Column
「パワハラ」「いじめ」の群雄割拠【電気教育、言いたい放題12】
電気科教員の「はてしないグチ」
2024.12.17
第12言「若手におまかせ! とはいかないようで……」
極めて一部だろうが、若手教師の「学校はブラックですよ」「運動部こそブラックです」というチャットにより世間が動きだすことは、いかがなものか。行政は教育の現場に「コミュニケーション能力が大切だ!」と言いつつも、こちらの言い分はシャットアウト。このような品のない「つぶやき」に、なぜ、バタバタと反応を示すのか甚だ疑問である。
筆者が教員に採用された20代のころは、伝統校ということもあって「私たちの若いころは、こんな手ぬるうないで!」「昔の生徒はよかった。勉強もクラブも自主的に取り組んだ」と言われ、さらには「いまの生徒を成長させるために、若手の教師にがんばってもらわなアカン」(アンタはやらんのかい!)「この仕事は、だれかがやらなければならんのだ」(アンタはやらずに問答無用で引き受けろって?)「伝統を守れ!」(こっちの考えを無視して「これをやれ!」って、脅迫やないのか?)といった理不尽なこともまかりとおった。
これが、意見を言おうものなら、伝統校ということもあって「キサマがものを言うのは20年早い!」で片づけられてしまった。一番年下が酷使され、からかわれて「これで世のなかがまわっているのか?」と考えたことも、1回や2回や3回や4回どころの騒ぎではない。
現在はというと、少しでも強い口調を使えば…… 逆に突き上げられてしまう。年配の先生と若手の先生に挟まれて「なんてソンな世代なんだ」と、ついついグチってしまう。
先日、20代の先生が逸脱しそうだったので「先生の将来のことを思って耳が痛いことを言うけれど……」と前置きして助言を試みたけれど、なんとなんと「それって、パワハラじゃないですか!」としゃあしゃあと口にする始末。腹のなかで「お~い、新聞ネタになる教師が目の前にいるぞ~。アンタが生まれる前から教師をしとるんやぞ、コッチは! 得体の知れない自信は、どこからくるんや!!」と思いつつ、「ほぉ~、それなら、なぜ、パワハラと考えるのかな? 根拠を言ってくれ!」と強い口調で言うと、その若手教師は「ハハハッ」と苦笑いして立ち去ってしまった。
あくまでも勝手で乱暴な推測だが、教員採用試験に合格するのは、やはり、お受験の勝ち組だろう。さらに、採用実績の多い大学へ合格するには、高校で難関私学の特進コースか難関公立の進学専門校に絞られる。
放課後は部活動を度外視して補習三昧か? となれば、部活動での先輩、後輩の人間関係の構築方法を知らないのだろう。コンピュータと会話ができても、人間同士の「真の意味での会話」ができないのかもしれない。
「高校の進学実績を上げるために、ぜひとも、がんばってちょうだいね!」と至れり尽くせりだったのか? 「無菌室」状態で育ってきて怒られた経験がないとか? ミスを指摘されるのがイヤで最初からバリアでも張っているのか?
職員室ではICT教育の影響でノートパソコンやタブレットとにらめっこばかり。昼休みや放課後に、どれだけ生徒と接してコミュニケーションをとっているのか甚だ疑問だ。
採用試験に合格し、勤務校が決まって、お約束どおりにベテランの教師から「ほれ、若いモンががんばれよ!」と業務を丸投げされると、免疫がない分、ハレーションを起こしてしまうのだろう。
そう考えると、ものまねタレントが演じる大物女性シンガーを連想してしまう。
「ちょっとごめんなさいね。アナタ、何を目標に教師をなさっている方なの?」と、思わず言いたくなってしまう……。
プロフィール
今出川 裕樹(いまでがわ・ひろき)
1960年生まれ。大学卒業後、電気科の教員として工業高校に勤務。時事問題をぶっこみながらポイントを説明するユニークな授業を展開。その軽妙なトークは、爆笑のうずを巻き起こしつつ、内容を理解できるということで生徒に絶大な支持を得ている。50歳を前に電験三種に合格し、現在、二種に向けて鋭意勉強中。