Column
「キミの胸に書類、書類come back to you」【電気教育、言いたい放題13】
電気科教員の「はてしないグチ」
2025.02.10
第13言「あんまりコルトじゃ、身がもたぬ」じゃ、ウラカンよ。
世間を混乱のウズに陥れた新型コロナウイルス。もちろん、学校の現場も大いに混乱した。生徒と直接対面する教育活動が、どれほどスムーズだったかと痛感している。学校内の消毒は当然のことだが、「生徒の健康状態を細かく把握し、速やかに報告せよ」「3月に卒業したばかりの生徒も含め、全生徒の状態を保護者に確認せよ」との行政や管理職からの指示が出た。ほとんどを丸投げされた現場は混乱し、電話連絡に相当の時間を費やしたのはいうまでもない。
対象の生徒は1000名以上、学校から外線に接続できる回線は5つしかない。平均の通話時間を3分とすると、すべての生徒への連絡に何時間を要するのか……。そこんとこを理解したうえでの指示なのか理解に苦しんでしまう。
いざ電話をかけても話し中ばかり。教師の個人ケータイを使ったほうが効率のいい場合もあった。つながったらつながったで、保護者は電話のついでに進路相談となり、30分以上も話し込む始末。この電話代、どうなるんだ?
さらに、だ。年度末、年度初めの時期と重なり、生徒から「第二種電気工事士の申し込みや勉強会は、どうすればいい?」との質問が……。まあ、あるよね。もちろん、混乱しました(結果的に2020年度の上期試験は中止となり、大事には至らなかった)。
苦し紛れに学校のホームページで学習方法の指示や解説の掲載、不慣れなオンライン講座の計画を立てたことを思い出す。
臨時休業直前の職員会議で「授業の回復措置は、どうするのですか?」と質問しても、まともな回答はない。「電験三種認定の関係で、普段でも授業日数が不足しているのに、どのように回復するか考えているんですか? 少なくとも3年間は考える必要がある。立入検査があったとき、返答する必要があるんですよ!」と主張したが、電験三種認定には否定的な責任者だったので、「あとで個人交渉しましょう」との返答が……。
そこで「なぜ、個人交渉なのか? これは学校全体の問題で、個人で話すような問題ではありません! こちらは経済産業省に提出する書類を代理で作成しているけど、そっくりそのまま熨斗つけてお返ししましょうか?」と言うと、渋い顔をして「わかりました。しっかり考えましょう」という返答を引き出すことができた。
強い口調にはなったが、脅迫したつもりは毛頭ございません。コンプライアンス的にも問題ございませんよ。学校の恥にならないような配慮です、配慮。
臨時休業中に電験三種を受験する生徒には、個人的にケータイで受験指導を行った。同じ教科書、同じ参考書を広げて「このページの図と、この説明文は……」なんてこと、約2時間は費やした。これ、毎日ですよ、毎日。このときの電話代は? なんて野暮なことは言いませんけどね、トホホですわ。
授業が再開したとき、早速、その生徒が職員室にきた。おそらく、わからない問題をたくさん抱えていたんだろう。
『先生、機器がわかりません!』
「そういう状態を何ていうかわかるか?」
『???』
「機器(危機)一髪や!」
職員室は爆笑のウズに包まれた。
何回か質問にきたあと、隣に座る先生が「あの生徒は、ものすごく粘るから大変ですよね」と声をかけてくる。「ありがとうございます!」と返したが、電験三種の合格が目標なら、このくらいの粘りは当然! この攻防戦は放課後の15時半から始まり、終了が18時になることも多々あった。筆者との闘いは「通信教育」のようなもので、生徒の努力はもちろんだが、この学習スタイルで在学中に合格したからリスペクトに値する。
コロナ期間中はベテラン歌手の懐メロソングを、よ~く連想したものだ。
「ここらでやめても、いいコロナ~」
なんてね。もうコロナで混乱するのはゴメンだ!

プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。
電気教育、言いたい放題 記事一覧
- 【第1回】「鉄は熱いうちに打て」や!
- 【第2回】「電気工事界のブラックジャック、降臨!」
- 【第3回】「破顔の秘孔をついた。オマエたちはもう、笑わずにはいられない」
- 【第4回】「電験三種認定校をレッドリストに!」
- 【第5回】「工業教育改革にドロップキック!」
- 【第6回】「三千六百五十歩のマーチ」
- 【第7回】「244/大リーグボール作戦」で工業高校改革に待った!
- 【第8回】「□いアタマを○くする」作戦で工業教育改革に喝!
- 【第9回】工業の「本質」の追求に、燃え上がれ工業教員!
- 【第10回】「答えのない答え」は、ホントにみつかるのか?
- 【第11回】「働き方」より「働きがい」の改革を!
- 【第12回】「パワハラ」「いじめ」の群雄割拠
- 【第13回】「キミの胸に書類、書類come back to you」