Column
「働き方」より「働きがい」の改革を!【電気教育、言いたい放題11】
電気科教員の「はてしないグチ」
2024.11.12
第11言「聴いてください、『電気科教員たちの挽歌』」
のちに内閣総理大臣を務めることになる某政治家が大蔵大臣に就任したとき、勢ぞろいした大蔵官僚を前に「ワシは小学校高等科の卒業である。しかし、いささか仕事のコツは知っている。われと思わん者は、遠慮なく大臣室へきてくれ。上司の許可はいらない。何でも言ってくれ。できることはやる。できないことはやらない。すべての責任は、このワシが背負う」という伝説的なスピーチを残した。
一方、某知事の「みなさんは「破産会社」の従業員であるという、その点だけ厳に認識してください」というスピーチが数年前に物議を醸した。
時代背景や、国と地方公共団体の差はあっても、この2つのスピーチを聞いたら、どちらがヤル気になるかは火をみるよりも明らかだろう。
あるプロ野球の監督が就任後に発した「今年はトレードをやりません。いまのメンバー全員が10%ずつ戦力を上げたら、このチームは優勝できる」という言葉が良識的なのかもしれない。極端な背伸びをしないで、着実に前進しようという意気込みが感じられる。
さて、突然だが、数年前から働き方改革に振り回されている。労働時間ばかりに注目が集まりがちだが、それよりも「働きがいのある職場環境を整えてくれよ」と声を大にして言いたい。
学校の場合、本来は教員同士が働きやすい環境を整えて、生徒と信頼関係を築き、互いに成長していくように教育活動を展開していくことが「働きがい」ではないのか。大きな行事に向かうときの「いざ!」という場合は、どうしても時間がかかると考えているのは筆者だけなのだろうか……。
当然、公立の学校は営利目的で教育活動を行っていない。生徒の人格形成、成長過程に関係してくるから、結果は5~10年後に出てくるものかもしれない。特に、高校生という多感な時期は心と身体、学業成績や部活動の状況より成長過程の過渡期であり、フィードバック制御のように「心が振動」したり、「安定および不安定」を繰り返したりする場合も十分に考えられるのだ。
そのような状況下、最近の学校の現場はというと、管理職より「保護者からのクレームがないように!」との喝が入るばかり。そして、そんな管理職はというと、実際にクレームが入ったら、ほかの教員に丸投げして、あとは知らぬ顔の半兵衛というケースが大半だ。
もちろん、トラブルやクレームはないに越したことはない。しかし、仕事をするうえでトラブルはつきもので、何もしなければトラブルやクレームはないだろう。ただ、その場合でも対応次第で状況はガラリと変わる。何もしていないのがバレたら大問題である。
筆者は電気科の主任を9年連続で務めた。最初は不人気な状態からのスタートだ。
生徒には「第1希望で入学し、希望の学科を選択できた生徒もいるだろう。でも、なかには不本意な入学、学科選択となった生徒もいるかもしれない。実は、私(筆者)も工業高校時代は不本意入学だった。数年前は機械系の職員室にいた。他校にもいった。縁あって、ここで一緒に勉強することになった。ない知恵を絞って働きかけるから、少なくとも電気を嫌いになってほしくない。一緒にがんばろう!」と話した。
その間、経済産業省による電験三種の立ち入り調査への対応を2回ほど担当した。電験三種の勉強会は毎日実施し、エネルギー教育は全国に名乗りを上げて積極的に活動した。学校で受け入れた小学校、中学校からの出前授業の8割ほどを担当した。あれもこれも、すべてが工業高校の、電気科の活性化につながればとの一念からだった。
第二種電気工事士の受験対策は電気科教員が全員体制でサポートをして、さらには第一種電気工事士試験、電験三種の受験へとつなげていった……。
寝る間も惜しみ、工夫に工夫を重ね、声をからして粉骨砕身で学生たちと向き合った結果、現在は電気科が一番人気となりましたとさ。なんてね。
プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。