」とのこと。それで提出したら、どうなったと思う? 行政は「フンッ」と鼻で笑ったようなのだ。
そっちで申請書を書いて、予算も獲得してくれたらいいものを! 近隣の工業高校では10年連続で申請しても通らなかったのに、なんて失礼な! もう倍返しや!!
後日の教科主任会で、課題研究の担当に数学、理科の教員を入れるのは工業各科から満場一致で反対となり、数回にわたって会議が紛糾した。一触即発ムードのなか、期限が迫った会議の冒頭、校長先生が血相を変えて「電気科が資格、資格と言うから課題研究に数学、理科が入らんのだ!」と恫喝まがいの勢いでまくしたてる。
これにはカチンときて、思わず「シカク、シカクで角が立ったの? じゃあ、校長先生、まあ~るく収めてね」と口を衝いて出てしまう始末……。もちろん、一同は大爆笑。そして、校長先生はシッポを巻いて退散したのであった。
この会議で担当者の結論を出す必要がある。残り時間も迫ってきたとき、ちょうど隣に着席していた教頭先生に、すました顔で「課題研究でエネルギー教育をやりたいんやけどな……」と書いたメモを渡した。
すると、教頭先生は苦い顔をして、絞り出すように「電気科は、電気科の教員だけでいきましょう」と発言。当然、すぐに「ごっつぁんです!」とだけ言って退散。勝ち逃げである。「なんで電気だけ認められるんや!」と怒号が響いたのはいうまでもない。
電気科の職員室に凱旋。万歳三唱の報告会となった。
詳しい状況を話すと「それ、脅迫とちゃうの?」と言われたが、「いやいや、これが本当のギブ・アンド・テイクや!」と、またまた大爆笑。教頭先生とは機械系の実習で一緒に担当していたから、しっかり信頼関係を築いていたと勝手に解釈している。しかし、なにはともあれ、何とか切り抜けることができてよかった。

プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。
電気教育、言いたい放題 記事一覧
- 【第1回】「鉄は熱いうちに打て」や!
- 【第2回】「電気工事界のブラックジャック、降臨!」
- 【第3回】「破顔の秘孔をついた。オマエたちはもう、笑わずにはいられない」
- 【第4回】「電験三種認定校をレッドリストに!」
- 【第5回】「工業教育改革にドロップキック!」
- 【第6回】「三千六百五十歩のマーチ」
- 【第7回】「244/大リーグボール作戦」で工業高校改革に待った!
- 【第8回】「□いアタマを○くする」作戦で工業教育改革に喝!
- 【第9回】工業の「本質」の追求に、燃え上がれ工業教員!
- 【第10回】「答えのない答え」は、ホントにみつかるのか?
- 【第11回】「働き方」より「働きがい」の改革を!
- 【第12回】「パワハラ」「いじめ」の群雄割拠
- 【第13回】「キミの胸に書類、書類come back to you」